第27回JRPS研究助成 審査講評

JRPS副理事長
学術担当理事
三重大学医学部
近藤 峰生 先生

第27回JRPS研究助成には、12名の優秀な研究者より応募がありました。現在計画中の研究内容とこれまでの研究業績により厳正な審査が行われた結果、今回は、
万代道子先生(神戸アイセンター)、
秋葉龍太朗先生(千葉大)、
相馬祥吾先生(京都府立医大)
の3名に研究助成を行うことを決定しました。

万代先生の研究は、「再生医療による黄斑(おうはん)錐体(すいたい)細胞による視機能再建に関する研究」です。これまで万代先生は網膜色素変性を対象として、ES細胞やiPS細胞から分化した視細胞を含む網膜オルガノイドを移植することにより、動物モデルを用いて移植治療の有効性を検証してきました。今後は、
1)移植後に移植組織内における錐体細胞を増やす試み、
2)ゲノム編集による移植組織内の錐体系双極細胞の欠失が黄斑部シナプス形成に及ぼす影響、
3)多電極アレイを用いた電気生理学的な移植後の錐体細胞機能の検証、などを行いたいとのことでした。
これまでの素晴らしい実績と将来の治療につながる研究計画が高く評価され、JRPS研究助成(200万円)を贈ることが決定しました。

秋葉龍太朗先生の研究は、「網膜中心窩(か)における幹細胞由来網膜シート移植後の先端電子顕微鏡を用いた網膜回路リモデリング解析」です。秋葉先生は、これまで網膜変性モデル動物に幹細胞由来の網膜シートを移植するとシナプスが形成され、視機能回復につながることを報告してきましたが、網膜の中心窩(視力に関係する黄斑の中心部)が再生可能であるかについては不明でした。
そこで今回秋葉先生は、網膜シート移植によって中心窩の網膜回路を再建できるかどうかを検証する目的で、サルの中心窩付近に光凝固(ひかりぎょうこ)を行い、そこにヒトES細胞由来網膜シートを移植したのちに、移植後に網膜の細胞やシナプスがどのようなリモデリングを起こすかを解析したいとのことでした。
視力に関係する黄斑部のリモデリングの研究をすることは非常に重要なテーマであると審査員により評価され、今回JRPS研究助成(100万円)を贈ることが決定しました。

相馬祥吾先生の研究は、「網膜色素変性症モデルラットにおける明暗視・形態視機能の経日評価」です。相馬先生は、これまでラット生理学的および心理物理学的な視機能評価方法を確立してきました。
今回の研究では、彼らが確立した頭部固定覚醒条件下の動物の大規模神経活動記録法をRCSラット(網膜色素変性のモデルラット)の外側膝状体(がいそくしつじょうたい)、上丘(じょうきゅう)、一次視覚野に適用する実験を計画しています。これにより、病気の初期から網膜色素変性ラットの詳細な視機能検査が可能になり、動物実験で治療を行った場合の効果判定として重要な基礎データになるとして評価され、今回ライオンズ賞(100万円)を贈ることが決定しました。

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