神田 寛行先生(大阪大学大学院医学系研究科)

受賞テーマ:「人工知能(deep learning)の人工網膜への応用」

研究助成を受けることができ、たいへん光栄に思います。私の研究は人工網膜の機能向上を目指したものです。
人工網膜とは、失われた視機能を電子機器で取り戻すことを目的とした医療機器です。目の代わりに小型カメラで正面の映像を取り込み、電子回路でその映像を解析して、目の中の網膜の中に残っている神経細胞に微弱な電気信号を伝えることで、人工的に光感覚を作り出します。
各国で人工網膜の研究開発が進められており、海外ではすでに医療機器としての販売が承認された製品もあります。日本でも、大阪大学の不二門教授をリーダーとした研究プロジェクトにて国産の人工網膜の開発が進められており、私もこのプロジェクトメンバーの一員として人工網膜の機能向上を目指した研究にたずさわっています。
現状の人工網膜は、海外の製品も含めてまだまだ発展途上の段階です。特に人工網膜の解像度は正常の網膜に比べてとても低いです。このような低画素の視覚では、物の位置は把握できても、いま見えている物が何なのか正確に認識することが難しいです。でも、事前に目の前に何があるのかを知らされていれば、その認識がだいぶ楽にできるようになります。たとえば、前もって「今、テーブルの上に茶碗と箸があります」と言葉で伝えられていれば、その明るさや大きさの違いからどちらがお箸でどちらが茶碗かを認識することができるようになります。
問題は、事前に状況を伝える作業を誰が行なうのかということです。私は、この作業を人工知能に行わせることを考えました。
具体的には、人工知能の技術の一つであるDeep Learningを利用して、人工網膜に映る映像が何なのか音声であらかじめ伝えるシステムの構築を目指します。将来は、それを人工網膜のシステムに組み込むことを目指します。
この研究を通じて、より生活に役に立つ人工網膜の実現を目指していきたいと考えています。

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