大石 明生先生(京都大学医学部附属病院 眼科)

受賞テーマ:
次世代シークエンサーを用いた網膜色素変性症の網羅的変異スクリーニング

網膜色素変性症が遺伝性疾患であることはよくご存知のことかと思います。では皆さんの中でご自身の病気が、どの遺伝子の変異によって起きているのか、ご存知の方はどのくらいおられるでしょうか。おそらくほとんどの方はご存知ないかと思います。
このように遺伝性疾患でありながら、原因遺伝子の検査がそこまで一般的でないということの一つには、これまで原因遺伝子を調べようとしてもなかなか特定できなかったという事情があります。
網膜色素変性症の原因としてこれまでに報告されているだけでも56の遺伝子があるので、これらを一つ一つ調べるということは非常にコストや手間がかかる作業となり、現実には難しかったわけです。また多くの報告は欧米から出ていて、日本人で同じ遺伝子を調べても同じような割合では変異が見つからないということも原因遺伝子の検索を困難にしていました。
しかし近年では遺伝子解析機器の技術が進歩し、多くの遺伝子を一気に調べることが可能となってきました。今回の研究ではこれまで網膜色素変性症の原因として報告されている遺伝子に加え、網膜の他の変性疾患の原因となっている遺伝子、網膜に発現していて病気の原因になりうると思われる遺伝子369個を選び出して調べる、ということを試みます。
解析が順調にいけば、これまで報告されている遺伝子については比較的容易に、さらにこれまで分かっていない新しい遺伝子もみつけることが可能になるのではないかと考えています。
原因遺伝子を調べても現時点で直ちに治療につながる訳ではありませんが、海外では特定の遺伝子変異に対しては、正常の遺伝子を補うことで進行を遅らせるといった治験が始まっていたり、内服薬の効果が原因遺伝子によって異なるといった報告が出たりしており、個々の患者さんがどのような変異を持っているかは、将来的により重要な情報になっていくだろうと考え研究を行なっています。

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