第22回研究助成受賞講演要旨_前田亜希子先生(神戸アイセンター病院)

受賞テーマ:「網膜色素変性に対するリードスルー薬の開発」

JRPS研究助成を受けられますことに大変感謝しております。これまですすめてきた網膜変性を理解し、新しい薬をつくるという研究を発展させていきたいと思います。
網膜がどのように光を受け取り伝えるのかということを研究してきました。なぜ網膜が機能できなくなってしまうのかということを考えてきました。遺伝子の変化が網膜変性を引き起こすことが知られています。遺伝子は体の設計図です。遺伝子の変化が起こることによって、眼に必要なタンパク質をつくることができなくなったり、機能しないタンパク質ができてしまうことによって病気が起こってしまうのです。自然界ではある頻度で遺伝子に変化が起こってしまいます。そのような遺伝子変化の中でタンパク質の合成を中断させてしまう変化があります。このようなタンパク質ができなくなる遺伝子変化の箇所を読み飛ばすことによりタンパク質合成を回復し、体を守る仕組みが知られています。これをリードスルーといいます。今の研究ではこの仕組みを利用し、網膜変性につながる遺伝子変化があるにも関わらず、その箇所を読み飛ばして正常なタンパク質をつくりだすことにより、網膜症の進行を防ぐことができる薬を探します。網膜症以外の病気に有効な治療薬の中から網膜症に有効な新たな薬効を見つけだすので、有効薬を見つけることができれば、いち早く網膜症治療に用いることが可能です。
将来どんな眼科医になりたいのかを考えていた頃、網膜色素変性症患者会のお手伝いをしました。そこで患者さんとそのご家族がさまざまな不安の中で、治療の可能性を探しながら、生活の工夫をされながら日々すごされていることを学びました。治療・医療をつくりたい、網膜症とともに生きる方々の証人になりたいと思いました。この研究が一日でも早く皆さまのお役に立てるように、私にできる最大限の努力をしたいと思います。

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