村上 晶(順天堂大学)先生講演要旨

■「これからの網膜色素変性への医療とケア」

村上 晶(順天堂大学)

 眼にかかわる遺伝子の働きと遺伝に関わる研究の進展は目覚ましく、網膜色素変性診療のなかでも遺伝学の重要性が増している。病気と関連する遺伝子の変化の同定と病気のしくみの理解が得られ、遺伝子を調べる検査(遺伝学的検査)は、患者さんへの適確な診断の助けになり、家族のケアや遺伝カウセリングのための情報を提供しうるものとなりつつある。
今後未解決例の割合を減らすために、より多くの患者さんの解析をするとともに、異なる方法を応用する試みが続けられている。細胞リプログラミング技術の進歩は、患者さんから提供された皮膚や血液などの細胞から人工多能性幹細胞(iPSC)を作って、網膜に近い性質をもった細胞を得ることが可能になった。このような細胞を使った、再生治療研究や、研究室の培養皿のなかで病気モデルを作り、新たな治療薬の探索をするような研究も進められ、その道筋もいくつかのものに収斂しそうである。
一方、急速な変化が起こりそうなこれからの社会での患者さんの健康管理と実生活における問題解決の仕組みづくりにはまだ明確な道筋が見えていないように思われる。患者さんとともに医療者や研究者も現存する難病対策、社会保障制度の仕組みを理解して研究成果をどう社会に実装していくか知恵を出し合うことが大切だと思う。

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