報告 令和3年度AMED再生・細胞医療・遺伝子治療公開シンポジウム
2022年2月1日に開催された標記シンポジウムを聴講しました。内容の一部を報告します。
A:全体としてどのような発表がありましたか?
B:今回眼科領域の講演はありませんでしたが、せき髄損傷や癌領域での再生医療、遺伝子治療の進捗を実感しました。
A:患者として特に注目した発表は?
B:山中伸弥 京都大学iPS細胞研究所所長が「iPS細胞技術を良心的な価格で一人でも多くの患者さんに届くよう頑張りたい」と講演を結ばれたことが印象的でした。
A:具体的な方策は?
B:欧米で実用化された遺伝子治療はどれも数千万円の費用がかかります。こうした超高額医療を避けるために2つの目標を掲げられました。1つは、技術革新で数年以内に患者本人のiPS細胞を100万円で作製可能にします。マイiPSプロジェクトといいます。また企業への橋渡しを公益財団が担うことで、数百万円でiPS細胞移植治療を可能にします。
A:保険適用も夢でなくなりますね。他に注目した講演は?
B:岡野栄之 日本再生医療学会理事長が再生医療安全性確保法の見直しに言及しました。
A:どんな背景があるのですか?
B:研究として行われる再生医療の進展とともに、クリニックで自由診療として実施される再生医療の問題が指摘されています。2010年に発生した脂肪幹細胞移植治療の死亡事故がきっかけとなり、再生医療安全性確保法が2014年に施工されました。ただ有効性の担保等、医学的に未確立な医療行為に対する規制としては十分でないことが分かってきました。
A:私たち患者に求められることは?
B:安全性に加えて、過剰な期待を防ぐための方策がこれから議論されるでしょう。いずれにしても、患者は主治医の説明を充分聞いて、自分が受けようとする医療行為の内容をしっかり理解することが望まれます。
※なお、山中伸弥教授は、2022年3月をもってiPS研究所所長を退任されました。退任にあたって、今後は、50%を研究に注力し、残りの50%は、iPS細胞研究財団の理事長として活動を継続したいと述べられました。
【参考URL】https://www.yomiuri.co.jp/science/20220323-OYT1T50133/