「あぁるぴぃ」の創刊に寄せて 

小野塚 ゆか

 RPとは私たちの病気、網膜色素変性症の学名Retinitis Pigmentosaの頭文字です。
先日、7月7日から10日にパリで開催された第8回IRPA(国際網膜色素変性症協会)の世界大会に出席しました。約30ヶ国の患者の代表や学識者が集まり大盛況でしたが、そこで会った各国代表は、こんなふうに初参加の私に話しかけてくれました。「ゆかはRPなの?」「そう」「兄弟は?」「いいえ、私だけ」「それはラッキーだね。ゆかの兄弟はここに来られなかったものね」
そして、それが心から笑って「そのとおり」と言えるほど、参加者は皆明るく、楽しかったのです。
ニュージーランド代表で参加していた70才のおばぁちゃまは、「ゆかは世界中に兄弟ができたのよ。私たちはみんなひとつの家族よ」、と言ってくれました。
なぜこの人達はこんなに明るく希望に燃えているのだろうと不思議でしたが、2日目、3日目とプログラムが進むうちに理由がわかってきました。それはIRPAの目的、同時に私たちJRPSの目的である「RPの治療法の開発」のためにみんなが協力して、その努力が着実に実を結んでいるからなのです。
IRPAに加盟する各国協会は、お金を集めて研究費に充てています。税制上「寄付大国」であるアメリカには、協会所有の研究所が13ヶ所もあり、それだけでなく、他国協会の研究費も援助しています。また協会は、患者会員を登録し、遺伝形式やその症状などのデータを必要に応じて研究者に提供しています。研究者は資金とデータの提供を受けていますから、当然研究結果について報告するわけです。
以前、JRPSニュースレターの創刊号で、私は「国と研究者が何もしてくれないと言っててをこまねいて嘆いているだけの時代は終わりました」と書きました。このたび各国代表とじかに触れ合い(英語でわからなかったなりにも)、ドクター達の研究発表を聞いて、私自身がその思いを新たにさせられました。一部には「自分は協力しないけれどもIRPAの研究成果の恩恵には浴したい」という考えの方もいるかもしれません。しかしそれは努力している海外の同病の友に対して、恥ずかしいことではないでしょうか。
私たちが希望を持って生活していくためには、もちろんカウンセリングもリハビリテーションも必要です。RP患者の心理というテーマの研究発表もされていました。また仲間同士の交流、励まし合いも本当に大切です。この「あぁる・ぴぃ」が会員おひとりおひとりにとって必要な情報、ニュースレターだけではカバーしきれない部分をお伝えしていくよう期待して、巻頭の辞とさせていただきます。

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