秋葉 龍太朗 先生(千葉大学大学院医学研究院眼科学)
受賞テーマ「網膜中心窩における幹細胞由来網膜シート移植後の先端電子顕微鏡を用いた網膜回路リモデリング解析」
このたびは、研究助成対象として選んでいただき誠にありがとうございます。JRPS学術審査員各位、ならびに会員の皆さまに深く感謝申し上げます。
私は眼科医として働く中で、手術や薬で治すことが難しい疾患の患者さんに向き合うことが多かったことから、網膜色素変性症など治療法の確立していない疾患に対する再生医療の研究に従事したいと考えるようになりました。そして大学院在学中に神戸理化学研究所で幹細胞から視細胞を作り、変性した網膜に移植する“視細胞移植”の研究を行ってきました。また、その後留学した米国シアトルのワシントン大学では、視細胞を失った網膜の構造にどのような変化が起きているかを、最先端の電子顕微鏡を用いて調べる研究を行ってきました。
網膜色素変性症では、視細胞が失われるために視機能が低下しますが、視細胞移植を行っても、移植を受けるホストの細胞とつながってくれないとせっかく受け取った光を脳に届けることができません。私たちは過去に、移植した視細胞がホストの網膜細胞と情報をやり取りするしくみ、 “シナプス”を作っていることを明らかにしました(Akiba et al, Front Cell Neurosci, 2019)。
しかし、正常な網膜で見られるシナプスと、移植後にできるシナプスが同じものなのか、それとも全く構造が違うのかは、明らかになっていません。またさらに、網膜の中心部にあって特に視力に関係する“中心窩”という部位で、移植後に網膜回路が修理できるかどうかは、移植後の視機能に深く関係するため重要な疑問です。
私たちは今回、サルの中心窩の視細胞をレーザーで除去し、その部分に視細胞を含んだ網膜シートを移植し、移植した後にシリアルブロックフェイスという電子顕微鏡を用いて、細胞一つ一つのシナプスを解析することで、移植後にはどんなシナプスができているのか、そして移植した後の網膜回路がどうなっているかを調べる予定です。
中心窩という視力に重要な部分の網膜回路を修理できるのか、そして視機能回復が実現できるか、という疑問に少しでも答えられるような結果を目指して研究を進めていきます。
皆さまに還元できるような研究結果をお届けできるように全力で邁進してまいりますので、今後ともご支援のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。