国松志保先生 (東北大学病院 眼科)

「高度視野狭窄と自動車事故との関連性」

日本の普通運転免許取得・更新にあたっては、両眼の視力が0.7以上、かつ一眼の視力が0.3以上であれば、視野検査は行なわれません。このため、著明な視野狭窄をきたしていても、中心視力が良好な場合は、運転免許を取得することは十分可能です。しかし、信号機などの道路標識の認識、右折・左折時の歩行者や自転車の確認のためには、中心視力だけでなく、視野もある程度保たれている必要があります。
視野狭窄患者に、運転状況を聞いてみると、「左右の安全確認をしたのにも関わらず、側方からきた自転車と衝突した」「左折時に歩行者と接触してしまった」など、視野狭窄による安全確認の不足が原因と疑われる事故を起こしていることがあります。しかし、今なお、どの程度、どの部位の視野が障害されると自動車事故を起こす危険性が高まるのか、分かっていないのです。
われわれは、速度一定の条件下で、視野狭窄患者が事故を起こしやすいと予想される場面を織り込んだ視野狭窄患者用ドライビングシミュレータ(HONDAセーフティーナビ)を開発しました。これまで、視野障害度が高いほど、自動車事故のリスクが高いことが分かりました。また、リプレイ画面を利用することにより、患者本人や家族に、「なぜ、事故を起こしたのか」を知らせることができました。本研究では、このドライビングシミュレータに視線追跡検査を併用することにより、事故回避に必要な視野範囲・視野感度基準を定めることを目標とします。その結果に基づき、今後は、眼科外来に簡易型のドライビングシミュレータを設置し、事故回避に必要な運転訓練や情報提供といった適切な運転支援の方法を確立し、患者教育指針を作成したいとも考えています。このような研究は、交通事故を削減のためにも、社会的影響も大きく、大変重要な研究と考えています。

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