⻄⽥ 健太郎先⽣(⼤阪⼤学⼤学院医学系研究科視覚機能形成学寄附講座)

 受賞テーマ︓
「⼈⼯網膜の実⽤化に向けたトータルシステムの検証」

第24回JRPS研究助成⾦を受賞することができ⼤変光栄です。2006年に⼤学院に⼊った時から⼈⼯網膜の研究を続けています。
⼈⼯網膜とは、網膜⾊素変性症などの疾患で光を感じる細胞が完全に失われて失明した場合でも、網膜に残っている神経細胞に 電気刺激を与えて視覚を回復しようとするものです。世界中で研究が進んでいますが、私たちのグループでは脈絡膜上経網膜電気刺激(Suprachoroidal Transretinal Stimulation : 以下 STS)という⼈⼯網膜を開発しました。STSの特徴は、刺激電極が直接網膜に触れないので、⼈⼯網膜のなかでも特に安全性が⾼いところです。
これまでにSTSのシステムを失明した患者さんに1年間埋植する臨床試験を⾏いました。
その結果、埋植したSTSのシステムにより患者さんの視機能が向上すること、1年間の埋植でもSTSのシステムが問題なく動くこと、 また、STSのシステムを1年間埋植しても合併症が発⽣せず安全であることが分かりました。
現在はSTSのシステムを実際に製品として世に出すため、治験の準備をしているところです。より患者さんにとっての機能が向上し、 より⻑期間の使⽤に耐えられるようにし、さらに安全なシステムであるようにさまざまな改善を⾏っています。
そして、改良したものについては、さまざまな試験を⾏って問題のないことを確認していきます。
例えば、改良したシステムの効果を確認するためには、動物実験を⾏います。改良したシステムで動物の網膜に電気刺激を与えても、
動物は⾒えたとは⾔ってくれません。そのために、改良したシステムで動物の網膜に電気刺激を与えた際の動物の脳波を測定することで、 動物が⾒えたかどうかを判断します。
今回は、⻑期間にわたって動物の脳波の様⼦を観測することが出来るような⽅法を開発できたので、この⽅法を⽤いて改良したシステムが⻑期間有効に働くかを確認して、より⻑く安全に使えるものを作っていきたいと思っています。

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