第26回研究助成受賞者からのメッセージ②

國吉 一樹 先生(近畿大学医学部眼科学教室)
受賞テーマ
レーベル先天黒内障および若年発症網膜ジストロフィの遺伝学的・臨床的研究

このたび助成金をいただくことになり、JRPSの学術審査員、関係者各位ならびに会員の皆さまに深く感謝申し上げます。
レーベル先天黒内障とは、生後半年くらいまでに気づかれる強い視力障害を特徴とする遺伝性網膜ジストロフィです。若年発症網膜ジストロフィは、レーベル先天黒内障の年齢範囲をもう少し広げて、6歳くらいまでに診断される網膜ジストロフィの総称です。網膜色素変性と同じように遺伝子異常が原因で、常染色体劣性遺伝が多いのが特徴です。つまり、レーベル先天黒内障/若年発症網膜ジストロフィは、乳児・小児の網膜色素変性のような疾患ですが、網膜色素変性と異なるところは、必ずしも夜盲があるわけではなく、むしろ羞明(昼盲)が強い子も多いという点です。生まれてすぐの視力障害ですので、眼振(目がゆらゆらと動く症状)や目を強くこする癖があったりします。レーベル先天黒内障は、よく観察しても眼底(網膜)には異常所見に乏しいことがあるので、診断には「網膜電図(ERG)」という検査が必要です。これはJRPS会員にも受けられた人が多いと思いますが、両眼に「吸盤のような電極」を入れてピカピカ光らせ網膜の反応を記録するという検査で、あまり人気のある検査ではありません。ただし最近は「吸盤のような電極」を目に入れなくても網膜電図検査が可能になり、患者さんの負担はずいぶん少なくなりました。
レーベル先天黒内障/若年発症網膜ジストロフィは網膜色素変性よりもずっと頻度が低いのですが、小児の失明原因としては上位に入る疾患です。
今回の研究ではこのレーベル先天黒内障/若年発症網膜ジストロフィにフォーカスをしぼり、原因となる遺伝子を探索して、日本人における頻度や近畿大学周辺地域における実態などを究明できればと考えています。1年間で出せる成果は限られるとは思いますが、来年度には結果を報告したいと思いますので、楽しみにお待ちいただければと思います。
最後に、「レーベル」とは19世紀後半に活躍したドイツの眼科医で、「レーベル先天黒内障」のほか、「レーベル視神経症」の発見者としても有名です。レーベル視神経症は遺伝性の視神経症で、よい治療方法がなく両眼の失明につながる重篤な疾患ですので、さまざまな角度から研究が続けられています。(動画は、「会員の頁」にございます。)

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