研究推進委員会(Wings)通信(第14回)

臨床研究法施行にあたって

高血圧治療薬の適応拡大を目指した臨床研究での不祥事がきっかけとなって臨床研究法が2017年4月14日に公布され、本年4月上旬までに施行が予定されています。患者に直接関わりのある所をピックアップしてみました。

●特定臨床研究とは? 
臨床研究法では、臨床研究を「医薬品、医療機器、再生医療等製品を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性または安全性を明らかにする研究」と定義しています。そのうえで、同法の対象となる臨床研究は特定臨床研究と呼ばれ、以下のいずれかに該当します。
①未承認あるいは承認範囲と異なる医薬品等を用いる臨床研究で治験以外のもの
②医薬品製造・販売業者等から資金等の提供を受けて実施される臨床研究
注意したいことは、治験は対象外であり、①②以外の臨床研究は同法の遵守義務はなく、努力義務のみということです。やや複雑なので整理してみます。
臨床研究法でいう臨床研究のうち、製造・販売承認申請を目的とする臨床研究を治験と呼び、医薬品医療機器等法(旧薬事法)で厳格に定められた基準で実施されています。残りの、承認を直接目指していない臨床研究のうち、再生医療等製品を用いるものは再生医療等法に従って実施されています。昨年開始された理化学研究所ほかの加齢黄斑変性患者を対象としたiPS細胞を用いる再生医療臨床研究はこれに相当します。それ以外の臨床研究のうち、今回特定臨床研究が定義され、臨床研究法に沿って実施することが義務化されます。さらに残った部分については努力義務が課せられます。

●特定臨床研究はどのように実施されるか? 
まず厚生労働省が認定した認定臨床研究審査委員会で研究計画書等が審査されます。研究の実施基準は政令で定められ、臨床研究の信頼性確保のための方策が盛り込まれています。そのうち、研究過程の透明性確保は患者にとっても、研究参加の選択・決定に有用な情報となると思われます。

●透明性の確保の具体策は?
①研究を開始する前にあらかじめ、公開データベースに臨床研究計画の内容が登録されます。これまで任意で行なわれてきましたが、今後は義務化されます。
②研究報告の公表:研究の結果をとりまとめた総括報告書が作成され、概要が公開データベースに登録・公表されます。

研究対象者(参加者)への情報公開は?
研究参加者は研究計画書その他の資料を閲覧することができます。認定臨床研究審査委員会には、苦情および問合せを受け付ける窓口の設置が義務づけられています。

研究参加者に関わるその他の方策は?
臨床研究の実施に伴い生じるかもしれない健康被害に備えて、保険加入と医療提供体制の確保が研究責任医師に義務づけられています。

●まとめ  
臨床研究法の施行で、承認目的の有無を問わず、臨床研究の実施基準が現行の治験実施基準に近くなります。再生医療等法の研究実施基準も近く改訂される予定です。規制が強化されると、研究がやりにくくなるとの危惧があることも事実のようです。ただ情報公開については世界の流れでもあり、患者として歓迎すべきことではないでしょうか。さらに環境を整えて、すべての臨床研究を対象とした被験者保護の法整備が進むことを期待したいところです。

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◇学術助成受賞者は今(第11回)

第11回 小沢 洋子(2010年・第14回受賞)
慶應義塾大学医学部眼科学教室
小沢  洋子

2010年度に第14回JRPS研究助成を、「再生に向けたヒト人工多能性幹細胞を用いた網膜色素変性症の病態解析」の研究のためにいただきました。
当時はiPS細胞というと移植治療に用いるための細胞という考え方が一般的で、iPS細胞を培養上で網膜視細胞に分化誘導して、すなわちiPS細胞から網膜視細胞を作製して、移植する動物実験が行なわれていました。しかし、われわれはiPS細胞を用いて病気のメカニズムを解析しました。そのために網膜色素変性の患者さんの皮膚の細胞をいただいて、まずiPS細胞を作りました。このiPS細胞は、患者さんの遺伝子変異を持った細胞ということになります。そして、そこから網膜視細胞を作製しその細胞を使って視細胞の生存や変性に関連する遺伝子発現などを調べたのです。
さらに、その変化が抑制される、すなわち将来治療に使えるかもしれない薬剤を探索するシステムを立ち上げました。いろいろな候補薬剤を培養に加え、患者さんのiPS細胞由来網膜視細胞の生存が促進される物質があるかを解析しました。この結果は、“The use of induced pluripotent stem cells to reveal pathogenic gene mutations and explore treatments for retinitis pigmentosa”というタイトルで、『Molecular Brain』というジャーナルに発表されました。
ただし、この研究は単層培養上のものでしたし、まだまだ調べることがたくさん残されていることも実感しています。一方、最近ではiPS細胞から網膜視細胞を作製する方法が著しく発展し、ヒトの網膜にさらに近い3次元構造を持ったものが作製できるようになってきました。そこで現在では、3次元培養の系を立ち上げ、網膜色素変性の患者さん由来のiPS細胞を用いてさらなる病態解明・創薬につなげる研究を行なっています。ヒトiPS細胞の培養には時間がかかりますが、一歩一歩進めています。
遺伝子診断はまだまだ未熟とはいいながら、それでも最近の発展には目覚ましいものがあります。網膜色素変性の進行を抑える神経保護薬を開発できれば、将来的には、早期診断・早期治療により、まだ軽症のうちに進行を抑え、一生ほとんど変わらずに状態を保てるようになるかもしれません。
また、すでに症状が進行してしまった方でも画像を見ると網膜視細胞が残っている人もいます。生きてはいるが、弱っている網膜視細胞を元気づけられれば、少しかもしれませんが視機能が改善するかもしれません。そのようなために、私は今も、網膜色素変性のための神経保護の研究を続けています。
モチベーションを続けるためにも、情報交換をするためにも、治療や研究において医師や研究者と患者さんが同志となって協力していくのが理想的です。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

学術研究助成受賞者は今 目次へ

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あぁるぴぃ117号(20150728)

本部だより 3
第19回日本網膜色素変性症協会(JRPS)研究助成者決定 3
第2回社員総会報告 3
世界網膜の日in群馬 参加申込みに関するお願い(群馬支部より) 4
第10回JRPS網脈絡膜変性フォーラム【予告】 4
【特別インタビュー】もうまく基金の新理事長に聞く 5
[新コーナー]学術研究助成者は今 8
第1回 山本修一(第12回受賞者) 8
[新コーナー]生活便利グッズの基礎の基礎 9
第1回 白い杖と歩行のはなし(1) 9
[新コーナー]我らJRPS応援団! 10
第1回 香川・四国学院大学の学生ボランティアの皆さん 10
QOL委員会から ~生活の質を向上させるための各種情報~ 13
交差点から信号がなくなる?―「ラウンドアバウト」についての情報提供 13
ちょっと賢い生活の知恵袋 14
第5回 一人でホテルに宿泊してみよう! 14
支部・連絡会 活動予定 15
北海道支部……15 /岩手県支部……15 / 山形県支部……15 /宮城県支部……15
福島県支部……16 / 栃木県支部……16 / 埼玉支部………16 /千葉県支部……17
東京支部………17 / 神奈川支部……17 /長野県支部……18 / 静岡支部………18
福井県支部……18 / 岐阜県支部……18 /愛知支部………19 /三重支部………19
滋賀県支部……19 /京都支部………19 /奈良県支部……20 /大阪支部………20
和歌山県支部…20 /兵庫県支部……21 /広島県支部……21 / 香川支部………21
徳島支部………22 / えひめ支部……22/ 高知県支部……22 / 福岡県支部……23
長崎県支部……23 / 大分県支部……23/ 鹿児島県支部…23 /沖縄県支部……24
専門部会の活動予定 24
JRPSユース……24
編集局より 24
広告ページ 25
編集後記 28

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2018年度RIWC in Aucklandにおける総会(2月8日)の報告

2018年度RI世界大会報告第1弾

RIWC 2018 in Aucklandの総会は、2月8日(木)、午前9時から午後5時まで、オークランド大学ビジネス・スクールのオーウェン・G/グレン・ビルディング(OGGB)3階 Decima Glenn Room にて開催された。

ファッサーRI会長の挨拶のあと、点呼の確認をするメンバーの選出と承認が行われ、出席者の点呼が行われた。正会員のパキスタン代表が欠席するも、前回と同様、スカイプによる参加が承認された。
引き続き、議長、司会者の選出と承認が行われた後、事務局メンバーのやボランティアメンバーの紹介などの報告事項等があった。
日本からは、金井JRPS理事長および森田国際担当理事が出席した。

本報告では、議題案に沿って、結論だけを簡潔に紹介したい。

(1)歓迎の辞および議題案項目の承認

ファッサーRI会長、ニュージーランド網膜色素変性協会フレイザー・アレキサンダー会長の挨拶に引き続き、事前に各加盟国に送付されていた議案書の目次を、(2)~(10)の項目に整理したことの適否に関して議論検討が行われ、原案が可決された。

 

(2)2016年台北世界大会議事録の承認(付属文書02-1参照)

議事録は、全会一致で可決、承認された。

 

(3)活動報告と会計報告(2016年7月~2018年1月)

会長による活動報告(付属文書03-01参照)
常任理事会、経営最高責任者による会計報告(付属文書03-02参照)
会費減免処置による損益処理について(付属文書03-03参照)
 2017年度、香港(Retina Hong Kong)より年会費の支払いが困難になったため、割引申請が出された。それとともに、2018年度以降は団体正会員の年会費全額支払えるようにする予算計画も提出されたので、今回は割引申請を承認することとなった。ギリシャ(Hellenic Retina Society Greece)に関しては、前回総会において、すでに割引を承認していたが、その後も、年会費全額の支払いができないため、正会員から連携団体会員に移管となった。また、モロッコは、前回大会で年会費も支払って、候補団体会員に応募すると約束していたが、その後、RIから連絡を取っても無しの礫であるので、運営常任理事会では、モロッコ側が候補団体会員への応募をやめたか、支払いができなくなったためであろうと判断し、連携団体会員への移管とした。
最後に、災害のために大きな被害を受けたプエルトリコへの支援をしたいという会長談話もあった。
会計年度が12月末なので、申し出は12月20日までにすることになった。
活動報告については、ファッサー会長から、会計報告に関しては、担当理事とCEOから説明がなされ、質疑応答の後、全会一致で可決承認された。

 

(4)管理運営統治組織(付属文書04-1参照)

新たな管理運営統治組織の提案
 ファッサー会長は、財政的困難および網膜疾患研究の大きな進展という現実をふまえ、さらに治療法の確立というRIの存在理由である大目的の実現のために、現在のRI規約の全面的な見直しの必要性を訴えられた。見直しの担当を委託された南アフリカのクローデット・メデフィント氏は、とりわけ会費収入の側面から会員資格の見直しに着目した。現状では、高額の年会費を支払っている正会員の権利も十分には守られていないし、RI組織外からの新たなニーズにも対応できていないとして、以下の見直し案が提案された。

従来の会員資格は、

  • 団体正会員(Full Membership)
  • 候補団体会員(Candidate Membership)
    (支払い義務を含め正会員の条件をすべて満たした上、申請から2年で正会員になれる)
  • 連携団体会員(Associate Membership)
  • 友好団体会員(Interest group Membership)

の4種類の類型であったが、これらに加えて

  • Bカテゴリーとして凖団体会員資格(Affiliate Membership)

(RI会員としてのすべての基本条件は満たしていないが、RIの活動に賛同し、資金を出しても参加を求めている団体)

を加え、新年度より5つの会員資格を創設するという規約改正案である。

さまざまな質問やわかりにくいなどの疑問が噴出し、議論がなされた。RI規約の改正には、投票総数の3分の2以上の賛成が必要ということを確認し、最終的には満場一致で可決された。

 

4.2. 規約の中で新しくなった部分

会員資格が5つの種類となったこと。

 

4.6. 新規約に関する質疑応答(質問部分は省略)

上記で提案された新規約での準会員資格の権利と義務に関する規定は、正会員以外の会員資格についても適用される。このうち、候補会員と連携会員は、RI総会にオブザーバーとしての出席ができるが、投票権はない。この2つの類型の会員は、運営常任委員会の財政担当委員による検討の結果、支払額が決定されるが、割引額は最大50%で、財政状況にふさわしい金額とされる。権利は、支払金額に厳密に応じて配分される。友好団体は、RIの総会に出席できない。また準会員は、Retina Internationalの科学・医療諮問委員会(Scientific and Medical Advisory Board)の主催する大会に参加できない。

さらに、本規約においては、一国から複数の正会員が承認されることはあり得る(質問に対するRI本部による公式回答)。

 

(5)選挙 (今回は、2017年度までの規約に基づく)

5.1 RIの団体会員の承認について( 付属文書05-1参照)
 5.1.1 連携団体会員(Associate members)
 5.1.2 友好団体会員(Interested groups)
 5.1.3(正会員)候補団体会員(Candidate members)
 5.1.4 団体正会員(Full members)

いったん脱退していたカナダ(The Foundation Fighting Blindness, Canada)が、団体正会員に復帰申請を出し、新年度より正会員としての復帰が承認された。また、イラン(Retina Center Iran)からも申請があったが、RIの会員資格に関する規約の条件を満たしていないため、連携団体会員としての参加を認めることになった。アルゼンチン(Retinitis Pigmentosa Foundation Argentina)は、候補団体会員としての申請をしているが、現時点では申請書類が提出されているだけで、支払いがされていないので、7月の支払い期限までに正会員の年会費が振り込まれることを条件として承認された。

したがって、現在の団体正会員は、オーストラリア、ブラジル、フィンランド、フランス、ドイツ、香港、アイスランド、アイルランド、 イタリア、日本、ニュージーランド、ノルウェイ、パキスタン、南アフリカ、スウェーデン、スイス、台湾、英国、米国の19カ国である。

以上、論議を尽くした後、最終案が全会一致で可決承認された。

5.2 RI本部事務局メンバーに関して(付属文書05-2参照)
5.2.1 RI本部運営委員会常任理事について(Management Committee)
前回の5名からドイツとアイスランド代表者が新たに立候補し、以下の7名が立候補しており、満場一致で承認された。

Fraser Alexander (ニュージーランド)、Kristin Halldor Einarsson (アイスランド)
Michael Laengsfeld (ドイツ)、Claudette Medefindt (南アフリカ:副会長)
Caisa Ramshage (スウェーデン)、K. P. Tsang (香港)
Abdullah Yusuf (パキスタン:監事)

5.2.2 RI会長について
常任運営委員会により唯一の立候補者であるクリスチナ・ファッサー氏が指名を受け、続投の意思と方針が述べられた。それを受けて、全会一致で、ファッサー氏を、会長として選出した。

5.3 特別表彰(RIWC2018)
ジーン・ベネット医学博士(米国ペンシルベニア大学)
(網膜の遺伝子治療に関する多大な貢献を評価して:講演はリンクページに)

 

(6)RI書記局及び本部事務局
(Retina International Secretariat and president’s Office)

6.1 RI経営最高運営責任者による事業報告および事業計画案 (付属文書06-1参照)
 6.2  RI書記局及び本部事務局:2018~2020年度事業計画
           目的・中期達成目標・最終的成果について (付属文書06-2参照)
運営常任理事会は、経営最高責任者(CEO)と会長により作成された事業報告と2018年から2020年に至る事業計画を全面的に検討した結果、妥当なものとして承認するという報告があった。それを受けて、総会では以下の常任委員会委員を含むWEB担当者たちによる質疑の後、満場一致で承認された。

南アフリカ代表の常任理事、Claudette Medefindtさんから出された質問は、なぜRIの仲間の中で、social media が広がっていかないのか?というものであった。オーストラリアのLeighton Boyd氏は、現在、オーストラリア網膜協会のWEBサイトとソーシャルメディアの見直し中で、両者を連動させることで国際的なサイトにしたい。スイスのStephan Hüsle氏は、RIのWEBサイトは、そもそも使いにくい、アイスランドの常任理事Kristin Halldor Einarsson さんは、使ってみて、さらに会員たちの交流やアクセスが増えるように、改善を進める必要性を主張した。ニュージーランド網膜協会のSue Emiraliさんは、この問題を認識していて、WEBサイトの中でフェイスブックとツイッターをリンクさせ、さらにユースのフェイスブックのページともリンクさせるという工夫をしているという話をされた。
これらの議論を受けて、RIのWEBサイト担当者であり、かつ経営最高責任者(CEO)でもあるAvril Dalyさんは、現在、どうすれば、アクセスしやすく、会員たちにとって有益なWEBサイトに改善できるかの調査に着手したいと答えた。

6.3 RI本部書記局:2019~2020年度予算案  (付属文書06-3参照)
運営常任理事会では、提出された事業計画案および予算案を吟味した上で、滞りなく実行されることを条件として承認するという報告がされた。それを受けて若干の質疑応答があったのち、参加各国の満場一致で、承認された。なお、予算案は付属文書の通りであるが、単位はスイスフランである。米国ドルではないので、注意されたい。

 

(7) RI世界大会について(Retina International conferences)

7.1 2020年度RI世界大会について
 アイスランド網膜色素変性症協会よりの報告(付属文書7-1参照)
 詳細は、Retina Iceland作成のプログラムを参照。アイスランド代表がRIWC2020の準備を順調に進めているということを動画とともに説明した。開催時期の秋の季節のことを問われ、一般的にはマイルドであるが、最終的には予測不能であると答えて、会場の笑いを誘った。アイスランド網膜協会会長の挨拶は、コチラです。また、RIWC2020の動画は、こちらです。
なお、アイスランドそのものの情報も含めたRIWC2020の日程等の情報に関しては、本HP上にすでに上げておりますので、「RIWC2020 in Reykjavik (Iceland) 日程に関する1回目のご案内」も参考にしてください。

7.2 2022年度RI世界大会(付属文書7-2参照)
  2022年度のRI世界大会には、パキスタンとアイルランドの2カ国から立候補表明があり、パキスタンが、今回敗れた方が次回は自動的に開催国にしてはどうかという提案をした。それには、ほとんどの国が反対をし、毎回立候補が複数あった場合には投票をするということになった。パキスタンは、それらの議論を受けて、2024年に立候補する条件で、今回の立候補を取り下げると表明し、アイルランドのダブリン開催が、満場一致で決定された。

 

(8). RI本部による広報活動および情報提供活動

8.1 世界網膜の日の世界同時開催
Avril Daly 氏は、WHOを通してグローバルな日にする申請を考予定している。また英国協会のTina Houlihanさんが企画している世界網膜の日関連の地域イベントに、多くの資料類を提供することは、日程的に可能かという質問に対し、承諾された。

8.2 公式WEBサイトによる情報提供(付属文書08-2参照)
Avril DalyさんとFraser Alexander氏がメディア戦略を示し、グローバルな相互コミュニケーションに関する一般的なコメントをされた。

8.3 広報戦略(付属文書08-3参照)
広報閃絡とコミュニケーション戦略に関しては、運営常任理事会で検討した結果、これを承認したという報告があった。それを受けて、総会会員の満場一致で承認された。

 

(9)RI直轄地域単位活動(Retina International regional sections)

9.1 欧州網膜協会(Retina Europe)の活動
欧州網膜協会の会合をさらに広範囲に展開するという合意がされた。

9.2 Retina Ibelo (ラテンアメリカ協会)
正会員を目指していたチリの協会(FUNDALURP)が中心となって、中南米の網膜疾患患者のための地域国際会議を企画している。ファッサー会長は、スペイン語で、彼らの企画に対する何が重要かというアドバイスをされた。
南アフリカが、地域協会(アフリカ地域協会)を一緒にやる組織への呼びかけを行った。
なお、日本代表として、アジア地域国際協会の創設を課題としていたが、総会では発言を控えた。ただ、同じアジアから来ている香港と台湾代表からは、ぜひ日本が中心となってやって欲しい。その場合、協力は惜しまない、という熱心な誘いを受けた。その手始めとして、2018年9月29日~30日に予定されている「世界網膜の日 in 愛媛」に代表団を送り込みたいという申し出を受けた。

 

(10) その他(Miscellaneous)

フィンランド網膜協会(Retina Finland)が、網膜疾患患者の病態履歴から調査する研究を、希少性難病研究所(IRDiRC)の協力の元で行っているという報告があった。
ファッサー会長は、関連して欧州希少性視力疾患ネットワーク(ERN)について、言及された。
経営最高責任者でスイス網膜協会(Retina Suisse)のステファン・ハスラー氏は、スイス視覚障碍者中央組合(Swiss central Union of and for the Blind)が、70歳以上の一般人1300人に対して、1人当たり5分から10分の各人の視覚、聴覚等の問題が歩かないかについての聞き取り調査を実施し、その結果を公表していると述べた。その調査によると、10人に1人が視覚に問題を自覚しており、そのうち33人は聴覚にも異常があると自覚している。しかし、視覚障碍者へのサービスがあるということを知っていたのは1300人中たった2名であった。
ニュージーランド網膜協会(Retina New Zealand)のSue Emiraliさんは、若き障害者(視覚障害に限らず、すべてのタイプの障害に対応)たちの交流のための会合を企画している。若者たちに何ができるかは大人は判断できないので、若者たち自身に、健康問題や福祉問題にすいてのグループができるように手助けしたいと述べた。
チリのGustavo氏は、盲導犬が少なく、盲導犬訓練所もない為、同訓練所を立ち上げる新規プロジェクトをを考えていると表明した。これは、最近、盲導犬訓練施設の創設に貢献したという香港のKP Tsang氏の体験談をファッサー会長から聞かされたことが直接的な動機であった。Tsang氏は、協力を約束した。

ファッサー会長は各国代表団に、の協力を感謝するとともに、閉会を宣言して総会を終了した。

 

以上  (文責:森田三郎)

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RIWC2020 in Reykjavik (Iceland) 日程に関する1回目のご案内

2020年にアイスランドのレイキャビック市にて開催されます第21回世界網膜大会については、以下のように、時期と場所は決まっておりますが、プログラムなどの詳細は、まだこれから順次発表される予定です。情報が入り次第、本ホームページ上に載せますので、大会参加を検討されている方は、時々ホームページをご確認ください。

開催 年月日:2020年6月4日(木)~6日(土)
開催 場 所:ハルパ・レイキャビック・コンサートホール 兼 会議場
参加登録の開始:2019年11月から

大会のHP(RIWC2020 in Reykjavik (Iceland))

動画による紹介(RIWC2020 in Reykjavik (Iceland))

アイスランドは、どこにある?

アイスランド島の地図(江草 拓氏提供:江草氏のHP

アイスランド観光情報(Guide to Iceland)

アイスランド駐日大使館・総領事館(総領事館は、京都にもあります)

Embassy of Iceland in Tokyo / 駐日アイスランド大使館(Facebook)

駐日アイスランド大使館(アイルランド政府による公式ホームページ)

3分で分かる!アイスランドってどんな国?~ 基礎知識編(トリップス)

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あぁるぴぃ133号(20180328)

JRPS だより …… 3
4 月の相談予約のご案内 …… 3
9 月開催の「世界網膜の日 in 愛媛」について …… 3
「RP 児をもつ親の会」のお知らせ …… 4
あなたも誰かの役に立つ ~JRPS ピアサポーター養成事業 …… 4
あぁるぴぃ広場 ~会員の皆さんからの投稿 …… 6
駅のホームで転落。そのとき……。(高田 澄代) ……  6
ニュージーランドで親善交流(小川 正次) …… 6
学術研究助成受賞者は今  …… 7
第 11 回 小沢 洋子(2010 年・第 14 回受賞)  …… 7
研究推進委員会(Wings)通信(第 14 回) ……  9
臨床研究法施行にあたって …… 9
Wings ひとくちコラム(第 8 回) …… 10
見えない・見えにくい自分の伝え方 …… 11
第 6 回 世の中の認識は変わる?(長岡 雄一) …… 11
生活便利グッズの基礎の基礎 …… 12
第 11 回 点字に挑戦してみませんか!? …… 12
第 12 回 「Skype」を利用したメンバー交流について …… 13
QOL 委員会から ~生活の質を向上させるための各種情報  …… 14
第 28 回 交通機関を利用しやすく ―バリアフリーについての法律の改正 …… 14
ちょっと賢い生活の知恵袋 …… 15
第 20 回 「Suica」と「ICOCA」の音声対応について(金澤 真理) ……15
都道府県 JRPS 活動予定 ……16
北海道……16 / 岩手県……16 / 山形県……16 / 福島県……17
群馬県……17 / 栃木県……17 / 埼玉県……18 / 千葉県……18
東京都……18 / 神奈川県…19 / 新潟県……19 / 長野県……19
静岡県……20 / 富山県……20 / 福井県……20 / 岐阜県……20
愛知県……21 / 滋賀県……21 / 京都府……21 / 奈良県……22
大阪府……22 / 和歌山……22 / 兵庫県……23 / 広島県……23
香川県……23 / 徳島県……24 / 愛媛県……24 / 福岡県……24
長崎県……25 / 大分県……25 / 熊本県……25 / 宮崎県……26
鹿児島県…26 / 沖縄県……26
専門部会の活動予定 …… 26
JRPS ユース …… 26
編集局より …… 28
広告ページ …… 28
編集後記 …… 32

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第12回JRPS網脈絡膜変性フォーラム報告

日 時:2017年11月19日(日)9:50~12:30(開場9:00)
会 場:千里ライフサイエンスセンター 5階ライフホール
(大阪府豊中市新千里東町1-4-2)

講 演:網膜色素変性の治療の最前線
~基礎研究から臨床応用へ~

10:00~
網膜色素変性に対する視細胞保護治療
池田 康博(九州大学)

10:30~
網膜移植と再生医療
万代 道子 (理化学研究所)

11:00~
チャネルロドプシンを用いた視覚再生
冨田 浩史(岩手大学)

11:30~
遺伝性網膜疾患: 診断から治療へのアプローチ
藤波 芳(東京医療センター)

12:00~
人工網膜による視覚機能の再建 ~開発の現状と未来
森本 壮(大阪大学)

オーガナイザー:山本 修一(千葉大学) 町田 繁樹(獨協医科大学)

主 催:公益社団法人 日本網膜色素変性症協会(JRPS)
後 援:厚生労働省 大阪府 大阪市 公益社団法人 日本眼科医会 公益社団法人
ネクストビジョン 日本ロービジョン学会 一般社団法人 大阪府眼科医会 京都府眼科医会 兵庫県眼科医会 社会福祉法人 大阪府社会福祉協議会 社会福祉法人 大阪市社会
福祉協議会
一般財団法人 大阪府視覚障害者福祉協会 一般社団法人 大阪市視覚障害者福祉協会

事務局:公益社団法人 日本網膜色素変性症協会(JRPS)
〒140-0013 東京都品川区南大井2-7-9 アミューズKビル4F

講演要旨
網膜色素変性に対する視細胞保護治療
九州大学眼科  池田 康博

網膜色素変性(RP)とは、暗いところで見えにくい夜盲という症状で始まり、視野が少しずつ狭くなり、最終的には視力が低下してしまう遺伝性の網膜の病気です。目に関連する遺伝子のキズが原因で、網膜の神経細胞(視細胞)が少しずつ傷害を受けていきます。外界情報の約80%を得るために必要なこの視力を失うことで、我々のQOL(生活の質)は著しく低下し、社会活動は大幅に制限されることになります。現時点で有効な治療法が確立されていない難病で、早期の治療法開発が望まれています。
その近未来の治療法として期待されているもののひとつが、遺伝子治療です。欧米では、レーバー先天盲やコロイデレミアといったRPによく似た遺伝性の網膜の病気に対して治験が実施され、一定の安全性と治療効果がすでに明らかとなっています。遺伝子治療が標準治療の一つとして認められる日が近づいてきていると言えます。レーバー先天盲やコロイデレミアの場合、病気の原因となっている遺伝子のキズを治す(正常な遺伝子を補充する)という、遺伝子治療における理想的なアプローチが選択されていますが、RPの場合は遺伝子のキズが多岐にわたる(70種類以上)ため、現実的にはすべてのRPの患者さんにこのアプローチを適応するのは難しいと考えられています。
そこで我々が注目したのが、視細胞保護遺伝子治療です。RPでは遺伝子のキズにより最終的に視細胞の細胞死が生じますが、神経細胞に対し保護作用を有する神経栄養因子と呼ばれるタンパク質を作り出す遺伝子を目に打ち込むことによって、その神経栄養因子が目の中でたくさん作られ、視細胞が護られて視力が低下するのを防ぐという方法です。今回、神経栄養因子として色素上皮由来因子(PEDF)を選択し、これまでに複数のRPの動物モデルにおいてその治療効果を確認しました。さらに大型動物であるカニクイザルを用いた安全性試験により、この治療法の安全性を確認しました。これらの効能試験ならびに安全性試験の結果に基づき、臨床研究実施計画を立案し、平成24年8月に厚生労働大臣より了承されました。本臨床研究の主な目的は、SIVベクターの眼内投与の安全性を確認することで、平成25年3月26日に第1症例への投与を実施し、これまでに5名の被験者に臨床研究薬の投与を完了しました。現時点で臨床研究を中止しなくてはならないような重篤な合併症はありません。また、この臨床研究と並行して、次のステップとなる医師主導治験の準備を進めています。
本講演では、遺伝子治療臨床研究の結果を中心に、RPに対する視細胞保護遺伝子治療の可能性についてご紹介させていただく予定ですが、さらに、広い意味でのRPに対する視細胞保護治療の可能性についても併せて紹介したいと思います。

池田 康博( Yasuhiro Ikeda )
1995年 九州大学医学部 卒業
1995年 九州大学医学部眼科 入局
2003年 九州大学大学院医学系研究科博士課程 修了
2004年 九州大学病院眼科 助手(現・助教)
2015年 九州大学病院眼科 講師
2016年 九州大学大学院医学研究院眼病態イメージング講座 准教授
現在に至る

 

講演要旨
網膜細胞移植と再生医療
理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト  万代 道子

現在私たちは、iPS細胞を用いて加齢黄斑変性に対する網膜色素上皮細胞の移植プロジェクト、そして網膜色素変性に対する網膜組織移植プロジェクトに取り組んでいます。
加齢黄斑変性についてはすでに最初の自家iPS由来の網膜色素上皮移植からほぼ3年経過し、特に合併症はみられることなく移植片が安定して生着していることを確認しています。この結果をうけて、網膜色素変性に対するiPS細胞由来網膜組織の移植治療についても臨床研究を視野に研究を進めているところです。
私たちは今年初め、マウスのiPS細胞由来の網膜組織を末期網膜変性モデルに移植すると、移植した視細胞とホストの2次神経細胞がつながり、光シグナルをホストの神経節細胞に伝えること、行動実験においても移植後のマウスで光合図による学習効果がみられるようになることを報告しました。同じような網膜組織はヒトのES細胞やiPS細胞からも用意でき、また移植後末期の変性網膜に生着して成熟することを動物モデルで観察しています。さらに現在は、これらのヒトのESやiPS細胞でも移植後成熟して光に応答することを検証中です。今後、安全性試験などを重ねて、ヒトでの臨床応用を目指して準備を進めていく予定です。
人でも動物で得られたような効果がみられるかは臨床研究をしてみないとわかりませんし、うまくいっても最初はうっすら小さく光がわかる、といった程度の効果しか得られないかもしれません。しかし少しでも光がわかるとなれば、よりその効率をよくしていくこともできるのではないか、とも思っています。
最初の臨床研究は最初の一歩にすぎませんが、現在の進捗と今後の見通しなど紹介したいと思います。

万代 道子( Michiko Mandai )
1988年 京都大学医学部 卒業
1988年 京大病院眼科研修医
1989年 関西電力病院眼科
1990年 京都大学医学部大学院博士課程
1994年 京都大学眼科学教室 助手
2000年 米国NIH 研究所 客員研究員
2002年 京都大学病院探索医療センター 助手
2006年 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 網膜再生医療研究チーム研究員
2006年 神戸市立医療センター中央市民病院 非常勤医師
2011年 先端医療センター病院 眼科副部長
2013年 理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 副プロジェクトリーダー
現在に至る

 

講演要旨
チャネルロドプシンを用いた視覚再生研究
岩手大学理工学部生命コース   冨田 浩史

緑藻類クラミドモナスより同定されたチャネルロドプシン-2(ChR2)タンパク質は、光受容に伴い細胞内に陽イオンを透過させる、光活性化陽イオン選択的チャネルとして機能する。神経細胞の興奮は細胞内への陽イオンの流入によって引き起こされるため、神経細胞にChR2を発現させることで、光照射によって興奮を誘起する光感受性神経細胞となる。我々は2005年から、この特徴的な機能を持つChR2の眼科分野への応用に取り組んできている。
網膜色素変性症では、視細胞が焼失し失明に至った場合でも、視細胞以外の神経細胞は残存していることが報告されている。残存する神経細胞、その中でも特に、視神経を構成する神経節細胞は、元来、視覚情報を脳に伝達する役割を担っており、この神経節細胞にChR2を発現させることで、神経節細胞が直接、光を受容し、脳に視覚情報を伝達できると考えられる。我々は、ChR2遺伝子を網膜神経節細胞に運ぶウイルスベクターとして、アデノ随伴ウイルスベクター2型(AAV)を選択し、遺伝的に視細胞変性をきたす(遺伝盲)ラットを用いて、視機能の回復を検証してきた。その結果、1回の遺伝子導入で約30万個の細胞にChR2タンパク質が発現し、ラットの生涯(約2年)を通じて回復した視機能が維持されること、ならびに重篤な副作用が見られないことが示されている。しかしながら、ChR2タンパク質が感じ取れる光は青色に限定されるため、ChR2を用いた遺伝子治療で視覚が回復できたとしても、青色しか見ることができない。この問題点に対して取り組み、2009年、同じ緑藻類のボルボックスから同定されたチャネルロドプシンを人為的に改変し、1つのタンパク質で青、緑、赤のほぼすべての色に応答する改変型チャネルロドプシン(mVChR1)の開発に成功している。mVChR1遺伝子導入によって、RCSラットの視機能回復が見られることならびに副作用が生じないことを確認し、臨床開発に必要な一部の前臨床試験を(独)医薬基盤研究所ならびに国立研究開発法人日本医療研究開発機構の支援により実施し終了している。
ChR2に関しては、ChR2の知財権を持つアメリカRetroSense社のサイエンティフィックアドバイザーとして臨床開発に協力し、2016年2月に、アメリカで臨床試験が始まっている。また、我々が独自に開発したmVChR1は、2016年2月よりアステラス製薬により臨床開発が進められている。
今回、これらのチャネルロドプシンによって得られる視覚特性を中心に、現在までの研究経過を報告する。

冨田 浩史( Hiroshi Tomita )
1990年 京都府立大学農学部 卒業
1992年 京都府立大学大学院農学研究科修士課程 修了 農学修士
1993年 東北大学医学部眼科学講座研究生(出向)
1998年 東北大学大学院医学系研究科眼科学講座 助手
2002年 長寿科学振興財団海外派遣研究員
(アメリカ合衆国オクラホマ大学眼科学講座)
2004年 東北大学先進医工学研究機構 助教授
(生命機能科学分野 人工網膜研究チーム チームリーダー)
2008年 東北大学国際高等融合領域研究所医歯薬融合領域 准教授
2012年 岩手大学理工学部生命コース 教授
(兼務)
東北大学 大学病院臨床研究推進センター 客員教授
RetroSence, LLC(U.S)(2008/1-2016/12)
現在に至る

 

講演要旨
遺伝性網膜疾患:診断から治療へのアプローチ
国立病院機構東京医療センター 眼科  藤波 芳

遺伝性網膜疾患に関する診断から治療へのアプローチは近年劇的な変化を遂げている。標準とされる4行程(1.クリニックにおける臨床検査・診断、2.遺伝子検査・診断、3.臨床診断と遺伝子診断の相関確立ならびに最終確定診断、4.臨床治験導入)を経る形で、遺伝性網膜疾患に対する診断から治験導入が行われている。特に、この数年における遺伝医学分野における技術革新、情報共有・統合化の加速に伴い、欧米を中心に臨床治験導入が拡大し、世界的に見ると、千名以上の遺伝性網膜疾患患者が遺伝子置換治療、遺伝子導入治療、薬物治療、再生細胞治療、人工網膜などの先鋭的臨床治験に参加している。
本講演では「治療が皆無であった」時代から、「治療を選択する」時代へ大きな変容を遂げつつある遺伝性網膜疾患分野における現在の取り組みについて、最新の情報を含めて紹介される。

1.臨床診断
遺伝性網膜疾患は希少疾患に分類される。網膜色素変性症という臨床病名の患者群の中にも原因となる(もしくは関連する)遺伝子は数十以上存在するため、単独施設における原因遺伝子ごとの臨床情報は極限られたものとなり、診断に苦慮することも少なくない。この状況を受けて、国内・国外で同一の臨床検査を基にデータ共有し、共同で臨床診断を行う、多施設共同研究が遂行されている。一例としてJapan Eye Genetics Consortium(JEGC)が挙げられる。JEGCは2006年に東京医療センター・臨床研究センター(NISO)を中心に設立され、日本臨床視覚電気生理学会の後援を受ける形で2017年8月現在までに国内23施設から約1600症例以上の情報共有がオンラインデータベースを利用して行われている。さらに、アジアの代表として、アジア域内(12ヵ国約50施設)での情報共有、その他の4大陸との連携(欧州、北米、豪州、南米)が強力に推進されている。

2.包括的遺伝子検査・診断
2010年代に入り、次世代シークエンスの標準化に伴い、250を超える網膜疾患関連遺伝子を同時に検索する手法が導入され、その他の手法では実現が難しかった包括的な遺伝子検査が可能となった。さらに、日本人特有の遺伝背景を数千単位の正常人データから割り出すことで、欧米からの過去の報告を基準とした形では診断が困難であった症例についても、日本人の特性を大規模コホート内で理解した上での遺伝子診断が実現化し、より精度の高い診断が現実のものとなっている。

3.臨床診断と遺伝子診断の相関確立と最終確定診断
数千単位の症例の、臨床・遺伝情報の共有化の実現により、網膜関連遺伝子それぞれについての臨床像が明らかとなり、「網膜色素変性症」と漠然と呼ばれてきた病名の中にも、様々な小分類が存在することが解ってきた。これらの分類診断は、原因遺伝子・病態を基に行われており、小分類間で、発症、重症度、進行性、遺伝様式が異なるため、この臨床診断・遺伝子診断を繋ぎ合わせた病態に基づく最終確定診断が患者カウンセリング、治療導入に必須の工程となっている。特に、日本人における臨床診断と遺伝子診断の関連においては、過去、包括的遺伝子解析を用いた大規模研究による調査が存在しなかったが、2010年代後半に入り日本人特有の疾患分類や病状が次々と明らかとなり、原因に即した形、病態に即した形で、それぞれの疾患の再整理が急務となっている。

4.治療導入
臨床診断、遺伝子診断から最終確定診断が得られた後、原因遺伝子、病状、病期(therapeutic
windows)を加味して、治験導入が考案される形が一般的となりつつある。国内・国外を含めて、様々な施設で、様々な手法で治療導入が行われる中で、治療適応疾患、その原因遺伝子、病期などの情報を共有する体制づくりが精力的に進められており、遺伝性網膜疾患治験情報ウエブサイト、症例情報共有オンラインデータベース、患者レジストリなどを通して、個々人に適した治療を選択する時代が日本に到来する日が間近に迫っている。

藤波 芳( Kaoru Fujinami )
2004年名古屋大学医学部医学科 卒業
2004年 名古第一赤十字病院 前期臨床研修
2006年 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 眼科後期臨床研修医 臨床研究センター 視覚研究部 視覚生理学研究室 研究 員
2009年 英国Moorfields Eye Hospital、Electrophysiology、Fellow 英国UCLInstitute of Ophthalmology、Genetics、Research Assistant
2013年 独立行政法 人国立病院機構 東京医療センター 眼科 慶應義塾大学大学院博士課程眼科学専攻 網膜細胞生物学グループ
2016年 英国UCL Institute of Ophthalmology、Genetics、Research Associate英国Moorfields Eye Hospital、Division of Inherited Eye Disease、Honorary Clinical Manager 、慶應義塾大学眼科学講座 非常勤講師
2017年 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター・臨床研究センター 視覚研究部 視覚生理学研究室 室長英国UCL Institute of Ophthalmology、Genetics、Senior Research Associate

 

講演要旨
人工網膜による視覚機能の再建 -開発の現状と未来
大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学  森本 壮

人工網膜は、網膜色素変性などで視細胞を失った網膜に対し、視細胞の代わりに残った網膜の内層の神経細胞に対し、電気刺激を行い、点状の光を感じさせることによって視覚を回復させる方法です。
具体的には、まず電気刺激を行うための電極を何十極も載せた電極板と体内刺激装置を患者さんに埋植します。次にCCDカメラがついた眼鏡をかけ、CCDカメラの画像を携帯型のコンピュータで処理し、その情報を、電波を使って体内刺激装置に伝え、体内刺激装置はその情報に従って多点電極を通して網膜に対して電気刺激を行います。
現在、人工網膜は3つのタイプの研究開発が進んでいます。一つ目は網膜上刺激型人工網膜で電極を網膜の上に置く方法で、主に米国で開発された方式で、すでに米国やEUでは、認可されておりそれらの国で治療を受けることができます。二つ目は、網膜下刺激型人工網膜で、電極を網膜下に置く方法で、主にドイツで開発が進んでいる方式で、第一世代の開発と臨床試験は終了し、現在、第二世代の人工網膜の開発が進行しております。最後に、我々が開発した日本独自の方式である脈絡膜上経網膜電気刺激(STS)型人工網膜で、これは眼球の外側の強膜からトンネルを作製し、脈絡膜上に電極を設置する方法で、他の方式と異なり、網膜に直接電極を置かないので、網膜への組織損傷が少なく、電極の交換が容易で、将来、再生医療を患者さんが受ける場合にも併用が可能な方式です。

本講演では、我々がこれまでに行ってきたSTS型人工網膜装置の臨床試験の結果について述べ、他の方式の人工網膜装置の臨床試験の結果にも触れ、現時点での人工網膜でどこまで見ることができるかについて述べたい。また、現在開発中の第三世代の人工網膜の研究の状況や今後の人工網膜の展望について述べる予定である。

森本 壮( Takeshi Morimoto )
1997年 大阪大学医学部 卒業
1997年 大阪大学医学部眼科学教室入局
2001年 大阪大学大学院医学系研究科未来医療開発専攻 博士課程
2005年 医学博士(大阪大学)
2008年 大阪大学大学院医学系研究科眼科学 医員
2009年 大阪大学大学院医学系研究科寄付講座視覚情報制御学 助教
2010年 大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学 講師
2012年 大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学 准教授
現在に至る

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JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第13回JRPS網脈絡膜変性フォーラム
(静岡県・浜松アクトシティコングレスセンター:20180923)

 

第12回JRPS網脈絡膜変性フォーラム
(大阪府・千里ライフサイエンスセンター:20171119)

第11回JRPS網脈絡膜変性フォーラム
(三重県・伊勢市観光文化会館:20161002)

第10回JRPS網脈絡膜変性フォーラム
(高知県高知市・高知プリンスホテル:20151101)

第9回JRPS網脈絡膜変性フォーラム
(東京都東京国際フォーラム:20140405)

第8回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第7回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第6回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第5回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第4回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第3回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第2回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第1回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

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RIWC2014パリ大会参加報告

【開催日】 2014年6月26日~29日〔4日間〕
【開催場所】フランス・パリ市内。ホテル名:プルマン・モンパルナス。大会議室、およびイベントルームにて開催。
【会議スケジュールと主な内容】
6月26日
RI総会(26ヶ国の正会員を含む、世界各国から参加者約70名)

・正会員に台湾、ベルギー、アイスランドが新たに加入し、準会員国としては、アルゼンチン、チリがそれぞれ承認されました。
RI会議については、すでに、2016年の台湾の台北で、台湾と香港の共同開催が決定していますが、2018年は、ニュージーランドのオークランドでの開催が決定しました。台湾、ニュージーランド双方からは参加呼びかけのプレゼンテーションがあり、とくに台湾は駐仏台湾大使や観光省の職員を動員して鼓や胡弓、合唱の演奏、人形劇等をまじえて熱い誘いがありました。
・RIの運営は、設立以来そのほとんどが事務局のボランティアにより現在に至っています。しかし今後、加盟国の増加、タイムリーな情報発信、各国との連携強化等これからの事務局の仕事量も増大することから、専用の事務局設立が提案されました。設立にあたっては、アイルランドが候補でしたが、審議継続となりました。

・役員体制につきましては、ファッサー会長が、満場一致で再選されました。
・理事国は、合計6ヶ国となりました。

・2012年~2013年活動報告、決算および2014年~2015年活動計画、予算案も満場一致で、承認されました。のRIメンバー、Fighting Blindness, Irelandが主体となり、初年度予算、約2000万円 を企業からの寄付で集める活動がスタートします。
・ユーロ圏としては、RIの下部組織としてRIヨーロッパという組織立ち上げをしたいという提案があり、承認されました。

6月27日 
講演会および森田理事によるプレゼンJRPSの歴史と活動に関する報告

1. 臨床試験の体験談発表
人工網膜臨床研究に参加した患者2名から、体験談が発表されました。
一人目は、26歳の時に完全に失明したMikka Terho氏(41歳、フィンランド人男性)。2008年11月に人工網膜を移植し、コンピュータ画面上の白線やLという文字、人の形、目の前にあるものなどを認識できた、とのこと。同氏がこの試験に参加したのは今後の研究の為であり、自分の生活向上が目的ではなかったので、とくにフラストレーションを感じたり、憂鬱になることはなかった、試験結果も満足できる内容であった、と語っていました。本人はどちらかと言うと先鋭的な性格で、とても前向きな人生を送っていると思いました。
二人目のCeline Moret氏(女性、RIスイ ス所属)の体験談は対照的で、劇的な効果は見られず、逆に手術の後遺症による血栓塞栓症を脚部に発症し、足を切断する危険にさらされ、とても大変な思いをしたとのことでした。

2. 講演 ニュージーランドの会長:臨床研究に患者として、どう向き合うか。
要旨としては、まず基本となる臨床研究とは何かをはじめに良く理解すること、それに協力する場合は、目的、成果だけではなく、そこに生じる、さまざまなリスクに関しても、担当医と納得行くまで話をし、疑問点を払拭してから望むべきで、またこれから沢山の臨床研究が始まる中、患者としては、こうした知識、心構えについても、学んでいくことが大事なことですと力説されていました。

◇ ファッサー会長との会談の予約が取れ、直接お話を伺うことが出来ました。
会長からは、JRPSに対する、期待と課題についての提言がありました。
一つは、近年アジア諸国においても活動が活発化している現状の中、JRPSの果たす役割はとても大きいと思うので、アジア圏との連携を図ってほしい。
次に、RI(レティナ・インターナショナル)としては網膜に関わる様々な疾患に関して活動を進めているが、JRPSは、網膜色素変性症とその類縁疾患のくくりで良いのか、世界的には、加齢黄斑変性症の患者が増大する中、この病気の患者との係わり合いをどうすべきか、将来の治療法が進む中、どうしていくのかも、検討すべきではないかとの提言もありました。

◇ 近隣諸国の状況について
イ、 香港(Vincent Kwan氏との会談)
会員数は2000名、活動内容には、若い視覚障害者の就学支援があります。視覚障害者が社会で仕事をし生活を営むためには、高い知識を身につける必要があり、奨学金を出し、若い人たちを支援しているそうです。
ロ、 台湾
患者、学術関係の先生との相互理解を深め、医療の現場においてのコミュニケーションが大事という発想から、今回は総勢40名以上の、患者と若い医学生が一緒に旅行をし、ドイツまで来ていました。こうした施策は医療の最前線においては、患者理解の面からもとても大事なことではないかと思います。
ハ、 中国(Jia Yang氏との会談)
日本の拡大読書機や活字文字読み上げ機器には、とても良いものがあると聞いているので、その点を知りたいとの質問がありました。一方では東洋医学について、現在いろいろと研究もしているので、今後情報交換もしていきたいとのことでした。ちなみに中国ではRP患者は40万人はいるだろうとのことでした。

◇ 全体を通しての所感
、 2014年に日本で開催される網脈絡膜変性国際フォーラムに対し、アジア諸国からの関心はとても高く、JRPSとの連携を強く望んでいることから、彼らの招聘を今後検討して参りたいと考えています。またJRPSがアジアで果たすべき役割の大きさを再認識しました。
、 2016年台北における、台湾・香港共同開催のRI会議については、JRPSとしていろいろな面で協力と交流を図るべきであり、検討を進めることが必要であると考えています。
、 欧米においては、人工網膜の開発や網膜関係の臨床研究が、すでに数件スタートしていますが、日本においても、近年人工網膜、iPS/ES細胞による網膜再生、遺伝子治療、点眼薬の臨床研究がめざましいスピードで進んできています。こうした状況に対して、臨床研究とは何か、どう関わっていくのか、その対応はどうすべきかなど、そこに発生するリスクや心理面におよぼす影響などを多角的に考慮し、患者会として早急な啓発活動の必要性も強く感じました。こうした点は次年度の活動として検討を進めていくように考えています。

最後にRI会議に個人エントリーとして、関東、東海、近畿圏からのグループも参加なさっていたこと、あわせてご報告いたします。

文責:国際担当理事 森田 三郎

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◇研究助成受賞者は今(第10回)

第10回 阿部 俊明(1997年・第1回受賞)
東北大学医学系研究科 創生応用センター細胞治療分野教授

1997年に第1回の受賞をさせていただいた東北大学の阿部です。受賞タイトルは“網膜色素変性症の移植により治療の試み”でした。
当時東北大学では、玉井教授が患者さん自身の虹彩色素上皮細胞を網膜下に移植する世界で始めての試みになる臨床研究を行なっておりました。
その成果を利用して移植細胞を神経保護因子分泌細胞に変えて網膜保護を目指す試みでした。現在、細胞移植といえば主としてiPS細胞移植などが注目を浴びていますが、
当時iPS細胞は存在せず、眼内の自己細胞を利用する新しい方法でした。
神経栄養因子を発現する細胞の作製やレギュレーションの問題で残念ながら臨床応用には至っておりません。
しかし、私の網膜色素変性治療の思いは変わらず、現在薬剤を利用した網膜保護を検討しております。
網膜色素変性のように長い時間かけて徐々に進行する疾患は薬剤の投与が難しく、点眼ではなかなか薬剤が網膜まで十分に到達しない可能性もあります。また忘れるなどの問題点もあります。
我々はこれらの問題点を解決すべく薬剤徐放システムを検討してきました。薬にはいろいろなタイプの薬がありますが、我々が開発したデバイスはいろいろなタイプの薬を徐放できるようにしたものです。

このデバイスの開発には、厚生労働省や日本医療研究開発機構(AMED)などから援助を頂き、東北大学内にある臨床研究推進センターと呼ばれる組織の先生たちや工学研究者、眼科の中澤教授らとの共同研究で行なわれました。
現在、徐放される薬剤はスキャンポフォーマ合同会社から提供いただいたウノプロストンを徐放させるように設計されています。
ウノプロストンは千葉大学の山本教授が中心になって行われた網膜色素変性症患者の点眼による治療の治験に利用された薬剤です。その概要は本シリーズ第1回に山本教授が寄稿されています。
我々の方法は投与方法が異なりデバイスから持続的な薬剤徐放を行なう方法です。角膜や結膜といった薬剤を通りにくくしているバリアの下にデバイスを埋め込む方法で、デバイスを埋め込むための手術が必要になります。
しかし、眼内ではないので眼球の中の組織を傷つけず、取り出しもできます。

このデバイスを利用した治療法は現在独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と呼ばれる審査機関に相談しており、平成30年には治験が開始される予定になっています。
埋め込み型の薬剤徐放システムは簡単なようで実はあまり多くありません。
評価をするデータもあまりないようで、PMDAも慎重に対応しているようです。利点として一度埋め込むと自分で投薬を行なう必要がなく、忘れることもなく、点眼ができにくい人でも大丈夫です。
いろいろな治療の試みは世界中で行なわれていますが、さまざまなタイプの網膜色素変性があるので多方面からの研究・開発が今後も必要になると思います。

研究助成者は今 目次

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