第20回 RI世界大会旅行ツアーは、取りやめとなりました。

7月末にお送りいたしました会報129号に掲載しましたが、来年2月初旬にニュージーランドでRI世界大会が開催されます。参加される方のための旅行ツアーは、募集締め切りの10月13日までに、最小実施定員に達しなかったため、残念ながら取りやめとなりました。

 

なお、RI世界大会のプログラムについては、別途、ご紹介いたしております。

 

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今年2017年から、9月23日が「網膜の日」に!

☆「網膜の日」が記念日になりました!

「網膜の日」は、網膜色素変性症をはじめ、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、網膜剥離など、さまざまな網膜の病気についての理解を深め、そうした疾患を抱える人たちとともに生きる社会づくりを考えていくため、今年2017年に制定され、日本記念日協会から認められた国民的な記念日です。
2017年9月30日(土)、公益社団法人日本網膜色素変性症協会が主催する「世界網膜の日 in 宮城」(会場:仙台市福祉プラザ)にて認定授与式が行われます。その後、全国各地で「網膜の日」の普及に向けた活動を展開していきます。

☆なぜ9月23日?

9月23日は、昼と夜の長さがほぼ同じになります。そしてこの日を境に、夜が長くなっていき、暗い時間が増えていくことになります。
「明るさ」は、網膜の病気の抱える人たちにはとても重要です。夜が長くなると、歩ける時間がどんどん短くなります。仕事に行けなくなることもあります。網膜が病気に侵されると、明るい昼間の長さということがとても重要になります。そのため、この日を「網膜の日」と定めたのです。

☆網膜の病気になると・・・。

私たちの眼の奥には「網膜」という光を感じる膜があります。
網膜が冒されると、モノがゆがんで見えたり、視野の中心が黒く曇ったり、目がぼやけるなどの症状が出ます。また、暗いところで見えにくくなったり、視野が狭くなったりするため、日常生活に支障が出てきます。ところが、網膜の病気を抱えていても、周りの人からは分かりにくいため、十分な理解が得られなかったり、いわれのない差別を受けることもあります。

☆網膜の病気を抱えた人たちと生きるために

目の不自由な人が持っている「白杖(はくじょう)」。これは、まったく目が見えない人だけが持っているわけではありません。網膜の病気を抱えた人の「見え方」や病気の進行度合いはさまざまで、実際に五円玉の穴ほどしか見えていなかったり、ものがゆがんで見えたり、スマホを見ることができても、白杖を使わないと安全に歩くことができないのです。 しかし、そうしたことを知らない人から、「見えているのに、見えないふりをしているのでは?」と思われ、非難を受けることも少なくありません。
私たちは、「網膜の日」をきっかけに、網膜の病気を理解し、病気を抱えた人たちとともに生きてくために何ができるかを考えていくことが必要なのです。

【公益社団法人 網膜色素変性症協会】

国の指定難病の一つに指定されている「網膜色素変性症」ならびにその類縁疾患の治療法確立と患者のQOL(生活の質)向上を目指して活動しています。
問合せ:公益社団法人 日本網膜色素変性症協会「網膜の日」事務局
TEL : 03-5753-5156 Eメール:info@jrps.org

PDF資料は、コチラです。

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◇学術研究助成受賞者は今(第8回)

第8回 森本 壮(2012年・第16回受賞)
大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学 准教授

2012年度JRPS研究助成を研究テーマ「網膜色素変性に対する経角膜電気刺激治療の臨床応用」で受賞いたしました。
研究の発端は、大阪大学を中心として、2001年から開始した人工網膜の研究の過程で、電気刺激そのものが網膜や視神経に対して神経保護効果があることが分かり、その後、電気刺激治療の臨床応用に向けて、安全性の高い刺激装置の開発や刺激方法を検討し、網膜色素変性症の患者さんや難治性の視神経症の患者さんに対して臨床試験を行なっていました。
当時、皆さまから研究助成をいただいたおかげで、研究費が充実し、治療に必要な物品や消耗品を購入することができ臨床試験を遂行することができました。また、受賞したことで患者さんの病気を治したい、見えるようになりたいという思いをより強く感じるようになり、研究を推し進める力となりました。
現在、臨床試験は終了し、治療効果について検討しているところです。治療を受けた患者さんの多くが、視力や視野の感度は、治療を受けた後もあまり変化はなかったけれど、治療を受けている時は今より見え方がよかったと言われており、今後、新たな臨床試験を行なう予定ですが、臨床研究、特に患者さんを治療する介入研究については、基準が厳しくなり、費用や人員も必要になっており試験を行なうための準備がたいへんになっている状況ですが、なんとか一般の医療になり、最寄りの眼科医院で治療を受けることができるようになればよいと考えます。
現在は、日本の人工網膜プロジェクトのリーダーである不二門教授の元で人工網膜の研究を行なっています。今年度末(2017年度末)頃から大阪大学、杏林大学、愛知医大の3施設で網膜色素変性症の患者さんを対象に人工網膜の臨床研究を予定しており、現在、候補となる患者さんの診察と検査を行なっています。それとともに、次世代の人工網膜の開発も行なっています。次世代の人工網膜は、従来の1枚電極の欠点である視野の狭さを補うために、2枚の電極を備えており、これによって従来の1枚電極よりもより広い視野を得ることができます。これでもまだ不十分ですが、今後、さらに電極枚数を増やしてより、広い視野で患者さんの生活に役立つような人工網膜を開発していきたいと考えております。
また、現在は、人工知能(AI)の技術やさまざまな「モノ(物)」がインターネットに接続され、(単につながるだけではなく、モノがインターネットのようにつながる)Internet of Things(I oT)の技術が発展してお
り、それらの技術を組み込んだスマート人工網膜を開発し、単に視覚を再建する機器としての役割以外に患者さんの安全や生活の質の向上につながるような機器が開発できたらいいと考えております。
このようにまだまだ、人工網膜の研究開発に解決すべき課題が多く、いつか、スマート人工網膜を開発し、国に認可され、希望された患者さんが自由に埋植手術を受けることができるような時代が来るように研究を進めていきたいと考えております。皆さま方には、今後ともご協力、ご支援をお願い申し上げます。

(次回は、岩手大学 理工学部 生命コース 准教授・菅野恵理子先生です)

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第6回Wings ひとくちコラム

臨床試験への患者参画元年

2017年6月10日、JRPS代議員会に先立って東京大学医科学研究所の武藤香織先生による特別講演「患者にとっての臨床試験の意味を問い直そう」がありました。個々の患者が被験者として臨床試験に参加するときの心構えをまず話された後、今年は患者の臨床試験参画の元年であり、臨床試験のあり方に患者の立場からものを言うことが強く求められていると強調されました。
じつは日本以外の多くの国では患者の意見を聞かなければならないというルールがあります。臨床試験のデザイン、試験を始める際の説明文書の中身、試験終了後の結果報告、とにかくいろんな段階、場面で患者に意見を聞くというのが、欧州やアメリカでのルールです。日本でも医学研究費の配分を統括している日本医療研究開発機構(AMED)の音頭で患者市民参画委員会ができ、今年の夏から検討が始まります。具体的には、患者から見て望ましい臨床試験のやり方、あるいは意見の言い方、結果がどういう形で還元されるのかなど、1年間かけて検討されます。そして研究費の配分の際、研究者は患者の意見を聞いたかどうかが問われるようになるかもしれません。われわれもこれにどう答えていくかが問われています。

※特別講演録音データ希望会員は本部事務局までご連絡ください。

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世界網膜の日 in 宮城2017 (9/30~10/1)開催のご案内

平成29年9月30日~10月1日、仙台市福祉プラザ2階ふれあいホールにおいて「2017 世界網膜の日 in 宮城」が開催されます。主催者として「世界網膜の日」は「網膜色素変性症」を広く社会に認知していただくための重要な機会として、さらに、研究者から患者へ、患者から研究者へのメッセージを伝える重要な場であると考えています。

2017年9月30日(土)10:00~16:30
会場/仙台市福祉プラザ2階ふれあいホール

〒980-0022 仙台市青葉区五橋2丁目12-2 Tel:022-213-6237
市営地下鉄南北線「富沢行」に乗車1分「五橋駅」下車
南1番出口徒歩3分

プログラム

10:00~ 受付
11:00~ アトラクション 「仙台すずめ踊り」
「仙台ガブリエルブラスの楽器演奏」
12:00~ 昼食
13:00~ 開会式・第21回JRPS研究助成授与式・受賞者による研究発表
15:00~ トーク&コンサート「シンガー・ソングライターさとう宗幸さん」
・・・・・・・・・・・・(会員ページにて紹介させていただいています)
16:00~ 次年度開催地への引継ぎ
16:15~ 閉会式
16:40~ 懇親会会場(ホテル松島大観荘)へバスで移動します。

【申し込み及び大会内容に関するお問い合わせ】
実行委員会事務局:小岩赳夫
電話・FAX:022-258-2808
メール:hukutake@ams.odn.ne.jp

 

一泊懇親会と日本三景松島見学ツアーのご案内

一泊懇親会と日本三景松島見学ツアー参加希望の方は、各都道府県協会ごとに、まとめて上記申し込み先に締め切りまでにお申し込みください。
※申込期間 2017年4月1日(土)から7月31日(月)
※個人での参加も大歓迎です。

懇親会 会場 ホテル松島大観庄    宿泊料金について
9月30日(土) 一泊懇親会+朝食付きの料金は以下の通り(バス代込)
☆ シングル 1名室   21,000円
☆ ツイン  2名室   20,000円
☆ 和洋室  5名以上    19,000円
☆ 懇親会のみ参加    12,000円
◎ 宴会は丸テーブル6名〜7名
◎ 和食中心のお料理です。

日本三景松島五大堂・瑞巌寺・松島遊覧の見学ツアー
10月1日(日)
一泊懇親会のみの方は、仙石線松島海岸駅から乗車。
なお、駅までシャトルバスが出ます(徒歩で10分です)。
日本三景松島五大堂・瑞巌寺・松島遊覧コース
会費 7,000円(昼食、バス代含む)
9:00 ~  ホテル出発
9:10 ~  五大堂及び瑞巌寺見学
10:35~ 遊覧船乗り場集合
11:00~ 乗船し島めぐり。塩釜港へ
11:50~ 塩釜埠頭到着。バスで「武田の笹かまぼこ」へ
12:00~ 昼食(伊達な塩釜御膳)、お買いもの
13:20~ バス乗車し、JR仙台駅東口へ
15:00  仙台駅東口到着予定(解散)

世界網膜の日in宮城チラシpdf

世界網膜の日in宮城チラシ(裏側)pdf

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研究推進委員会(Wings)通信(第10回)

■研究推進委員会から要望発信

2017年2月2日、加齢黄斑変性患者を対象としたiPS由来細胞移植の臨床研究開始が厚労相から承認されました。研究開始にあたり、東京大学医科学研究所・武藤香織先生を通じて、マスメディアを含む関係者宛てに以下のような要望書を発信しました。
★本年2月、滲出型加齢黄斑変性に対する他家iPS細胞由来RPE細胞懸濁液移植の臨床研究が理化学研究所はじめ4施設の共同により開始されたとお聞きしています。われわれ網膜色素変性症患者を対象とした臨床研究開始も近いとの期待から、このたびの臨床研究にも大きな関心をもって見守っているところです。一人ひとりの研究参加者の術後の経過がどのようなものになるか、とても気になるところです。
一方で、今回研究に参加される方々が過度な注目にさらされるのではないかと心配していることも事実です。プライバシーが守られ、落ち着いた環境の下で研究参加ができるよう願っています。
また、近い将来、同様な移植治療の臨床研究が始まることを期待している患者としては、先行研究の評価が正しく行なわれることが何よりも大切であると感じています。初期段階で、個々の被験者の断片的な体験や経過が一般に広まることにより、研究の評価に影響が及ぶのではないかと、危惧している次第です。研究の途中経過を知ることより、落ち着いた環境で一日でも早く研究が進むことを希望しています。
以上のようなわれわれの心配、危惧を今回の臨床研究参加者やマスメディアを含め、関係者の皆さまと共有できればと思います。

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◇学術研究助成受賞者は今(第7回)

第7回 角田 和繁(第15回受賞)
独立行政法人国立病院機構東京医療センター
臨床研究センター視覚研究部

受賞テーマ:オカルト黄斑ジストロフィーの原因解明に向けて

オカルト黄斑ジストロフィーは、徐々に視野の中心部が次第に見えにくくなり、視力が低下していく黄斑変性症です。常染色体優性遺伝のため、親から子供へと遺伝する可能性のある疾患です。網膜色素変性症などと異なり眼底検査で異常が見られないため診断が難しく、この疾患の病態については長いあいだ分からないことが多くありました。このたびの研究助成により、オカルト黄斑ジストロフィーについてさまざまな点が明らかになりました。そのひとつは、これまでオカルト黄斑ジストロフィーと診断されてきた症例の中には、RP1L1という遺伝子の異常があるタイプとないタイプが見られ、両者は全く異なる疾患であるということです。現在のところ、オカルト黄斑ジストロフィーの発症に関与する遺伝子として知られているのはRP1L1のみです。この遺伝子の関与が見られないタイプの多くには、網膜内層異常、網膜微小血管異常、網膜の局所炎症などが関与している可能性があります。われわれは、RP1L1遺伝子の異常によって生じる黄斑ジストロフィーを、発見者の三宅養三教授にちなんで「三宅病、Miyake’s disease」と命名しました。その後、オカルト黄斑ジストロフィーは厚労省の指定難病(301、黄斑ジストロフィ)に指定され、診察にあたって医療補助が受けられるようになりました。
オカルト黄斑ジストロフィー以外にも網膜には数多くの遺伝性疾患が存在しますが、現在のところ通常に使用できる治療法はありません。しかしこれまでに多くの治療法が研究され、欧米を中心に進行中の臨床治験も数多く存在します。治療法の多くは、特定の遺伝子異常や病態に対象を絞って治療効果を高める、Precision medicine(高精度医療)と呼ばれる方法です。そのためには、遺伝性網膜疾患の原因の調査を、幅広い病態を対象として、しかも全国的に行なうことが将来の治療導入に向けて不可欠な課題であります。ただし、欧米人と遺伝的背景が異なる日本人においては、網脈絡膜疾患を有する患者さんの半数以上でいまだに原因が特定できていないのが現状です。
現在東京医療センターでは、遺伝性網脈絡膜疾患・視神経疾患(27分類)について、全国の主要な大学や研究施設と連携して疾患の臨床情報(年齢、発症、経過、各種画像等)および遺伝情報を集積するプロジェクトを行なっています。すでに1200例を超える症例が登録されており、治療導入に向けた国内最大のデータバンクが完成されつつあります。将来的にはこれらのデータをもとに、新規治療の対象疾患、対象患者が効率的に選択され、実際の治療に役立つことを目指しています。
これらの研究はすべて全国の多くの患者さまのご理解、ご協力によって支えられてきました。今後も遺伝性網膜疾患の克服に向けて少しでもお役に立てるよう努力を続けて参りたいと思います。(20170328)

(次回は、大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学 准教授・森本 壮先生です)

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◇学術研究助成受賞者は今(第6回)

第6回 町田 繁樹(第5回、第14回受賞)
獨協医科大学越谷病院 眼科

2001年と2010年にJRPS研究助成を受賞いたしました。2016年で20回目を迎える歴史の中で、2回もお世話になったのは私だけだと思います。少し厚かましかったもしれません。
初回の研究費をいただいた時は、私はアメリカ留学から帰国したばかりで、日本での研究室の立ち上げのために研究費がどうしても必要でした。アメリカ留学中のボスだったSieving先生に研究費獲得の重要性を教えられ、留学中から応募することを勧められました。受賞した時にはSieving先生も喜んでくれたことを覚えています。テーマは「網膜色素変性症の動物モデルにおける網膜機能と形態の関係」でした。網膜色素変性のいろいろな動物モデルから網膜電図(ERG)を記録し、網膜組織所見との関連を研究しました。いただいた研究費で光学顕微鏡を購入し、網膜組織切片を一生懸命に観察しました。
2010年のテーマは「視細胞変性に伴った網膜中・内層の機能変化」でした。動物モデルで研究していて、視細胞が変性しても網膜中層あるいは内層の電気応答が保たれることに気づきました。三重大学眼科教授の近藤 峰生先生が開発 したウサギのモデルを使って、さらに詳しい所見を得ることができました。変性初期には網膜中層の感度が増加することが分かったのです。その後、網膜組織の研究が進歩し、視細胞が変性すると、シナプスのタンパクが変化することが報告され、我々のERG所見を裏付けてくれています。視細胞変性が起こると、網膜はいろいろと頑張って機能を保とうとするのです。
私の研究は、残念ながら網膜色素変性の治療に直接結びつくものではありません。しかし、網膜の変性過程で生じる網膜の変化を解明する上で重要な資料になると自負しております。
平成26年4月に岩手医科大学眼科から獨協医科大学越谷病院眼科に異動となり、新天地で仕事をしています。岩手医科大学とは異なり、網膜変性疾患を診断するための設備が十分ではありませんでした。しかし、着任1年目でERGなどの機器を整えることができ、診断能力は格段に向上しました。また、当院の眼科には、ロービジョンを専門とした視能訓練士が常勤しており、高いレベルで仕事をしてくれています。我々の診断力とロービジョンケアを組み合わせることで、良質の医療を患者さんに提供し、地域の医療に貢献したいと考えています。

(次回は、独立行政法人国立病院機構東京医療センター
臨床研究センター視覚研究部 ・角田 和繁先生です)

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◇学術研究助成受賞者は今(第5回)

第5回 近藤 峰生(第8回受賞)
三重大学医学部眼科

JRPSの会員の皆さま、こんにちは。私は現在、JRPSの学術理事も担当させていただいております。私は、第8回(2004年度)にJRPSの研究助成をいただきました。研究タイトルは、「網膜色素変性症中型モデル動物(ロドプシンP347L変異ウサギ)作成と視機能解析」です。
その頃、私は名古屋大学眼科に在籍しており、大阪大学の田野先生、不二門先生らの人工視覚の研究グループに加わりました。実際に人工視覚の研究に携わる機会を得て、私は日本には中型あるいは大型の網膜色素変性(RP)のモデル動物がいないことに気づきました。
人工視覚の実験では、作成した人工視覚を動物の眼に移植して効果を判定しなければいけないのですが、正常な動物に移植しても、視覚が回復するかどうかを判定することはできません。日本にもRPの動物モデルはいたのですが、マウスやラットなどの小動物ばかりでした。このような動物では眼が小さすぎて、実際の人工視覚を移植する実験には適していません。将来、RPに対する人工視覚や細胞の移植、あるいは遺伝子治療などを行なっていく際には、私たち人間の眼と同じくらいの大きさを持ったRPの動物モデルを作成することが重要なプロジェクトになると考えたのです。
2002年から私はRPの原因遺伝子を持って進行性のRPになるようなウサギを作成するプロジェクト開始しました。しかしながら、最初の4年間は全くうまくいかず、何度トライしても、生まれてくるウサギは正常ばかりでした。
このような中、ウサギの遺伝子改変の専門家にアドバイスをいただいて方法の改良を重ねました。そして、2007年に初めてRPの遺伝子を持って生まれたウサギ(ロドプシンP347L遺伝子を持ったトランスジェニックウサギ)を作成することに成功したのです。ウサギでRPを作成したのは、世界で最初のことでした。
その後、そのRPウサギが進行性に視細胞の変性を起こし、網膜電図が徐々に減弱し、2~3年で失明することも確認しました。もう少し変性の進行が速いとより使いやすかったのですが、あとで分かったことですが、ウサギという動物は網膜がなかなか頑丈で、変性しにくい動物のようなのです。
私は、国内および国外の多くの先生方と共同研究を広く行ない、RPで網膜が変性するメカニズムや新しい治療法の開発を進めてきました。米国のRobert先生との共同研究により、視細胞が変性したあとに網膜は著しい2次性の変化を示すことが分かりました。つまり、視細胞が少なくなるにつれて、網膜の他の神経細胞とのつながりの変化やグリア細胞の増殖などが起こるのです。このような現象の解明は、実際のRPの患者さんに正常な細胞を移植したり、人工網膜で電気刺激する際に役立つ情報になります。
さらに、大阪大学の不二門先生や森本先生のグループとの共同研究で、電気刺激による網膜の保護効果についても成果を出すことができました。最近では東北大学の阿部先生のグループが私たちのRPウサギに対して新しい除法デバイスを使った治療実験を行なっています。今後もさらに、このRPウサギを使ってRPの疾患の病態研究や新しい治療法の開発を進めていくつもりです。また最近のトピックとして、私は世界で初めて先天停在性夜盲(CSNB)の犬を日本で発見しました。このCSNBは、生後から強い夜盲(暗いところで見えない)を訴える病気で、この新たな動物モデルに対する治療研究も進めていく予定です。
このようにこれまで私が研究を続けてこられましたのも、JRPSの皆さまからの温かいご支援のお陰です。心より感謝しております。今後ともどうかよろしくお願いします。(20160501)

(次回は、獨協医科大学越谷病院・ 町田 繁樹先生です)

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◇学術研究助成受賞者は今(第4回)

第4回 池田 康博(第10回受賞)
九州大学病院 眼科 講師 池田 康博

平成18年(2006年)の第10回JRPS研究助成を、「虹彩色素上皮細胞由来網膜前駆細胞を用いたex vivo遺伝子治療」で受賞しました。
当時まだ無名で、研究したくても自由 に使える研究費を獲得できずに困っていた私にとって、この助成金はとても貴重な援助となりました。そして非常に幸いなことですが、10年経った現在もその当時と変わらず網膜色素変性に対する遺伝子治療の研究が継続できています。まずは、会員の皆さまに感謝いたします。
我々の目指す遺伝子治療のコンセプトは、神経の細胞死を防ぐ効果のある神経栄養因子と呼ばれるタンパク質の元になるお薬(これが遺伝子)を目の中に注射し、その遺伝子から作られた神経栄養因子によって、網膜色素変性の網膜における視細胞死を防ごうとするものです。これを視細胞保護遺伝子治療と呼びますが、この治療によって病気の進行を遅らせたいと考えています。
まず、網膜色素変性を発症するネズミを使って、この治療コンセプトの妥当性を確認しました。さらには、サルを用いてこの遺伝子を目の中に注射することの安全性を確認しました。これらの動物実験の結果を基に、視細胞保護遺伝子治療の臨床応用を計画したのが、ちょうど平成18年頃でした。学内での審査に合格したのが平成20年(2008年)10月。その後、国(厚生労働省)での審査を受けました。最終的には、平成25年8月に国からの了承を得て、平成26年(2014年)3月から臨床研究をスタートすることができました。眼科の領域ではアジア初の遺伝子治療の臨床応用となりました。
この臨床研究では、遺伝子を目に投与することの安全性を網膜色素変性の患者さんで確認することが大きな目的となります。まず第1ステージとして、5名の方に低い濃度の遺伝子を投与して経過を観察し、さらに第2ステージで15名の方に高い濃度の遺伝子を投与する計画となっています。それぞれの患者さんについては、2年間の経過観察された後に臨床研究は終了となりますが、副作用の発生については終生追跡する予定となっています。
現在までに、低濃度群5名への投与は完了し、観察期間の2年間も終了しました。現時点で明らかな治療効果は確認できていませんが、遺伝子を注射することに直接起因する重篤な副作用は観察されていません。引き続き、高濃度群への投与を実施する予定となっています。
この臨床研究に平行して、医師主導治験という新たな枠組みでの研究を開始するための準備を進めています。少し難しい話になりますが、皆さんが一般的に使用しているお薬は、この治験という過程をクリアーし、国から薬として市販することを許可されています。我々の視細胞遺伝子治療で使用する遺伝子も薬として許可を受けたいと考えています。平成30年(2018年)3月に開始することを目標にしています。
受賞してからこの10年間、少しずつですが研究は進んでいると個人的には思っています。が、治療法を待っている皆様からするとどうなのでしょう? もっとスピーディーに研究が進むように気を引き締め、今まで以上に頑張っていきたいと思います。引き続き、会員の皆様のご支援をよろしくお願い致します。(20160329)

(次回は、三重大学・近藤 峰生先生です)

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