ヨーロッパで、nAMDおよびDMEによる視覚障害の治療薬を承認

国際網膜協会から、ニュースが届きましたので、翻訳して転載しておきます。

親愛なるRI会員の皆様

2022年9月19日

 Roche(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社) からいくつかの良いニュースを共有できることを嬉しく思います。 Roche は本日、欧州(薬事)委員会が血管新生または滲出型加齢黄斑変性症 (nAMD) および糖尿病性黄斑浮腫 (DME) による視覚障害の治療に Vabysmo® (ファリシマブ) を承認したことを発表しました。※1
 この承認は、3,000 人以上の患者を対象とした 4 つの第 III 相試験の有望な結果に基づいて行われます。
※1:日本では、2022年4月に承認されています。ただ、JRPS会員様や日本の当事者の皆様に、十分伝わっていない可能性があり、RIからの推奨もありますので、ご紹介することにしました。

国際網膜協会(RI) の CEO である Avril Daly は次のように述べています。
「網膜のこれらの状態は、重度の視力障害を引き起こす可能性があり、タイムリーな介入が必要です。nAMD と DME は、患者、その介護者、および医療システムにも大きな負荷をかけます。患者主導の組織として、RIは遺伝性の影響を受けるすべての人々の健康に関心を持っています。加齢に伴う網膜疾患の可能性を考えると、私たちは意思決定者に対し、そのような人生を変える治療法が恩恵を受ける人々に遅滞なく届けられるようにすることを求めます.」
 DME と nAMD は、世界中の失明の主な原因の 2 つであり、4,000 万人以上に影響を与えています。目に対して承認された最初の二重特異性抗体であるVabysmoの承認は、より少ない回数の注射によって視力改善され、保護されるという希望でてきます。

Rocheプレスリリースは、こちらから読めます。

(文責:国際担当 森田)

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第26回研究助成受賞者からのメッセージ②

國吉 一樹 先生(近畿大学医学部眼科学教室)
受賞テーマ
レーベル先天黒内障および若年発症網膜ジストロフィの遺伝学的・臨床的研究

このたび助成金をいただくことになり、JRPSの学術審査員、関係者各位ならびに会員の皆さまに深く感謝申し上げます。
レーベル先天黒内障とは、生後半年くらいまでに気づかれる強い視力障害を特徴とする遺伝性網膜ジストロフィです。若年発症網膜ジストロフィは、レーベル先天黒内障の年齢範囲をもう少し広げて、6歳くらいまでに診断される網膜ジストロフィの総称です。網膜色素変性と同じように遺伝子異常が原因で、常染色体劣性遺伝が多いのが特徴です。つまり、レーベル先天黒内障/若年発症網膜ジストロフィは、乳児・小児の網膜色素変性のような疾患ですが、網膜色素変性と異なるところは、必ずしも夜盲があるわけではなく、むしろ羞明(昼盲)が強い子も多いという点です。生まれてすぐの視力障害ですので、眼振(目がゆらゆらと動く症状)や目を強くこする癖があったりします。レーベル先天黒内障は、よく観察しても眼底(網膜)には異常所見に乏しいことがあるので、診断には「網膜電図(ERG)」という検査が必要です。これはJRPS会員にも受けられた人が多いと思いますが、両眼に「吸盤のような電極」を入れてピカピカ光らせ網膜の反応を記録するという検査で、あまり人気のある検査ではありません。ただし最近は「吸盤のような電極」を目に入れなくても網膜電図検査が可能になり、患者さんの負担はずいぶん少なくなりました。
レーベル先天黒内障/若年発症網膜ジストロフィは網膜色素変性よりもずっと頻度が低いのですが、小児の失明原因としては上位に入る疾患です。
今回の研究ではこのレーベル先天黒内障/若年発症網膜ジストロフィにフォーカスをしぼり、原因となる遺伝子を探索して、日本人における頻度や近畿大学周辺地域における実態などを究明できればと考えています。1年間で出せる成果は限られるとは思いますが、来年度には結果を報告したいと思いますので、楽しみにお待ちいただければと思います。
最後に、「レーベル」とは19世紀後半に活躍したドイツの眼科医で、「レーベル先天黒内障」のほか、「レーベル視神経症」の発見者としても有名です。レーベル視神経症は遺伝性の視神経症で、よい治療方法がなく両眼の失明につながる重篤な疾患ですので、さまざまな角度から研究が続けられています。(動画は、「会員の頁」にございます。)

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第26回研究助成者からのメッセージ③

小島 慧一 先生(岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(薬学系))
研究テーマ:「光異性化酵素の分子特性に着目した網膜色素変性症の発生メカニズム」………ライオンズ賞

このたび、JRPSライオンズ賞に選出いただきました岡山大学の小島慧一と申します。研究助成をいただけることを大変光栄に思っております。会員の皆様には心より御礼申し上げます。
私は大学4年生(2010年)のとき以来、これまで動物の視覚の研究を行ってきました。眼の網膜には、光を感受するタンパク質である視物質が存在しています。視物質は外界からの光を受け取り、電気信号を発生させ、その電気信号が最終的に脳までリレーされることで、私たちはモノを見ることができるのです。これまで私は、視物質の機能(=どのようにして光を吸収し、どのように電気信号を発生させているのか)を調べることで、ヒトを含む動物の視覚が成り立つ仕組みを明らかにしてきました。
視覚の成り立ちを理解していく中で、「成り立ちの理解に基づけば、視覚に関わる疾患を治す方法を見出すことができるのではないか?」と感じていました。網膜には視物質のみならず、視物質に類似のタンパク質である光異性化酵素も存在することが知られています。光異性化酵素は視物質が正常に働くことをサポートする役割を持つことが知られており、光異性化酵素の機能が正常ではなくなると網膜色素変性症につながってしまうことが過去の研究から示唆されていました。そこで現在、私は、光異性化酵素の機能に着目して、網膜色素変性症に対する新しい疾患低減技術を創出したいと考え研究を行っております。具体的には、光異性化酵素のどのような機能異常が疾患の原因となるのかを理解し、化合物や色素を活用して、機能異常を正常へと戻す方法を見つけたいと考えています。
私はこれまで主に基礎研究に取り組んで参りましたが、その中で明らかにした知見を医療や疾患治療法に還元したいと強く感じておりました。本研究によって患者の皆様のお役に立てるように、精一杯取り組みたいと考えております。(動画は、「会員の頁」にございます。)

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第26回研究助成受賞者からのメッセージ①

富田 洋平先生(慶應義塾大学医学部/ボストン小児病院)
受賞テーマ
網膜色素変性による黄斑浮腫の病態解明と治療薬の開発

この度は第26回JRPS研究助成金を賜り大変光栄です。JRPS理事ならびに会員の皆様方には深く感謝致します。私は今までたくさんの網膜色素変性の患者さんを診察させていただきましたが、有効な治療薬がなく、ただフォローアップをするだけという現状に非常に歯がゆい思いを抱いて参りました。
私は2018年にアメリカに渡り、一つ一つの遺伝子をターゲットにするのではなく、どんな遺伝子異常の網膜色素変性症の患者さんでも効果のある治療法を見つけたい、という思いで研究を続けて参りました。
黄斑浮腫は、物を見る中心の黄斑部というところにむくみができて、視力低下を引き起こします。網膜色素変性患者における患者全体の10-50%を占めると言われております。どうしてそれが起きるのか、まだはっきり理由がわかっておらず、現状の治療薬では効果は限定的です。
そこで私たちが注目している線維芽細胞増殖因子(FGF)21は、全身の脂質代謝を制御する重要な因子です。私たちは以前、そのFGF21がマウスの網膜の病的血管新生の抑制や、機能を回復することを報告しております(Tomita et al, 2020,2021)。さらにFGF21はマウスの網膜色素変性モデルにおいても視細胞の機能保護効果を示すことを報告致しました(Fu, Tomita et al, 2021) 。また近年、欧米を中心に抗がん剤としてFGF受容体(FGFR)の阻害剤が多く用いられるようになっておりますが、副作用として黄斑浮腫が問題となっております。私たちはFGF21/FGFR系が黄斑浮腫の形成に強く関与していることを疑い、マウスの網膜色素変性モデルを用いて、FGF21/FGFRの病気への関与と治療薬の可能性を探索すべく研究を進めるつもりです。また、FGF21を体内で増やすフェノフィブラート等の薬剤の評価も同時に行う予定で、治療へのアプローチを多角的に行う考えです。近い将来、皆様に良い結果をお届けできることを目指し、新しい治療の可能性を開ければ幸いです。(動画は、「会員の頁」にございます。)

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第26回(2022年度)JRPS研究助成者決定のお知らせ

第26回日本網膜色素変性症協会(JRPS)研究助成者決定!

本部事務局

第26回JRPS研究助成は、JRPS学術審査委員の厳正な審査により、次の3件に決定いたしました。

富田 洋平 先生(慶應義塾大学医学部/ボストン小児病院)助成金200万円
網膜色素変性による黄斑浮腫の病態解明と治療薬の開発

國吉 一樹 先生(近畿大学医学部眼科学教室)助成金100万円
「レーベル先天黒内障および若年発症網膜ジストロフィの遺伝学的・臨床的研究」

小島 慧一 先生(岡山大学学術研究院医歯薬学域「薬学系」)ライオンズ賞(100万円)
光異性化酵素の分子特性に着目した網膜色素変性症の発生メカニズム

※表彰式と記念講演は、9月24日(土)「世界網膜の日i n 山陰」で行います。
※詳細は秋ごろ発行予定の「ニュースレター」No.36に掲載します。

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あぁるぴぃ159号 目次

JRPSだより                        3

本部事務所移転のお知らせ                   3

第26回日本網膜色素変性症協会(JRPS)研究助成者決定!         4

QOL講演会のご案内                                                                                  4

2022 JRPSピアサポート研修のご案内                                                 4

JRPSオンラインセミナー2022 ~遺伝について基本的な事から考えてみよう~ 5

電話相談のご案内                                                                                      6

第9回(令和3年度)定時代議員会 報告                                                7

第9回 定時代議員会を開催                                                                       7

令和3年度 事業報告(抜粋)                                                                7

令和3年度 貸借対照表                                                                           17

正味財産増減計算書                                                                                  18

財務諸表に対する注記                                                                              20

令和4年度 事業計画                                                                                 21

令和4年度 収支予算書                                                                             28

定款の一部変更について                                                                             31

監事の報酬について                                                                                     32

理事・監事の選任                                                                                         33

都道府県JRPS活動予定                                                                               36
北海道…… 36 / 岩手県…… 36 / 宮城県…… 36 / 福島県…… 37 / 群馬県…… 37
栃木県…… 37 / 埼玉県…… 38 / 千葉県…… 38 / 東京都…… 38 / 神奈川県… 38
新潟県…… 39 / 長野県…… 39 / 福井県…… 39 / 岐阜県…… 40 / 愛知県…… 40
三重県…… 40 / 滋賀県…… 41 / 京都府…… 41 / 奈良県…… 41 / 大阪府…… 42
和歌山県… 42 / 兵庫県…… 42 / 岡山県…… 43 / 広島県…… 43 / 香川県…… 43
徳島県…… 44 / 愛媛県…… 44 / 高知県…… 44 / 福岡県…… 45 / 長崎県…… 45
大分県…… 45 / 熊本県…… 45 / 宮崎県…… 46 / 鹿児島県… 46

専門部会の活動予定                                                                      46
ユース部会…… 46   /   ミドル部会…… 47

編集局より                                                                                       48
広告ページ                                                                                       48
編集後記                                                                                            52

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第16回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

網膜色素変性症に対する治療法の確立を目指して、いくつかの治療法が基礎研究から臨床応用へと発展しつつあります。その一つが遺伝子治療で、Leber先天黒内障では一定の治療効果が得られています。今回は、遺伝子という観点から網膜色素変性症を捉え、その病態と治療を考えてみたいと思います。網膜色素変性症の遺伝子に関する研究で、第一線で活躍されている先生方に講演していただきました。
また、コロナ感染予防のためにオンラインのみでの開催となりました。

1.【開会の挨拶

2.【網膜変性疾患の表現型と遺伝

國吉 一樹 先生(近畿大学)

3.【網膜変性疾患の遺伝子検査

林 孝彰 先生(東京慈恵会医科大葛飾医療センター)

4.【遺伝子治療の臨床応用

藤波 芳 先生(東京医療センター・感覚器センター)

5.【講演者相互間のQ&A

6.【閉会の挨拶

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あぁるぴぃ91号 目次

JRPSスケジュール 3
本部だより 4
Webサイト全面リニューアルのお知らせ 4
中長期計画推進委員会(Wings)レポート(4) 5
もうまく基金だより ~もうまく基金からの各種ご案内~ 6
編集局リポート 8
リポート1 銀行ATMを自分で操作してみる 8
リポート2 ハイブリッド車との接触事故    10
若い力は今     12
2010年をふり返って(JRPSユース 福原 由佳)  12
私たちの地域では、今……  14
新会員も加わり、楽しい雰囲気のお茶会(群馬支部)  14
支部・連絡会 活動予定    15
北海道支部…… 15 /  秋田県支部…… 15 /  福島県支部…… 15 / 群馬支部………15
栃木県支部……16 / 埼玉支部………16 / 千葉県支部……16 / 東京支部………17
神奈川支部……17 / 新潟県支部……17 / 静岡支部………18 / 福井県支部……18
岐阜県支部……18 / 愛知支部………18 / 滋賀県支部……19 / 京都支部………19
奈良県支部……19 / 大阪支部………20 / 和歌山県支部…20 / 兵庫県支部……20
岡山県支部……21 / 徳島支部………21 / えひめ支部……21 / 福岡県支部……22
長崎県支部……22 / 鹿児島県支部…22
香川連絡会……23
専門部会の活動予定 23
JRPSユース……23

編集局より 24
広告ページ 24
編集後記 28

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⼩栁 俊⼈先⽣(九州⼤学眼科教室)【ライオンズ賞】

受賞テーマ︓
「定型網膜⾊素変性における包括的ミトコンドリア遺伝⼦変異解析」

このたびは、第24回JRPS研究助成をいただき誠にありがとうございます。⼤変光栄に思っております。
今回の研究テーマは、ミトコンドリアという細胞⼩器官の持つ遺伝⼦についてです。ミトコンドリアは全⾝の細胞の中にあってエネルギーを産⽣するはたらきを持っており、その障害は加齢に伴う臓器障害、糖尿病や神経変性疾患など、さまざまな疾患に関わっています。 ミトコンドリアの中には、細胞の核にある核DNAとは別に、独⾃のDNA(ミトコンドリアDNA)が存在します。
ヒト網膜の視細胞にもミトコンドリアは多数存在しており、このミトコンドリアDNAの塩基配列の変化は⼀部の網膜⾊素変性と 関わっていることがすでに知られています。ただ、網膜⾊素変性において遺伝⼦を調べる際に対象とされない場合も多く、今まで詳細に評価する取り組みが⾏われていませんでした。
私たちは今回の研究で、この病気の起こるしくみをミトコンドリアの障害という観点から考える際の基礎となるデータを作ることを⽬指しています。ミトコンドリアDNAの塩基配列が当疾患でどのように変化しているかを調べ、遺伝⼦の変化に由来するミトコンドリアの 働きの低下が網膜⾊素変性の起こるしくみとどのように関わっているかを検証していきたいと考えております。そして、このミトコンドリア遺伝⼦の変化が治療の対象となりうるかを考察し、将来的に患者さんへの新たな治療戦略の⼀つとなることを⽬指しています。 近年の遺伝⼦解析によって得られる情報は膨⼤で、その中から重要な情報を特定し、治療の⽷⼝となりうる知⾒が得られるよう⽇々研究に取り組んでいます。
今後ともご⽀援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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⻄⽥ 健太郎先⽣(⼤阪⼤学⼤学院医学系研究科視覚機能形成学寄附講座)

 受賞テーマ︓
「⼈⼯網膜の実⽤化に向けたトータルシステムの検証」

第24回JRPS研究助成⾦を受賞することができ⼤変光栄です。2006年に⼤学院に⼊った時から⼈⼯網膜の研究を続けています。
⼈⼯網膜とは、網膜⾊素変性症などの疾患で光を感じる細胞が完全に失われて失明した場合でも、網膜に残っている神経細胞に 電気刺激を与えて視覚を回復しようとするものです。世界中で研究が進んでいますが、私たちのグループでは脈絡膜上経網膜電気刺激(Suprachoroidal Transretinal Stimulation : 以下 STS)という⼈⼯網膜を開発しました。STSの特徴は、刺激電極が直接網膜に触れないので、⼈⼯網膜のなかでも特に安全性が⾼いところです。
これまでにSTSのシステムを失明した患者さんに1年間埋植する臨床試験を⾏いました。
その結果、埋植したSTSのシステムにより患者さんの視機能が向上すること、1年間の埋植でもSTSのシステムが問題なく動くこと、 また、STSのシステムを1年間埋植しても合併症が発⽣せず安全であることが分かりました。
現在はSTSのシステムを実際に製品として世に出すため、治験の準備をしているところです。より患者さんにとっての機能が向上し、 より⻑期間の使⽤に耐えられるようにし、さらに安全なシステムであるようにさまざまな改善を⾏っています。
そして、改良したものについては、さまざまな試験を⾏って問題のないことを確認していきます。
例えば、改良したシステムの効果を確認するためには、動物実験を⾏います。改良したシステムで動物の網膜に電気刺激を与えても、
動物は⾒えたとは⾔ってくれません。そのために、改良したシステムで動物の網膜に電気刺激を与えた際の動物の脳波を測定することで、 動物が⾒えたかどうかを判断します。
今回は、⻑期間にわたって動物の脳波の様⼦を観測することが出来るような⽅法を開発できたので、この⽅法を⽤いて改良したシステムが⻑期間有効に働くかを確認して、より⻑く安全に使えるものを作っていきたいと思っています。

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