あぁるぴぃ133号(20180328)

JRPS だより …… 3
4 月の相談予約のご案内 …… 3
9 月開催の「世界網膜の日 in 愛媛」について …… 3
「RP 児をもつ親の会」のお知らせ …… 4
あなたも誰かの役に立つ ~JRPS ピアサポーター養成事業 …… 4
あぁるぴぃ広場 ~会員の皆さんからの投稿 …… 6
駅のホームで転落。そのとき……。(高田 澄代) ……  6
ニュージーランドで親善交流(小川 正次) …… 6
学術研究助成受賞者は今  …… 7
第 11 回 小沢 洋子(2010 年・第 14 回受賞)  …… 7
研究推進委員会(Wings)通信(第 14 回) ……  9
臨床研究法施行にあたって …… 9
Wings ひとくちコラム(第 8 回) …… 10
見えない・見えにくい自分の伝え方 …… 11
第 6 回 世の中の認識は変わる?(長岡 雄一) …… 11
生活便利グッズの基礎の基礎 …… 12
第 11 回 点字に挑戦してみませんか!? …… 12
第 12 回 「Skype」を利用したメンバー交流について …… 13
QOL 委員会から ~生活の質を向上させるための各種情報  …… 14
第 28 回 交通機関を利用しやすく ―バリアフリーについての法律の改正 …… 14
ちょっと賢い生活の知恵袋 …… 15
第 20 回 「Suica」と「ICOCA」の音声対応について(金澤 真理) ……15
都道府県 JRPS 活動予定 ……16
北海道……16 / 岩手県……16 / 山形県……16 / 福島県……17
群馬県……17 / 栃木県……17 / 埼玉県……18 / 千葉県……18
東京都……18 / 神奈川県…19 / 新潟県……19 / 長野県……19
静岡県……20 / 富山県……20 / 福井県……20 / 岐阜県……20
愛知県……21 / 滋賀県……21 / 京都府……21 / 奈良県……22
大阪府……22 / 和歌山……22 / 兵庫県……23 / 広島県……23
香川県……23 / 徳島県……24 / 愛媛県……24 / 福岡県……24
長崎県……25 / 大分県……25 / 熊本県……25 / 宮崎県……26
鹿児島県…26 / 沖縄県……26
専門部会の活動予定 …… 26
JRPS ユース …… 26
編集局より …… 28
広告ページ …… 28
編集後記 …… 32

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第12回JRPS網脈絡膜変性フォーラム報告

日 時:2017年11月19日(日)9:50~12:30(開場9:00)
会 場:千里ライフサイエンスセンター 5階ライフホール
(大阪府豊中市新千里東町1-4-2)

講 演:網膜色素変性の治療の最前線
~基礎研究から臨床応用へ~

10:00~
網膜色素変性に対する視細胞保護治療
池田 康博(九州大学)

10:30~
網膜移植と再生医療
万代 道子 (理化学研究所)

11:00~
チャネルロドプシンを用いた視覚再生
冨田 浩史(岩手大学)

11:30~
遺伝性網膜疾患: 診断から治療へのアプローチ
藤波 芳(東京医療センター)

12:00~
人工網膜による視覚機能の再建 ~開発の現状と未来
森本 壮(大阪大学)

オーガナイザー:山本 修一(千葉大学) 町田 繁樹(獨協医科大学)

主 催:公益社団法人 日本網膜色素変性症協会(JRPS)
後 援:厚生労働省 大阪府 大阪市 公益社団法人 日本眼科医会 公益社団法人
ネクストビジョン 日本ロービジョン学会 一般社団法人 大阪府眼科医会 京都府眼科医会 兵庫県眼科医会 社会福祉法人 大阪府社会福祉協議会 社会福祉法人 大阪市社会
福祉協議会
一般財団法人 大阪府視覚障害者福祉協会 一般社団法人 大阪市視覚障害者福祉協会

事務局:公益社団法人 日本網膜色素変性症協会(JRPS)
〒140-0013 東京都品川区南大井2-7-9 アミューズKビル4F

講演要旨
網膜色素変性に対する視細胞保護治療
九州大学眼科  池田 康博

網膜色素変性(RP)とは、暗いところで見えにくい夜盲という症状で始まり、視野が少しずつ狭くなり、最終的には視力が低下してしまう遺伝性の網膜の病気です。目に関連する遺伝子のキズが原因で、網膜の神経細胞(視細胞)が少しずつ傷害を受けていきます。外界情報の約80%を得るために必要なこの視力を失うことで、我々のQOL(生活の質)は著しく低下し、社会活動は大幅に制限されることになります。現時点で有効な治療法が確立されていない難病で、早期の治療法開発が望まれています。
その近未来の治療法として期待されているもののひとつが、遺伝子治療です。欧米では、レーバー先天盲やコロイデレミアといったRPによく似た遺伝性の網膜の病気に対して治験が実施され、一定の安全性と治療効果がすでに明らかとなっています。遺伝子治療が標準治療の一つとして認められる日が近づいてきていると言えます。レーバー先天盲やコロイデレミアの場合、病気の原因となっている遺伝子のキズを治す(正常な遺伝子を補充する)という、遺伝子治療における理想的なアプローチが選択されていますが、RPの場合は遺伝子のキズが多岐にわたる(70種類以上)ため、現実的にはすべてのRPの患者さんにこのアプローチを適応するのは難しいと考えられています。
そこで我々が注目したのが、視細胞保護遺伝子治療です。RPでは遺伝子のキズにより最終的に視細胞の細胞死が生じますが、神経細胞に対し保護作用を有する神経栄養因子と呼ばれるタンパク質を作り出す遺伝子を目に打ち込むことによって、その神経栄養因子が目の中でたくさん作られ、視細胞が護られて視力が低下するのを防ぐという方法です。今回、神経栄養因子として色素上皮由来因子(PEDF)を選択し、これまでに複数のRPの動物モデルにおいてその治療効果を確認しました。さらに大型動物であるカニクイザルを用いた安全性試験により、この治療法の安全性を確認しました。これらの効能試験ならびに安全性試験の結果に基づき、臨床研究実施計画を立案し、平成24年8月に厚生労働大臣より了承されました。本臨床研究の主な目的は、SIVベクターの眼内投与の安全性を確認することで、平成25年3月26日に第1症例への投与を実施し、これまでに5名の被験者に臨床研究薬の投与を完了しました。現時点で臨床研究を中止しなくてはならないような重篤な合併症はありません。また、この臨床研究と並行して、次のステップとなる医師主導治験の準備を進めています。
本講演では、遺伝子治療臨床研究の結果を中心に、RPに対する視細胞保護遺伝子治療の可能性についてご紹介させていただく予定ですが、さらに、広い意味でのRPに対する視細胞保護治療の可能性についても併せて紹介したいと思います。

池田 康博( Yasuhiro Ikeda )
1995年 九州大学医学部 卒業
1995年 九州大学医学部眼科 入局
2003年 九州大学大学院医学系研究科博士課程 修了
2004年 九州大学病院眼科 助手(現・助教)
2015年 九州大学病院眼科 講師
2016年 九州大学大学院医学研究院眼病態イメージング講座 准教授
現在に至る

 

講演要旨
網膜細胞移植と再生医療
理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト  万代 道子

現在私たちは、iPS細胞を用いて加齢黄斑変性に対する網膜色素上皮細胞の移植プロジェクト、そして網膜色素変性に対する網膜組織移植プロジェクトに取り組んでいます。
加齢黄斑変性についてはすでに最初の自家iPS由来の網膜色素上皮移植からほぼ3年経過し、特に合併症はみられることなく移植片が安定して生着していることを確認しています。この結果をうけて、網膜色素変性に対するiPS細胞由来網膜組織の移植治療についても臨床研究を視野に研究を進めているところです。
私たちは今年初め、マウスのiPS細胞由来の網膜組織を末期網膜変性モデルに移植すると、移植した視細胞とホストの2次神経細胞がつながり、光シグナルをホストの神経節細胞に伝えること、行動実験においても移植後のマウスで光合図による学習効果がみられるようになることを報告しました。同じような網膜組織はヒトのES細胞やiPS細胞からも用意でき、また移植後末期の変性網膜に生着して成熟することを動物モデルで観察しています。さらに現在は、これらのヒトのESやiPS細胞でも移植後成熟して光に応答することを検証中です。今後、安全性試験などを重ねて、ヒトでの臨床応用を目指して準備を進めていく予定です。
人でも動物で得られたような効果がみられるかは臨床研究をしてみないとわかりませんし、うまくいっても最初はうっすら小さく光がわかる、といった程度の効果しか得られないかもしれません。しかし少しでも光がわかるとなれば、よりその効率をよくしていくこともできるのではないか、とも思っています。
最初の臨床研究は最初の一歩にすぎませんが、現在の進捗と今後の見通しなど紹介したいと思います。

万代 道子( Michiko Mandai )
1988年 京都大学医学部 卒業
1988年 京大病院眼科研修医
1989年 関西電力病院眼科
1990年 京都大学医学部大学院博士課程
1994年 京都大学眼科学教室 助手
2000年 米国NIH 研究所 客員研究員
2002年 京都大学病院探索医療センター 助手
2006年 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 網膜再生医療研究チーム研究員
2006年 神戸市立医療センター中央市民病院 非常勤医師
2011年 先端医療センター病院 眼科副部長
2013年 理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 副プロジェクトリーダー
現在に至る

 

講演要旨
チャネルロドプシンを用いた視覚再生研究
岩手大学理工学部生命コース   冨田 浩史

緑藻類クラミドモナスより同定されたチャネルロドプシン-2(ChR2)タンパク質は、光受容に伴い細胞内に陽イオンを透過させる、光活性化陽イオン選択的チャネルとして機能する。神経細胞の興奮は細胞内への陽イオンの流入によって引き起こされるため、神経細胞にChR2を発現させることで、光照射によって興奮を誘起する光感受性神経細胞となる。我々は2005年から、この特徴的な機能を持つChR2の眼科分野への応用に取り組んできている。
網膜色素変性症では、視細胞が焼失し失明に至った場合でも、視細胞以外の神経細胞は残存していることが報告されている。残存する神経細胞、その中でも特に、視神経を構成する神経節細胞は、元来、視覚情報を脳に伝達する役割を担っており、この神経節細胞にChR2を発現させることで、神経節細胞が直接、光を受容し、脳に視覚情報を伝達できると考えられる。我々は、ChR2遺伝子を網膜神経節細胞に運ぶウイルスベクターとして、アデノ随伴ウイルスベクター2型(AAV)を選択し、遺伝的に視細胞変性をきたす(遺伝盲)ラットを用いて、視機能の回復を検証してきた。その結果、1回の遺伝子導入で約30万個の細胞にChR2タンパク質が発現し、ラットの生涯(約2年)を通じて回復した視機能が維持されること、ならびに重篤な副作用が見られないことが示されている。しかしながら、ChR2タンパク質が感じ取れる光は青色に限定されるため、ChR2を用いた遺伝子治療で視覚が回復できたとしても、青色しか見ることができない。この問題点に対して取り組み、2009年、同じ緑藻類のボルボックスから同定されたチャネルロドプシンを人為的に改変し、1つのタンパク質で青、緑、赤のほぼすべての色に応答する改変型チャネルロドプシン(mVChR1)の開発に成功している。mVChR1遺伝子導入によって、RCSラットの視機能回復が見られることならびに副作用が生じないことを確認し、臨床開発に必要な一部の前臨床試験を(独)医薬基盤研究所ならびに国立研究開発法人日本医療研究開発機構の支援により実施し終了している。
ChR2に関しては、ChR2の知財権を持つアメリカRetroSense社のサイエンティフィックアドバイザーとして臨床開発に協力し、2016年2月に、アメリカで臨床試験が始まっている。また、我々が独自に開発したmVChR1は、2016年2月よりアステラス製薬により臨床開発が進められている。
今回、これらのチャネルロドプシンによって得られる視覚特性を中心に、現在までの研究経過を報告する。

冨田 浩史( Hiroshi Tomita )
1990年 京都府立大学農学部 卒業
1992年 京都府立大学大学院農学研究科修士課程 修了 農学修士
1993年 東北大学医学部眼科学講座研究生(出向)
1998年 東北大学大学院医学系研究科眼科学講座 助手
2002年 長寿科学振興財団海外派遣研究員
(アメリカ合衆国オクラホマ大学眼科学講座)
2004年 東北大学先進医工学研究機構 助教授
(生命機能科学分野 人工網膜研究チーム チームリーダー)
2008年 東北大学国際高等融合領域研究所医歯薬融合領域 准教授
2012年 岩手大学理工学部生命コース 教授
(兼務)
東北大学 大学病院臨床研究推進センター 客員教授
RetroSence, LLC(U.S)(2008/1-2016/12)
現在に至る

 

講演要旨
遺伝性網膜疾患:診断から治療へのアプローチ
国立病院機構東京医療センター 眼科  藤波 芳

遺伝性網膜疾患に関する診断から治療へのアプローチは近年劇的な変化を遂げている。標準とされる4行程(1.クリニックにおける臨床検査・診断、2.遺伝子検査・診断、3.臨床診断と遺伝子診断の相関確立ならびに最終確定診断、4.臨床治験導入)を経る形で、遺伝性網膜疾患に対する診断から治験導入が行われている。特に、この数年における遺伝医学分野における技術革新、情報共有・統合化の加速に伴い、欧米を中心に臨床治験導入が拡大し、世界的に見ると、千名以上の遺伝性網膜疾患患者が遺伝子置換治療、遺伝子導入治療、薬物治療、再生細胞治療、人工網膜などの先鋭的臨床治験に参加している。
本講演では「治療が皆無であった」時代から、「治療を選択する」時代へ大きな変容を遂げつつある遺伝性網膜疾患分野における現在の取り組みについて、最新の情報を含めて紹介される。

1.臨床診断
遺伝性網膜疾患は希少疾患に分類される。網膜色素変性症という臨床病名の患者群の中にも原因となる(もしくは関連する)遺伝子は数十以上存在するため、単独施設における原因遺伝子ごとの臨床情報は極限られたものとなり、診断に苦慮することも少なくない。この状況を受けて、国内・国外で同一の臨床検査を基にデータ共有し、共同で臨床診断を行う、多施設共同研究が遂行されている。一例としてJapan Eye Genetics Consortium(JEGC)が挙げられる。JEGCは2006年に東京医療センター・臨床研究センター(NISO)を中心に設立され、日本臨床視覚電気生理学会の後援を受ける形で2017年8月現在までに国内23施設から約1600症例以上の情報共有がオンラインデータベースを利用して行われている。さらに、アジアの代表として、アジア域内(12ヵ国約50施設)での情報共有、その他の4大陸との連携(欧州、北米、豪州、南米)が強力に推進されている。

2.包括的遺伝子検査・診断
2010年代に入り、次世代シークエンスの標準化に伴い、250を超える網膜疾患関連遺伝子を同時に検索する手法が導入され、その他の手法では実現が難しかった包括的な遺伝子検査が可能となった。さらに、日本人特有の遺伝背景を数千単位の正常人データから割り出すことで、欧米からの過去の報告を基準とした形では診断が困難であった症例についても、日本人の特性を大規模コホート内で理解した上での遺伝子診断が実現化し、より精度の高い診断が現実のものとなっている。

3.臨床診断と遺伝子診断の相関確立と最終確定診断
数千単位の症例の、臨床・遺伝情報の共有化の実現により、網膜関連遺伝子それぞれについての臨床像が明らかとなり、「網膜色素変性症」と漠然と呼ばれてきた病名の中にも、様々な小分類が存在することが解ってきた。これらの分類診断は、原因遺伝子・病態を基に行われており、小分類間で、発症、重症度、進行性、遺伝様式が異なるため、この臨床診断・遺伝子診断を繋ぎ合わせた病態に基づく最終確定診断が患者カウンセリング、治療導入に必須の工程となっている。特に、日本人における臨床診断と遺伝子診断の関連においては、過去、包括的遺伝子解析を用いた大規模研究による調査が存在しなかったが、2010年代後半に入り日本人特有の疾患分類や病状が次々と明らかとなり、原因に即した形、病態に即した形で、それぞれの疾患の再整理が急務となっている。

4.治療導入
臨床診断、遺伝子診断から最終確定診断が得られた後、原因遺伝子、病状、病期(therapeutic
windows)を加味して、治験導入が考案される形が一般的となりつつある。国内・国外を含めて、様々な施設で、様々な手法で治療導入が行われる中で、治療適応疾患、その原因遺伝子、病期などの情報を共有する体制づくりが精力的に進められており、遺伝性網膜疾患治験情報ウエブサイト、症例情報共有オンラインデータベース、患者レジストリなどを通して、個々人に適した治療を選択する時代が日本に到来する日が間近に迫っている。

藤波 芳( Kaoru Fujinami )
2004年名古屋大学医学部医学科 卒業
2004年 名古第一赤十字病院 前期臨床研修
2006年 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 眼科後期臨床研修医 臨床研究センター 視覚研究部 視覚生理学研究室 研究 員
2009年 英国Moorfields Eye Hospital、Electrophysiology、Fellow 英国UCLInstitute of Ophthalmology、Genetics、Research Assistant
2013年 独立行政法 人国立病院機構 東京医療センター 眼科 慶應義塾大学大学院博士課程眼科学専攻 網膜細胞生物学グループ
2016年 英国UCL Institute of Ophthalmology、Genetics、Research Associate英国Moorfields Eye Hospital、Division of Inherited Eye Disease、Honorary Clinical Manager 、慶應義塾大学眼科学講座 非常勤講師
2017年 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター・臨床研究センター 視覚研究部 視覚生理学研究室 室長英国UCL Institute of Ophthalmology、Genetics、Senior Research Associate

 

講演要旨
人工網膜による視覚機能の再建 -開発の現状と未来
大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学  森本 壮

人工網膜は、網膜色素変性などで視細胞を失った網膜に対し、視細胞の代わりに残った網膜の内層の神経細胞に対し、電気刺激を行い、点状の光を感じさせることによって視覚を回復させる方法です。
具体的には、まず電気刺激を行うための電極を何十極も載せた電極板と体内刺激装置を患者さんに埋植します。次にCCDカメラがついた眼鏡をかけ、CCDカメラの画像を携帯型のコンピュータで処理し、その情報を、電波を使って体内刺激装置に伝え、体内刺激装置はその情報に従って多点電極を通して網膜に対して電気刺激を行います。
現在、人工網膜は3つのタイプの研究開発が進んでいます。一つ目は網膜上刺激型人工網膜で電極を網膜の上に置く方法で、主に米国で開発された方式で、すでに米国やEUでは、認可されておりそれらの国で治療を受けることができます。二つ目は、網膜下刺激型人工網膜で、電極を網膜下に置く方法で、主にドイツで開発が進んでいる方式で、第一世代の開発と臨床試験は終了し、現在、第二世代の人工網膜の開発が進行しております。最後に、我々が開発した日本独自の方式である脈絡膜上経網膜電気刺激(STS)型人工網膜で、これは眼球の外側の強膜からトンネルを作製し、脈絡膜上に電極を設置する方法で、他の方式と異なり、網膜に直接電極を置かないので、網膜への組織損傷が少なく、電極の交換が容易で、将来、再生医療を患者さんが受ける場合にも併用が可能な方式です。

本講演では、我々がこれまでに行ってきたSTS型人工網膜装置の臨床試験の結果について述べ、他の方式の人工網膜装置の臨床試験の結果にも触れ、現時点での人工網膜でどこまで見ることができるかについて述べたい。また、現在開発中の第三世代の人工網膜の研究の状況や今後の人工網膜の展望について述べる予定である。

森本 壮( Takeshi Morimoto )
1997年 大阪大学医学部 卒業
1997年 大阪大学医学部眼科学教室入局
2001年 大阪大学大学院医学系研究科未来医療開発専攻 博士課程
2005年 医学博士(大阪大学)
2008年 大阪大学大学院医学系研究科眼科学 医員
2009年 大阪大学大学院医学系研究科寄付講座視覚情報制御学 助教
2010年 大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学 講師
2012年 大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学 准教授
現在に至る

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JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第13回JRPS網脈絡膜変性フォーラム
(静岡県・浜松アクトシティコングレスセンター:20180923)

 

第12回JRPS網脈絡膜変性フォーラム
(大阪府・千里ライフサイエンスセンター:20171119)

第11回JRPS網脈絡膜変性フォーラム
(三重県・伊勢市観光文化会館:20161002)

第10回JRPS網脈絡膜変性フォーラム
(高知県高知市・高知プリンスホテル:20151101)

第9回JRPS網脈絡膜変性フォーラム
(東京都東京国際フォーラム:20140405)

第8回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第7回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第6回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第5回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第4回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第3回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第2回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

第1回JRPS網脈絡膜変性フォーラム

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RIWC2014パリ大会参加報告

【開催日】 2014年6月26日~29日〔4日間〕
【開催場所】フランス・パリ市内。ホテル名:プルマン・モンパルナス。大会議室、およびイベントルームにて開催。
【会議スケジュールと主な内容】
6月26日
RI総会(26ヶ国の正会員を含む、世界各国から参加者約70名)

・正会員に台湾、ベルギー、アイスランドが新たに加入し、準会員国としては、アルゼンチン、チリがそれぞれ承認されました。
RI会議については、すでに、2016年の台湾の台北で、台湾と香港の共同開催が決定していますが、2018年は、ニュージーランドのオークランドでの開催が決定しました。台湾、ニュージーランド双方からは参加呼びかけのプレゼンテーションがあり、とくに台湾は駐仏台湾大使や観光省の職員を動員して鼓や胡弓、合唱の演奏、人形劇等をまじえて熱い誘いがありました。
・RIの運営は、設立以来そのほとんどが事務局のボランティアにより現在に至っています。しかし今後、加盟国の増加、タイムリーな情報発信、各国との連携強化等これからの事務局の仕事量も増大することから、専用の事務局設立が提案されました。設立にあたっては、アイルランドが候補でしたが、審議継続となりました。

・役員体制につきましては、ファッサー会長が、満場一致で再選されました。
・理事国は、合計6ヶ国となりました。

・2012年~2013年活動報告、決算および2014年~2015年活動計画、予算案も満場一致で、承認されました。のRIメンバー、Fighting Blindness, Irelandが主体となり、初年度予算、約2000万円 を企業からの寄付で集める活動がスタートします。
・ユーロ圏としては、RIの下部組織としてRIヨーロッパという組織立ち上げをしたいという提案があり、承認されました。

6月27日 
講演会および森田理事によるプレゼンJRPSの歴史と活動に関する報告

1. 臨床試験の体験談発表
人工網膜臨床研究に参加した患者2名から、体験談が発表されました。
一人目は、26歳の時に完全に失明したMikka Terho氏(41歳、フィンランド人男性)。2008年11月に人工網膜を移植し、コンピュータ画面上の白線やLという文字、人の形、目の前にあるものなどを認識できた、とのこと。同氏がこの試験に参加したのは今後の研究の為であり、自分の生活向上が目的ではなかったので、とくにフラストレーションを感じたり、憂鬱になることはなかった、試験結果も満足できる内容であった、と語っていました。本人はどちらかと言うと先鋭的な性格で、とても前向きな人生を送っていると思いました。
二人目のCeline Moret氏(女性、RIスイ ス所属)の体験談は対照的で、劇的な効果は見られず、逆に手術の後遺症による血栓塞栓症を脚部に発症し、足を切断する危険にさらされ、とても大変な思いをしたとのことでした。

2. 講演 ニュージーランドの会長:臨床研究に患者として、どう向き合うか。
要旨としては、まず基本となる臨床研究とは何かをはじめに良く理解すること、それに協力する場合は、目的、成果だけではなく、そこに生じる、さまざまなリスクに関しても、担当医と納得行くまで話をし、疑問点を払拭してから望むべきで、またこれから沢山の臨床研究が始まる中、患者としては、こうした知識、心構えについても、学んでいくことが大事なことですと力説されていました。

◇ ファッサー会長との会談の予約が取れ、直接お話を伺うことが出来ました。
会長からは、JRPSに対する、期待と課題についての提言がありました。
一つは、近年アジア諸国においても活動が活発化している現状の中、JRPSの果たす役割はとても大きいと思うので、アジア圏との連携を図ってほしい。
次に、RI(レティナ・インターナショナル)としては網膜に関わる様々な疾患に関して活動を進めているが、JRPSは、網膜色素変性症とその類縁疾患のくくりで良いのか、世界的には、加齢黄斑変性症の患者が増大する中、この病気の患者との係わり合いをどうすべきか、将来の治療法が進む中、どうしていくのかも、検討すべきではないかとの提言もありました。

◇ 近隣諸国の状況について
イ、 香港(Vincent Kwan氏との会談)
会員数は2000名、活動内容には、若い視覚障害者の就学支援があります。視覚障害者が社会で仕事をし生活を営むためには、高い知識を身につける必要があり、奨学金を出し、若い人たちを支援しているそうです。
ロ、 台湾
患者、学術関係の先生との相互理解を深め、医療の現場においてのコミュニケーションが大事という発想から、今回は総勢40名以上の、患者と若い医学生が一緒に旅行をし、ドイツまで来ていました。こうした施策は医療の最前線においては、患者理解の面からもとても大事なことではないかと思います。
ハ、 中国(Jia Yang氏との会談)
日本の拡大読書機や活字文字読み上げ機器には、とても良いものがあると聞いているので、その点を知りたいとの質問がありました。一方では東洋医学について、現在いろいろと研究もしているので、今後情報交換もしていきたいとのことでした。ちなみに中国ではRP患者は40万人はいるだろうとのことでした。

◇ 全体を通しての所感
、 2014年に日本で開催される網脈絡膜変性国際フォーラムに対し、アジア諸国からの関心はとても高く、JRPSとの連携を強く望んでいることから、彼らの招聘を今後検討して参りたいと考えています。またJRPSがアジアで果たすべき役割の大きさを再認識しました。
、 2016年台北における、台湾・香港共同開催のRI会議については、JRPSとしていろいろな面で協力と交流を図るべきであり、検討を進めることが必要であると考えています。
、 欧米においては、人工網膜の開発や網膜関係の臨床研究が、すでに数件スタートしていますが、日本においても、近年人工網膜、iPS/ES細胞による網膜再生、遺伝子治療、点眼薬の臨床研究がめざましいスピードで進んできています。こうした状況に対して、臨床研究とは何か、どう関わっていくのか、その対応はどうすべきかなど、そこに発生するリスクや心理面におよぼす影響などを多角的に考慮し、患者会として早急な啓発活動の必要性も強く感じました。こうした点は次年度の活動として検討を進めていくように考えています。

最後にRI会議に個人エントリーとして、関東、東海、近畿圏からのグループも参加なさっていたこと、あわせてご報告いたします。

文責:国際担当理事 森田 三郎

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◇研究助成受賞者は今(第10回)

第10回 阿部 俊明(1997年・第1回受賞)
東北大学医学系研究科 創生応用センター細胞治療分野教授

1997年に第1回の受賞をさせていただいた東北大学の阿部です。受賞タイトルは“網膜色素変性症の移植により治療の試み”でした。
当時東北大学では、玉井教授が患者さん自身の虹彩色素上皮細胞を網膜下に移植する世界で始めての試みになる臨床研究を行なっておりました。
その成果を利用して移植細胞を神経保護因子分泌細胞に変えて網膜保護を目指す試みでした。現在、細胞移植といえば主としてiPS細胞移植などが注目を浴びていますが、
当時iPS細胞は存在せず、眼内の自己細胞を利用する新しい方法でした。
神経栄養因子を発現する細胞の作製やレギュレーションの問題で残念ながら臨床応用には至っておりません。
しかし、私の網膜色素変性治療の思いは変わらず、現在薬剤を利用した網膜保護を検討しております。
網膜色素変性のように長い時間かけて徐々に進行する疾患は薬剤の投与が難しく、点眼ではなかなか薬剤が網膜まで十分に到達しない可能性もあります。また忘れるなどの問題点もあります。
我々はこれらの問題点を解決すべく薬剤徐放システムを検討してきました。薬にはいろいろなタイプの薬がありますが、我々が開発したデバイスはいろいろなタイプの薬を徐放できるようにしたものです。

このデバイスの開発には、厚生労働省や日本医療研究開発機構(AMED)などから援助を頂き、東北大学内にある臨床研究推進センターと呼ばれる組織の先生たちや工学研究者、眼科の中澤教授らとの共同研究で行なわれました。
現在、徐放される薬剤はスキャンポフォーマ合同会社から提供いただいたウノプロストンを徐放させるように設計されています。
ウノプロストンは千葉大学の山本教授が中心になって行われた網膜色素変性症患者の点眼による治療の治験に利用された薬剤です。その概要は本シリーズ第1回に山本教授が寄稿されています。
我々の方法は投与方法が異なりデバイスから持続的な薬剤徐放を行なう方法です。角膜や結膜といった薬剤を通りにくくしているバリアの下にデバイスを埋め込む方法で、デバイスを埋め込むための手術が必要になります。
しかし、眼内ではないので眼球の中の組織を傷つけず、取り出しもできます。

このデバイスを利用した治療法は現在独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と呼ばれる審査機関に相談しており、平成30年には治験が開始される予定になっています。
埋め込み型の薬剤徐放システムは簡単なようで実はあまり多くありません。
評価をするデータもあまりないようで、PMDAも慎重に対応しているようです。利点として一度埋め込むと自分で投薬を行なう必要がなく、忘れることもなく、点眼ができにくい人でも大丈夫です。
いろいろな治療の試みは世界中で行なわれていますが、さまざまなタイプの網膜色素変性があるので多方面からの研究・開発が今後も必要になると思います。

研究助成者は今 目次

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あぁるぴぃ132号 (20180130)

新春特別対談 ~治療法研究推進とQOLの向上に向けた取り組み 3
JRPSだより 6
公益社団法人日本網膜色素変性症協会「理事・監事」の選任に関する告示 6
2月の相談予約のご案内 6
寄付に対する税制上の優遇措置について 7
学術研究助成受賞者は今 8
第10回 阿部 俊明(1997年・第1回受賞) 8
研究推進委員会(Wings)通信(第13回) 9
Wings研究者インタビュー 第10回 9
学術トピックス/東京医療センターでシンポジウムが開催 10
第12回JRPS網脈絡膜変性フォーラム開催報告 11
ちょっと賢い生活の知恵袋 12
第19回 寒い冬にはサツマイモの煮物でホッコリ 12
都道府県JRPS活動予定 13
北海道……13 / 宮城県……13 / 福島県……13 / 群馬県……13
栃木県……14 / 埼玉県……14 / 千葉県……14 / 東京都……15
神奈川県…15 / 長野県……15 / 静岡県……16 / 富山県……16
福井県……16 / 岐阜県……16 / 愛知県……17 / 三重県……17
滋賀県……17 / 京都府……18 / 奈良県……18 / 大阪府……18
和歌山県…19 / 兵庫県……19 / 広島県……19 / 香川県……20
徳島県……20 / 愛媛県……20 / 福岡県……21 / 長崎県……21
大分県……21 / 熊本県……21 / 宮崎県……22 / 鹿児島県…22
沖縄県……22
専門部会の活動予定 23
JRPSユース…23
編集局より 24
広告ページ 24
編集後記 28

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Wings研究者インタビュー 第10回

東京医療センター岩田岳先生に聞く
~遺伝性網脈絡膜疾患の病因・病態機序の解明~

平成29年度の日本医療研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業として、遺伝性網脈絡膜疾患、家族性緑内障、家族性神経萎縮症について病因・病態機序の解明を目指した新規事業が採択されました。
その事業のリーダーとして活躍されている岩田先生を訪問しました。

問:まずこれまでの網脈絡膜変性疾患の遺伝子解析のご研究についてお尋ねします。
答:昨年までの6年間で1300家系、2000人余の検体を収集、解析を行なってきました。
その結果、日本人は白人とかなり違う遺伝子変異で発症していることが分かりました。遺伝子の変異場所が異なっているというだけでなく、全く新しい変異遺伝子が50家系で見つかっています。
今後も、新しい変異遺伝子を見つける研究は続けますが、これまで自分のところで見つけた約380の変異については、民間会社にお願いして診断キットを作ってもらうことも計画しています。

問:いつ頃診断キットは実現するのですか。
答:3月頃までに初期バージョンを作りたいと思っています。完成すれば1万円前後でキットが手に入り、病院で診断が受けられるようになります。

問:今後の研究の進め方についてお聞かせください。
答:AMEDで29年度から3年間の計画で認められたオールジャパンの研究共同体では、昨年までの全遺伝子解析(全エクソン解析)から一歩進んで、一部の家系については全ゲノム解析へと移行します。
エクソン以外の領域における遺伝子変異について、別途、網膜で発現しているRNAと、その転写領域、転写制御領域と重なるか解析する計画です。タンパク質に加えて、RNAへの影響について、病態解明に迫りたいと思っています。

問:なぜ全ゲノムやRNAを対象にする必要があるのですか。
答:実は、最近、遺伝性網膜疾患の発症が遺伝子(エクソン)の変異によるだけではないことがわかってきました。遺伝子以外のゲノム領域の変異による転写プロセスへの影響がわかってきました。
そこで、遺伝子変異によって周辺遺伝子の転写がどのように影響されるのか調べる必要が出てきたのです。

問:今までRPの遺伝子解析を受けても5割くらいの人には変異遺伝子が見つからなかったというのは、そういうところにも原因があったのですね。
答:そうですね、理化学研究所の林崎先生と共同で、まずは正常な人由来の網膜細胞でRNA解析を行なっていく予定です。

問:RPなどの発症機序はどのようにして調べるのですか。
答:患者さんにご協力いただいて作製されたiPS細胞から視細胞を作って調べます。私たちはアメリカの大学グループと共同で研究を進めています。
より完成度の高い視細胞を作製し、電気生理学的な計測を含めた様々な発症機序につながる研究を行ない、発症を抑制する分子の探索に期待しております。

問:治療薬はできるのでしょうか。
答:一つひとつの遺伝子変異について発症機序が解明されれば、候補となる薬のスクリーニングは近年容易になってきました。
昨年我々は家族性の緑内障について、すでに処方されている鼻炎の薬が有効であることを発見し、論文として報告しました。
平成29年度から3年で遺伝子解析にはめどをつけ、次の3年のステージでは、特定の遺伝子変異に対して、特定の薬の有効性を調べるというような研究ができることを期待しております。

問:ただ、RPの薬となるとマーケットが小さいので商品化が難しいですよね。
答:おっしゃる通りです。そこで、日本人に変異が近いと思われるアジア人に対象を広げ、症例数を増やし、マーケットの拡大をはかる計画です。
すでに遺伝子解析のアジアコンソーシアムを立ち上げ、各国の研究者と連携して特定の遺伝子変異について、複数の家系を集めています。
国際的な治験ができるようになれば良いのですが、これについては今後の課題です。

問:これまでお話を聞いてきて、どうも患者の出番がなさそうに思えますが。
答:患者さんのこれからの役割は、レジストリーに参加していただくことだと思います。
症例が増え、また、どこに、どういう病歴の人がいるかということがすぐに分かるようになれば研究のスピードが上がります。

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第12回JRPS網脈絡膜変性フォーラム開催のご報告

2017年11月19日、大阪で第12回JRPS網脈絡膜変性フォーラムが開催されました。
5人の講演者のお話がすべて臨床試験に関わる内容で、治療が私たちに届く日が近づいていることの表れと感じました。「治療法が皆無の時代から自分に合った治療法を選択するように変わってきた」との指摘が印象に残りました。たくさんの内容から一部を紹介します。

①網膜色素変性に対する視細胞保護治療(九州大学 池田 康博先生)
視細胞保護のためのPEDF遺伝子治療の臨床研究で安全性を確認した。2018年度から治験を開始する。一方、RPの進行に影響する環境因子として炎症、酸化ストレス、循環障害などが分かってきた。環境因子の計測で進行の予測ができ、またこれらを抑える医薬品で治療ができる。

②網膜細胞移植と再生医療(理化学研究所 万代 道子先生)
iPS細胞由来網膜細胞が移植後に光に応答すること、またRPモデル動物が実際に光を感じるようになることを証明した。RP患者を対象とする臨床試験を2、3年以内に開始したい。最初の試験では光が分かったり、視野が少し広がる程度かもしれないが、段階的に効率を上げていける。

③チャネルロドプシンを用いた視覚再生研究(岩手大学 冨田 浩史先生)
青色光だけに反応するチャネルロドプシン2に代わって、可視光全般に反応する改変チャネル分子の遺伝子を作製した。製薬企業に技術移転して治験を準備中である。ICT技術によってより自然に見える方法を同時に開発している。

④遺伝性網膜疾患 診断から治療へのアプローチ(東京医療センター 藤波 芳先生)
遺伝性網膜疾患に対して、複数のステップで診断から治験導入が進められている。これを推進すべく、東京医療センターに「網膜疾患新規治療導入センター」が新設された。手動弁以下の重度視覚障害患者を対象として、正確な機能評価に基づき最適な治療(臨床試験)が選択できる。

⑤人工網膜による視覚機能の再建 -開発の現状と未来(大阪大学 森本 壮先生)
大阪大学が開発中の人工網膜の臨床研究が修了し、2018年度から治験を開始する。今のところ、ものの位置や動きは分かるが、色や形、それが何であるかは認識できない。今後、音声ガイドで何であるかを教えたり、視野を広げる装置の開発を進めたい。

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RIWC2018 in Auckland の日程のご案内

2年ごとに開催される世界網膜協会(Retina International)の世界大会は、2018年2月7日(水)から11日(日)まで、ニュージーランドのオークランド市において開催されます。RIWC2018 in Auckland 全体の日程(観光情報も含む)の案内は、コチラ(英語版)です。
各国代表団が参加するプログラムと日程、および一般人も聴講参加が可能なプログラム概要、さらにプログラムごとの参加登録の方法と登録料などの詳しい情報は、ニュージーランド網膜協会のホームページに掲載されています。
なお、専門家ではない方も参加ができるプログラムに関しては、日本語にしておきましたので、参加を検討されている方は、以下のリンクもご参照ください。

一般人が聴講・参加可能なプログラム概要(英語版は、コチラ

上記プログラム内容に関する資料(英語版は、こちら

文責:森田

 

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米NIHが遺伝子編集に1億9000万ドル拠出、臨床研究を加速

米国立衛生研究所(NIH)が、強力な遺伝子編集技術であるクリスパー(CRISPR)などを使って遺伝子編集の臨床実験をする研究者に対して、今後6年間で1億9000万ドルの研究費を拠出するというニュースが、2018年1月26日に発表されました。
NIHは特別な基金を作ることで、「できるだけ多くの遺伝疾患を治療できるように、遺伝子編集技術の臨床への移行を劇的に加速します」と、フランシス・コリンズ所長は述べていますが、一方で、デザイナーベビーに対する慎重な姿勢を崩してはいません。 米国の法律によってNIHは、編集された遺伝子が次世代に渡される結果になる胚の改変を含む研究への資金提供が禁止されているため、生殖細胞以外のヒトの体細胞の遺伝子を編集する研究案件だけを受け付けるとしています。
しかし、世界中の国々や地域を見渡し、将来のことを考えると、必ずしも万々歳という訳にもいかないように思えます。もっと長生きしたい。もっと背が高くなりたい。賢くなりたい。強くなりたい。いろいろな能力を伸ばしたい。どこかで、そういう人間の本源的欲望の誘惑に乗せられてしまう日がやってこないとは限りません。そういう将来の事態に危機意識を持った専門家もたくさんいて、メッセージを出していますので、リンクのページにに、その中から一つ紹介しておきましたので、英語のできる方は、コチラを視聴しておいてください。(文責:WEB管理人)

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