第4回Wings ひとくちコラム

ゲノム編集によるRPの治療

ゲノム編集とは細胞の遺伝情報を書き換える新たな技術です。医学の分野でも急速に研究が進み、最近、米国ソーク研究所や神戸理化学研究所などの共同研究チームがRPモデル動物の網膜細胞の遺伝子変異を修復、視細胞の脱落を防止して、視覚を維持することに成功しました。患者として、臨床応用の日が早く来ることを期待したい。
ただ、この技術を適用する前提として、治療を受ける患者の原因遺伝子が前もって特定され、遺伝子のどの部分に変異があるか正確に同定されていなければなりません。日本人のRP患者の遺伝子を検査しても、2~3割の人でしか原因遺伝子が特定されないのが現状です。未知の原因遺伝子の発見とともに、低コストで正確な遺伝子診断法の開発が望まれます。

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■研究者面談報告 第6回

■Wings研究者インタビュー 第6回

岩手大学 冨田浩史先生に聞く~遺伝子治療による視覚再生-臨床に向けた取り組み~
岩手大学理工学部化学・生命理工学科視覚神経科学研究室 冨田浩史(とみた ひろし)

先生は東北大学に在籍中から、緑藻単細胞生物であるクラミドモナスに発現しているチャネルロドプシン2という蛋白質に注目し、この遺伝子を使って視覚を再生する治療法の開発に取り組んでこられました。これを含め、光活性化チャネル遺伝子を使った治療法の臨床応用の見通しをうかがいました。

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問:先生は長年チャネルロドプシン2の遺伝子治療を目指して努力されてきました。いよいよ臨床試験が始まっているとうかがいました。
答:チャネルロドプシン2を使った遺伝子治療の実現のため、2006年4月に特許の出願をしましたが、その半年前にアメリカのレトロセンス社が出願しておりそちらが認められました。そこでなるべく早くこの治療法を実現するため、それまでの研究結果を同社に提供し、共同して開発を進めてきました。レトロセンス社は2016年春、ダラスで臨床試験を開始、途中経過が近いうちに発表される予定です。同社はつい最近アメリカの目薬の大手であるアラガン社に買収され、今後はアラガン社が臨床試験を進めると聞いています。

問:チャネルロドプシン2は青い光しか感じないので、先生方はすべての色を感じるたんぱく質の遺伝子を作られました。そちらの臨床応用の見通しは?
答:クラミドモナスとは別の緑藻類であるボルボックスに発現しているタンパク質VChR1が赤い光を感じることに注目、この遺伝子を改変して青、緑、赤など可視光のすべてを感じるタンパク質、改変型VChR1の遺伝子を作りました。こちらは最近特許の取得に成功し、その後東北大学が作ったベンチャー企業クリノに譲渡しました。クリノはアステラス製薬とライセンス契約を結び、アステラス製薬が治験に向けて準備を進めています。私はレトロセンス社の顧問という立場上、アステラス製薬の研究開発には関与していません。

問:遺伝子治療の治験に進むには、どのようなことが求められますか?
答:遺伝子治療にはウイルスベクターが必要ですが、眼科領域ではこれまで例が少なく、決まったメニューが存在しません。そのため、医薬品医療機器総合機構(PMDA)と相談しながら進めていく必要があります。治験までのプロセスはおおむね次のようになります。
①GMPに沿った施設でウイルス製剤を作製し、その品質のチェックを行ないます。たとえば、純度、夾雑物、細胞に対する感染効率などを調べます。何回か作って、ロットごとに品質をチェックし、いつでも同じ品質で製造できる薬剤であることを示します。
②GLP適合施設で前臨床試験の安全性試験を実施しなければなりません。試験項目は、遺伝毒性、安全性薬理、薬効薬理、薬物動態などです。対象動物も含め、PMDAと協議しながら実施します。ラットの安全性試験は終了し、カニクイザルでの試験が残っています。1回眼内注射で投与し3ヵ月間モニターします。
③前臨床試験の薬効・薬理試験についてはラットの縞視力の測定(いわゆる首ふり試験)と視覚誘発電位の測定を実施しました。試験はGLP施設で行なう必要はありませんが、すべてのデータをPMDAに提出しチェックを受ける必要があります。

問:しばらくは治験に直接関与されないとのことですが、現在、あるいは今後どのような研究をされるお考えですか?
答:ラットの首ふり実験の信頼性を高めるため、録画し、首ふり回数を機械的にカウントする方法を開発中です。また、遺伝子導入した網膜神経節細胞が光を受け、その刺激が脳でどのように認識され、どのように見えるかは未解明です。視覚心理学を専門とする先生との共同研究では、真っ白な部分はやや灰色に、真っ黒な部分も少し灰色になるものの、りんかくが強調された画像となるというようなシミュレーション結果が得られています。あくまでもシミュレーションであり、これを動物実験で今後明らかにしていきたいと考えています。また、長期的には、色覚を回復する研究、また網膜変性を遺伝子治療で保護する研究を進めたいと考えています。

問:最後に、全国のRP患者へ、ひと言メッセージをいただけますでしょうか。
答:2005年にこの研究に着手し、11年の歳月が過ぎました。何度も研究継続の危機がありましたが、JRPS主催の医療講演会にご招待いただき、多くの方々から力をいただきました。ありがとうございました。まだ、ゴールは少し先になりますが、引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

Wings ひとくちコラム第3回

GMP、GLPとは?

治験を実施するためには、前提として法律や省令に定められた基準をクリアする必要があります。その基準の中にGMPとGLPがあります。GMPとはGood Manufacturing Practiceの略で、治験薬を製造する際に遵 守すべきガイドラインのことです。治験薬の品質を保証することで、品質不良の治験薬から被験者を保護することを目的としています。一方、GLP とはGood Laboratory Practiceの略で、主に動物を 使って行なう前臨床試験、とくに安全性試験を適切に実施するための基準です。例えば、ある試験受託機関は全国各地に試験センターを持ち、医薬品、医薬部外品、医療機器、再生医療等製品、化粧品、食品など、幅広い分野において化学物質の安全性を確認するための試験を行なっています。

 

次回★Wings研究者インタビュー 第7回
弘前大学  中澤 満先生に聞く
~カルシウム阻害薬を用いたRPの進行抑制~

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第3回Wings ひとくちコラム

GMP、GLPとは?

治験を実施するためには、前提として法律や省令に定められた基準をクリアする必要があります。その基準の中にGMPとGLPがあります。GMPとはGood Manufacturing Practiceの略で、治験薬を製造する際に遵 守すべきガイドラインのことです。治験薬の品質を保証することで、品質不良の治験薬から被験者を保護することを目的としています。
一方、GLP とはGood Laboratory Practiceの略で、主に動物を 使って行なう前臨床試験、とくに安全性試験を適切に実施するための基準です。例えば、ある試験受託機関は全国各地に試験センターを持ち、医薬品、医薬部外品、医療機器、再生医療等製品、化粧品、食品など、幅広い分野において化学物質の安全性を確認するための試験を行なっています。

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■研究者面談報告 第5回

■Wings研究者インタビュー 第5回
京都大学池田華子先生に聞く~新しい神経保護治療の治験に向けて~

患者を対象に、新規薬物KUSおよび分岐鎖アミノ酸の神経保護治療の治験を計画されておられる京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターの池田華子先生にお話をうかがいました。

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Q:先生は2015年にJRPSの研究助成を受賞されました。さまざまな機会にご研究の内容をうかがっていますが、あらためてこれまでの成果を簡単にまとめていただけますか?

A:私たちは京都大学が新規に開発した化合物(KUS,Kyoto University Substance)がRPのモデル動物で病気の進行を抑えることを明らかにしました。RPの症状を示す2種類の遺伝子改変マウスやウサギに全身投与したところ、視細胞の脱落が抑制され、また網膜伝図検査で視力がよく保たれていることが分かりました。またKUSの研究にヒントを得て分岐鎖アミノ酸製剤(ロイシン、イソロイシン、バリン)をRPモデル動物に投与したところ、同様の効果があることが分かりました。これらの薬剤がRPの患者さんに対して、進行予防の新たな治療薬になる可能性があります。とくに分岐鎖アミノ酸はすでに他の病気の治療薬として長期間使われていますので、安全性に問題はありません。そこで、分岐鎖アミノ酸の神経保護効果を検証する治験の準備をしており、視機能の経過に関する自然経過観察を臨床研究として行なっています。

 

Q:臨床研究のデータは治験にどのように活かされますか?

A:今回の治験の第1段階は、第II相探索的試験と言って、とりあえず何らかの効果が得られるかどうかを調べたいと考えています。なるべく少ない人数で最大限の効果を出したいと思っています。症状が進行していない人が試験に入ると、薬の効果が見えにくくなりますので、臨床研究で視野進行が見られた患者さんを選んで試験をします。薬剤の効果は、治験開始後の進行を薬剤投与前の臨床研究データと比較して判定する予定です。各個人内あるいはグループとして比較します。

 

Q:どのような視機能を検査しますか?

A:ハンフリー視野計で視野検査を行ない、視野の広さと感じる光の強さを表すTotal point scoreを算出します。自覚的検査ですので、その日の体調その他が結果に影響します。それでも検査の回数を稼ぐことによって(例えば2ヵ月毎に6回検査することで)、十分な精度が確保できることが分かってきました。

 

Q:今回の探索的試験ではっきりした効果が出ると期待してよいですか?

A:やはり個人差があると思いますので、どのくらいクリアな結果が出るのか不明です。ただ、RPに対する治療薬が何もないという現状ですので、一定の効果が出れば次の段階、第III相試験に進めると考えています。

 

Q:第III相試験は、第II相試験と同様の試験を大規模にやるのですか? それとも無治療群を置いたランダム化比較試験をするのですか?

A:事前のデータで被験者を絞るようなことにはならないかもしれません。絞らないと効果が見えにくくなりますが、これは医薬品医療機器総合機構(PMDA)との相談になると思います。また、探索的試験で明らかに薬効があるのに無治療群を置く試験を実施するのは倫理的にどうかという意見もありますが、これもPMDAとの相談になります。

 

Q:KUSの治験開始の見通しはどうですか?

A:この秋から、硝子体内に直接注射する形で、重篤な急性眼疾患である網膜中心動脈閉塞症の急性期の患者さんでの治験を開始します。RPの患者さんには長期に使っていただきたいので、点眼で投与できるように研究しています。また、内服薬としての開発も同時に進めています。点眼になるか、内服になるか、今後の研究の推進次第ですが、いずれにしても1年後をめどに臨床応用をはじめたいと思っています。KUSは新規の化合物ですので、まずは正常な方を対象に第I相試験を行ない安全性の検討をします。ついで、RPの患者さんを対象に第II相試験を実施します。

 

Q:先生のご苦心と治療薬開発に向けた流れがよく分かりました。最後に全国の患者にメッセージをいただけますか?

A:KUSのほうは、ようやく、他疾患ではありますが、人に投与できるところまでこぎつけました。ここにきて、点眼や内服薬の開発も加速していますので、必ずや皆さまにお届けできるよう、頑張っていきます。分岐鎖アミノ酸製剤を用いた治験ですが、資金のめどが立ち次第開始したいと考えております。現在実施中の、分岐鎖アミノ酸の臨床研究に関心を持って下さる方がおられましたら、京都大学眼科にお問合せください。

(メール:rpkyoto@kuhp.kyoto-u.ac.jp、電話:075-751-3727[眼科外来]。お電話はすぐには対応できないことが多いですので、可能でしたら、メールでお願いいたします)。また、なるべく、最新の情報をHP(http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~ganka/html/shikihen2.html)やFacebook(https://www.facebook.com/京都大学網膜神経保護治療プロジェクト-312249548958205/)で公開していきますので、よろしくお願いいたします。


 

※Wings ひとくちコラム

第2回 ランダム化比較試験とは?

臨床試験の手法のひとつで無作為化試験、くじ引き試験とも言います。ランダム化とは被験者を治療群と無治療群にでたらめに割り付けることです。加えて、しばしば二重盲検法が併用され、試験をする側もされる側も、どちらの群に割り付けられているのかを知らされません。薬効をできるだけ客観的に評価するためです。ただし、とくに希少疾患や重篤な疾患では、無治療群を置かないで過去のデータと比較することもあります。


次回★Wings研究者インタビュー 第6回      
岩手大学工学部  富田浩史先生に聞く
~遺伝子治療による視覚再生-臨床に向けた取り組み~

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第2回Wings ひとくちコラム

ランダム化比較試験とは?

臨床試験の手法のひとつで無作為化試験、くじ引き試験とも言います。ランダム化とは被験者を治療群と無治療群にでたらめに割り付けることです。加えて、しばしば二重盲検法が併用され、試験をする側もされる側も、どちらの群に割り付けられているのかを知らされません。薬効をできるだけ客観的に評価するためです。ただし、とくに希少疾患や重篤な疾患では、無治療群を置かないで過去のデータと比較することもあります。

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2016年度RI世界大会報告おまけ1(第4弾)

大会後に台湾と香港のRP患者さんとボランティアさん、ニュージーランド、アイスランドや南アフリカ、フランスの学術委員の先生たちなどとともに、金井理事長と私が、日本代表として懇親会、交流会に招かれて、7月10日、11日の2日間、台中に行ってきました。
台中の山中に台湾一大きいといわれている湖があり、その日月潭という風光明媚なことで有名なところがあります。その船着場付近で、台風余波の雨風の中、若い兄さんが二人でドローンを飛ばし(ブンブンと、すごい音でした)、わたしたちは、2016RIWC(「2016年国際網膜協会世界大会」という意味)という形に並び、ドローンで上空から撮影して編集したものです。お兄さんたちの操縦はほんとうまいものでした。ドローンのプロですね。
このタイミングで傘を開け!! とか、たため!! とか、上を見て笑え!! とか、手を振れ!! とか、やたら注文されました。大丈夫かいな? と思ってましたが、見せてもらったら、見事な人文字になっていました!?!
私と金井理事長は、台湾の林会長の隣で、Rの左側の下のほうに写っているはずですが、わからないでしょうね。音楽の音が大きいのでボリュームを少し下げてご覧ください。めったとできない体験でした(^_^)v       文責:森田三郎

人文字の動画は、これです。

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2016年度RI世界大会総会(7月7日)の報告

2016年度RI世界大会報告第2弾

RIWC 2016 in Taipeiの総会は、7月7日(木)、午前9時から午後5時半まで、台北国際会議センター(TICC)にて開催された。

ファッサーRI会長の挨拶のあと、点呼の確認をするメンバーの選出と商人が行われ、出席者の点呼が行われ、正会員のフランス代表およびパキスタン代表が欠席、次回開催に応募捨ているアイルランド代表が台風等の影響で遅刻することが判明。ただし、パキスタン代表は、スカイプに寄る参加が認められ、事件と声の大きさなどの調整が行われた。

引き続き、議長、司会者の選出と承認が行われた後、報告事項等、アイルランド代表にとって影響が少ない議題からはじめることを決定し、総会は、40分遅れで始まった。

本報告では、議題案に沿って、結論だけを簡潔に紹介したい。

 

(1)歓迎の辞および議題案の承認

ファッサーRI会長、台灣視網膜色素病變協會林昭銘會長、香港視網膜病變協會曾建平會長の挨拶に引き続き、(2)~(11)の項目に関して議論検討が行われ、最終案が可決された。

 

(2)2014年パリ世界大会議事録の承認

全会一致で可決、承認された。

 

(3)会長および常任理事会による活動報告(2014―16年)

会計報告(2014-15年)

会費減免処置による損益処理について

活動報告については、ファッサー会長から、会計報告に関しては、担当理事からの説明がなされ、質疑応答の後、全会一致で可決承認された。

 

(4)選挙

4.1 RIの団体会員の承認について( 参考資料04-1)

4.1 RI会員に関して(付録04-1参照のこと)

4.1.1 準会員(Associate members)

4.1.2 関与団体(Interested groups)

4.1.3 正会員候補(Candidate members)

4.1.4 正会員(Full members)

損益決算処理報告に関連して、インド、イラン、ポルトガルが関与団体に格下げさた。ギリシャについては、長年のRIへの貢献を考慮し、条件付でスイスとの共同で正会員に残った。正会員候補であったデンマークについては、デンマーク自身が正会員になることを拒んだため、RIメーリングリストからはずすことが決まった。アルゼンチンが正会員候補となることが承認された。正会員であるオランダは、名称が変更になったが、実態は同じなので、正会員のままであることが認められた。したがって、現在の団体正会員は、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、フィンランド、フランス、ドイツ、(ギリシャ)、香港、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、 イタリア、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェイ、パキスタン、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾、英国、米国の25カ国(決定に応じた支払い義務を履行することを条件とするギリシャを含めて)となった。以上、論議を尽くした後、最終案が全会一致で可決承認された。

 

4.2 RI本部理事に関して(付録04-2参照)

4.2.1 RI本部運営委員会理事について(Management Committee)

常任理事会委員は、出席正会員各国につき、1票とし、封筒に入れて回収する方式で行われた。結果は、有効票21(白票1)で、以下のとおりとなった。

南アフリカのClaudette Medefindt氏、スウェーデンのCaisa Ramshage氏、香港のK.P. Tsang氏、ニュージーランドのFraser Alexander氏、パキスタンのAbdullah Yusuf氏の5名が選出された。

 

4.2.2 RI会長に関して

クリスチナ・ファッサー氏が、続投の意思と方針が述べられ、他に立候補者はいなかったことから、全会一致で、ファッサー氏を、会長として選出した。

 

 4.3 選挙に関して特に認識しておいてほしいこと

常任理事会では、業務が多くなっているため、様々な専門委員会に、各国からボランティアで協力をしてほしいという要請をしているということ。

 

 4.4 特別表彰

常任理事会は、2000年から常任理事を務めてきたブラジルのMaria-Antoinetta Leopoldi氏を同国のRP協会を発足させると同時に、他のラテンアメリカ諸国の組織の立ち上げを支援した功績に対して、ファッサー会長から表彰された。

さらに、フランス網膜協会の立ち上げの功績に対するJean-Luis Duffer教授、およびヨーロッパの研究者の大会に、網膜変性に関する研究課題を取り上げさせることに貢献したJose Sahel教授も、表彰された。

 

(5)RI本部理事(Retina International Office)

5.1 RI本部最高運営責任者としての会長報告 (付録05-1参照)

5.2 RI本部事務局 将来計画および職務記述書 (付録05-2参照)(5.1参照)

5.3 RI本部事務関連費予算案  (付録05-3参照)(5.1参照)

事務局強化のため、事務局長の待遇を、パートタイマーから、1年更新のフルタイム専任体制に改められた。予算は、国際網膜協会より、年間£45,000(4万5千ポンド)を支払う。また(寄付を集め、網膜研究の支援をおおなう、情報普及活動を行うなど)戦略計画を、これまでの3年から5年という中期的なものに変更することも提案された。

この動議に対し、事務局長に最大£45,000を支払い、5年のスパンで戦略計画を立てることが、全会一致で可決承認された。

 

(6) 管理運営統治組織(Governance)

総会前に団体正会員に、常任委理事会委員の候補者をだすよう、要請されたもの。省略。

 

(7). RI活動計画および予算(Retina International work plans and budget)

7.1 2016-18年度戦略的目標および活動計画 付録7-1参照 (appendix 7-1)

この間の戦略的活動計画は、

①RI活動の基礎といえるランニングコスト

②寄付金集めなどの戦略と業務を執行するためのRI事務局に必要なコスト

に大別さるが、これまでの資金不足に鑑み、RI常任理事会は2つの計画を提示し、総会において検討が行われた。

見直しは、以下の項目にわたる。会員資格、網膜関連研究、情報の伝達、共有と広報、会議(大会)開催、RI綱領と運営指針、若手育成、会計と本部理事会運営、RI事務局。

これらの項目に関して効率と節約を原則とした徹底した練り直し案が議論され、その結果、各項目分野に予算制限の上限の設けられた、より厳しい案の方が提案され、全会一致で可決承認された。

 

7.2 2017-18年度RI本部事務局予算案 付録7-2参照(appendix 7-2)

全体では、£142,400で、2014-15年度に比べて£25,100の節約である。主な節約項目としては、研究報告を髪媒体から電子媒体に変更すること、メンバー間の通信、広報の電子化の促進、電子会議の利用などが、目についた。

 

(8). RI世界大会について(Retina International conferences)

8.1 2018年度RI世界大会 in オークランド( New Zealand)(付録8-1参照)

詳細は、Retina New Zealand作成のプログラムを参照。

8.2 2020年度RI世界大会(付録8-2参照)

2020年度のRI世界大会には、アイスランドとアイルランドの2カ国から立候補表明があり、投票の結果、アイスランドのレイキャビックで開催されることに決定。

 

 

(9). RI本部による広報活動および情報提供

9.1 世界網膜の日の世界同時開催

9.2 公式WEBサイトによる情報提供(Website)

今回の予算節約案の鍵となっているのが、RI公式WEBサイトの改革である。本年7月の総会決定に基づいて、早速HPの改変を始めた。2016年7月中旬には、スマートなWEBサイトになったように見えた。しかし、見栄えに反して、知りたい情報の所在がわかりにくく、使い勝手が悪かった。

おそらく世界中からクレームが来たと思われるが、7月後半現在、改変前のHPに戻っている。しかし、現在のサイトは、旧サイトに比べ、パスワード管理が厳しくなり、会員への通知にも混乱が見られる。WEBサイトの変更は、誰がアクセスするのかを含む内容を、ITの専門家によく理解してもらうことから始めることが肝要であり、完全に機能するようになるには、多少時間が必要と思う。

 

(10) RI直轄地域単位活動(Retina International regional sections)

10.1 ヨーロッパ網膜協会の活動(付録10-1参照)

実質的には、ヨーロッパの地域連携組織があり、活発に会議も開催しているので、RI活動予算がついている。4.4特別表彰の項目にもあったように、ラテンアメリカ地域でも地域協会設立の話が進んでおり、アジアに関しても、JRPS、台湾、香港、中国など、とアジア協会の設立の話し合いを始めた。今後、各地域協会はRIの支援は受けるとしても、財政的には個別にファンドを見つける工夫が必要ではないかと考えた。

 

(11). その他(Miscellaneous)

ローザンヌ大学のRivolta博士と、カリフォルニア大学(ロサンゼルス校)のDr. Farberから、治験およびファンドに関する協力依頼があり、それぞれ、協力できる方法とアドバイスを行った旨の報告があった。

また、今後の厳しい予算緊縮体制の中で、どうすれば寄付を集められるか、といった情報の共有、連携の緊密化が欠かせないので、各国の協力が要請された。

 

以上  (文責:森田三郎)

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■研究者面談報告目次

シリーズ ◆研究者インタビュー◆

2015年6月に開催されたJRPS社員総会(旧代議員会)で「第2次中長期計画」が承認され、治療法研究推進のために、患者目線にたって日常的に活動を担当する「研究推進委員会(略称:Wings)」が設置されました。
現在、第一線の研究者から研究の現状と展望についてお話を伺っています。順次、内容を会報で紹介していますが、当WEBサイトにも併せて掲載します。

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■研究者面談報告 第1回
岡山大学医学部(眼科)松尾俊彦先生、工学部内田哲也先生に聞く
「岡山大学方式人工網膜OUReP」の開発~医師主導治験の見通し~

■研究者面談報告 第2回
山梨大学医学部眼科教室 飯島裕幸先生に聞く
~ハンフリー視野検査から病気の進み具合が予測できる~

■研究者面談報告 第3回
理化学研究所 高橋政代先生に聞く ~網膜再生医療の未来について~

■研究者面談報告 第4回
九州大学眼科 池田康博先生に聞く ~視細胞保護遺伝子治療のこれから~

■研究者面談報告 第5回
京都大学眼科 池田華子先生に聞く ~ 新しい神経保護治療の治験に向けて ~

■研究者面談報告 第6回
岩手大学工学部応用化学・生命工学科視覚神経科学研究室富田浩史先生に聞く
~遺伝子治療による視覚再生-臨床に向けた取り組み~

■研究者面談報告 第7回
弘前大学中澤満先生に聞く ~カルシウム阻害薬を用いたRPの進行抑制~

■研究者面談報告 第8回
大阪大学 不二門 尚先生に聞く ~阪大方式人工網膜と経角膜電気刺激治療~

 

 

 

 

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■研究者面談報告 第4回

■Wings研究者インタビュー 第4回
九州大学眼科 池田康博先生に聞く ~視細胞保護遺伝子治療のこれから~

RP患者を対象とする神経栄養因子PEDFの遺伝子治療臨床研究を実施されている池田先生に今後の見通しなどをお話しいただきました。

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問:2013年3月から臨床研究を開始されたそうですが、これまでの経過は?
:今回の臨床研究は遺伝子導入ベクターを目に投与することの安全性を確認することが第一の目的です。5名に遺伝子導入ベクターを投与して2年間経過しましたが、重篤な副作用は観察されていません。

:「医師主導治験」という新たな枠組みで研究する準備をされていると伺いました。その背景や見通しは?
:臨床研究だけでは遺伝子治療を患者さんに届けられません。治験という過程をクリアしてはじめて、薬として使用することが許可されます。そこで2年後の治験開始を目指して準備しています。日本医療研究開発機構(AMED)から資金を提供していただくことになり、実施の可能性が広がりました。これまでの臨床研究では視力の悪い人に半ばボランティア的な意味合いを含めて研究に参加していただきました。その結果、大きな合併症など起こらないことが分かったので、これからは治療効果の判定がしやすいもっと視力のよい人にもエントリーしていただく予定です。

:通常の薬の治験のように、二重盲検試験をするのですか?
:安全性を調べる第1相試験と探索的に有効性を調べる第2a相試験では、対照群は置きません。有効性を確認するための第3相試験については、規制当局の医薬品医療機器総合機構(PMDA)がどう判断するか、現時点では分かりません。

:治験ではどのような指標で有効性を調べますか?
:RPは進行が遅く、薬の有効性評価が難しいのが実情です。今のところハンフリー視野計による視感度の検査もしくは改良型のマイクロペリメータMP-3による網膜感度の検査を考えています。しかし、どちらも自覚検査なので、客観性に難点があります。患者のその日の状態によって、成績がいいときと悪いときがあります。そこで客観的なマーカー分子を見つける努力をしています。視細胞の死んだ量に比例して増減する分子が血液か眼房水に見つかれば、評価はずっと容易になり、かつ短期間にできます。

:人によって薬の効きかたが違うとも聞きますが。
:RPは原因となる遺伝子もさまざまで、遺伝子診断にもとづく病型分類ごとに治療方針を考えるのが理想的です。試験参加者の多様性により、効果の出やすい患者と出にくい患者が混じってしまうと、有効性の証明が困難になります。遺伝子を調べて病型をもう少し細分化できると、各グループに対応したより効果的な治療薬を開発できる可能性が高まります。

:そのためにもRPの疾患登録(レジストリ)が必要ではないかと。
:そうですね。レジストリを立ち上げるとなると、どうしても資金が必要ですし、また原因遺伝子の情報が背景にないといいものにならないので、ここがネックになります。

:RPの難病登録の臨床調査個人票には、本人同意の上で遺伝子診断の結果を記入する欄があります。これを充実させる形で、目的のレジストリができる可能性はないですか?
:個人票のデータは現在のところ自治体で管理されているので、まずはそれを一括して管理する必要があります。難病の研究班が呼びかける可能性はありますが、現時点では不明です。もちろん遺伝子研究をされている先生方の協力も必要不可欠です。

:患者としては、行政やさまざまな立場の先生が一丸になって進めてもらいたいです。
:必要性は誰もが認めているので、何とか実現するようにしたいですね。

 

【インタビューを終えて】
前回は、光を失った患者に視細胞を移植することによって視力を回復する試みについて、高橋政代先生にお話しいただきました。今回は、視力を失ってしまう前に、病気の進行を遅らせたり、止めたりする治療のお話です。RPの症状は多種多様であるため、私たち患者にとってはどちらの研究も重要となります。米国では、特定の網膜疾患(レーバー先天盲)に対する遺伝子治療を近い未来に国が認可するのではないかと言われています。患者の要望があれば、日本でも承認申請する準備があるとの噂もあります。病型をここまで限定しない池田先生の治療法にも期待が高まります。日進月歩と言わず、秒進分歩くらいで研究を進めていただきたいところですが、既にお忙しい先生が倒れてしまっては元も子もないので、私たちは少しでも目を労わりながら研究の成果を待つことにしましょう。

 

※Wings ひとくちコラム
第1回 「臨床研究」と「治験」の違いとは?
一般に人を対象とする医学的研究のことを広く「臨床研究」といいます。その中で医薬品の投与や医療機器の導入を伴う研究を「臨床試験」といい、その一部に「治験」があります。治験は医薬品や医療機器の製造販売の承認を国から得るために行なう臨床試験のことです。有効性と安全性が証明されれば「承認」となり、一般患者の手元に届きます。
一方で、「承認」を目指さない医師主導の試験を臨床研究ということもあります。たとえばRP患者を対象とした遺伝子治療や再生医療などで、治験に至る前に行なう研究を臨床研究といいます。またすでに承認された医薬品の比較試験なども臨床研究といいます。データ改ざんの不正が発覚した高血圧治療薬の臨床研究の事例は記憶に新しいところです。

次回★Wings研究者インタビュー 第5回
京都大学 池田華子先生に聞く ~新しい神経保護治療の治験に向けて~

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第1回Wings ひとくちコラム

「臨床研究」と「治験」の違いとは?

一般に人を対象とする医学的研究のことを広く「臨床研究」といいます。その中で医薬品の投与や医療機器の導入を伴う研究を「臨床試験」といい、その一部に「治験」があります。治験は医薬品や医療機器の製造販売の承認を国から得るために行なう臨床試験のことです。有効性と安全性が証明されれば「承認」となり、一般患者の手元に届きます。
一方で、「承認」を目指さない医師主導の試験を臨床研究ということもあります。たとえばRP患者を対象とした遺伝子治療や再生医療などで、治験に至る前に行なう研究を臨床研究といいます。またすでに承認された医薬品の比較試験なども臨床研究といいます。データ改ざんの不正が発覚した高血圧治療薬の臨床研究の事例は記憶に新しいところです。

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