あぁるぴぃ142号 目次

JRPSだより   3

2020年版JRPSカレンダー 販売のお知らせ  3

10月の相談予約のご案内    3
「ピアサポート」電話相談のご案内  3

第23回研究助成受賞者からのメッセージ   4
林 孝彰先生(東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科)   4
朝岡 亮先生(東京大学医学部附属病院眼科学教室)  5
長谷川 智子先生(京都大学眼科)   5

第14回JRPS網脈絡膜変性フォーラム開催報告    6

Wings ひとくちコラム      7
第11回 医学研究・臨床試験における患者・市民参画
(PPI)が始動                   7

都道府県JRPS新会長・部会長ご挨拶         7
吉村 敏男(福井県網膜色素変性症協会)        7
矢野 健(山陰網膜色素変性症協会)          8
西川 隆之(JRPSユース)               9

あぁるぴぃ広場 ~会員からの投稿~          9
障害と仕事(岩手県奥州市 千田 輝子)        9
心の眼で歩む空手道(群馬県 小暮 愛子)       10
カナダへの旅 2019年7月(三重県 木村 靖子)     10
前へ、進め!(滋賀県 奥村 清和)           11
映画で見たあの和菓子との再会(奈良県 野島 一郎)   11
好きな色はなに色ですか?(島根県 奥 美和子)     12
私の心強い相棒(熊本県 宮本 信子)          12

QOL向上推進委員会(QOLC)通信          13
第6回 なぜ今キャッシュレスが話題に!?
知ると得するキャッシュレス決済とは         13

都道府県JRPS活動予定  16~26
北海道……16 / 岩手県……16 / 秋田県……16 / 福島県……16
群馬県……17 / 栃木県……17 / 埼玉県……17 / 千葉県……18
東京都……18 / 神奈川県…18 / 新潟県……19 / 長野県……19
福井県……19 / 岐阜県……19 / 愛知県……20 / 三重県……20
滋賀県……20 / 京都府……21 / 奈良県……21 / 大阪府……21
和歌山県…22 / 兵庫県……22 / 岡山県……22 / 広島県……23
山陰………23 / 香川県……23 / 徳島県……24 / 愛媛県……24
高知県……24 / 福岡県……25 / 長崎県……25 / 大分県……25
熊本県……25 / 宮崎県……26 / 鹿児島県…26

専門部会の活動予定    26
JRPSユース       26

編集局より        27

広告ページ        27

編集後記         32

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第18回研究推進委員会(Wings)通信(20190129)

これまでインタビューした諸先生に、ご研究の進捗状況等をフォローアップ記事として随時ご寄稿いただいています。今回は高橋政代先生に2016年3月発行の『あぁるぴぃ121号』に掲載されたインタビュー記事をフォローアップしていただきました。

■Wings研究者インタビューフォローアップ寄稿(2)
「加齢黄斑変性の再生医療臨床研究からRPの再生医療臨床研究へ」
高橋 政代
(理化学研究所多細胞システム形成研究センター
網膜再生医療研究開発プロジェクト プロジェクトリーダー)

2015年11月に受けたインタビュー記事では、加齢黄斑変性に対する他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞(iPS-RPE)移植の臨床研究を予定していること、網膜色素変性に対する視細胞シート移植は3、4年後にすると書いてあります。どちらも予定通り進んでいることをうれしく思いました。
他家iPS-RPE移植は5例に行われ、1年の経過後の結果を論文にまとめているところです。その前の自家移植とともに、iPS細胞から作った我々の網膜色素上皮細胞が安全であることは確認されました。現在、細胞を効率よく病変部に生着させて効果を得るために、手術法の改良などより良い治療への研究が進んでいます。
視細胞シート移植についてはこれまでに様々な動物モデルを作成し、視細胞移植後の視機能回復を詳細に検討しました。今ではどこよりも詳しく徹底的に研究しデータを積み重ねてきているので、視細胞シート移植が効果を出すことは確信しております。これらの結果を受けて視細胞移植は来年度に臨床研究の申請をする予定であります。
ただし、移植するのは1mmあまりの小さな細胞シートなので、その効果も限定的であること、視野がわずかに回復する治療というイメージで考えていただくと良いかと思います。

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世界網膜の日 in 富山2019 初日報告

世界網膜の日 in 富山2019 初日報告

 

日時:2019年9月22日(日) 11::30(受付開始)~17:00

会場: 富山県総合福祉会館(サンシップとやま)

 

プログラム

・開会宣言

アトラクション(越中おわら節等「風の会」)

 

・第23回JRPS研究助成授与式

◎審査委員長、山本修一先生による講評 & 授与式

 

・受賞者講演

林 孝彰 先生(東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)

全身疾患に合併する遺伝性網膜ジストロフィの病態解明を目指した

分子遺伝学的研究

 

朝岡 亮 先生(代読:藤野友里 先生)(東京大学医学部附属病院眼科)

網膜色素変性症のベイズ推定による視野進行予測およびそれを利用した

高速視野計測、眼底自家蛍光による視野予測モデルの構築・検証

 

長谷川 智子 先生(京都大学眼科学教室)・・・・・・・・・・ライオンズ賞

網膜色素変性症の新規進行抑制治療薬としての分岐鎖アミノ酸の

細胞保護メカニズムの解明

 

 

・記念講演会:

講師:神戸アイセンター病院 網膜変性研究室長 非常勤医師

理化学研究所 上級研究員 前田亜希子先生

世界で進む遺伝子特異的RP治療~その準備のために今できること~

前田先生と参加者との質疑応答

次年度開催地へ引き継ぎ式

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Wings ひとくちコラム(第9回)

九州大学の視細胞保護遺伝子治療の治験開始間近

九州大学病院眼科の池田康博先生がかねてから準備されてきた色素上皮由来因子(PEDF)遺伝子治療の治験が平成30年度内に開始される見通しとなりました。近く参加者の募集が始まります。本遺伝子治療では、病気の進行を遅くするという治療効果が期待されるため、視力がある程度残っている初期から中期の患者が治験の対象となります。これまでの臨床研究の成果の上に、治療薬として国の承認を目指す治験の第一段階です。試験の正式名は「DVC1-0401網膜下投与による網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療の第I/IIa相医師主導治験」です。詳しくは下記URLを参照してください。

https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000038854

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第23回日本網膜色素変性症協会(JRPS)研究助成者決定のお知らせ

第23回JRPS研究助成は、JRPS学術審査委員の厳正な審査により、次の3件に決定いたしました。

林 孝彰 先生(東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)
『全身疾患に合併する遺伝性網膜ジストロフィの病態解明を目指した分子遺伝学的研究』

朝岡 亮 先生(東京大学医学部附属病院眼科)
『網膜色素変性症のベイズ推定による視野進行予測およびそれを利用した高速視野計測、眼底自家蛍光による視野予測モデルの構築・検証』

長谷川 智子 先生(京都大学眼科学教室)・・・・・・・・・・ライオンズ賞
『網膜色素変性症の新規進行抑制治療薬としての分岐鎖アミノ酸の細胞保護メカニズムの解明』

※ 表彰式と記念講演は、9月22日(日)の「世界網膜の日 in 富山」で行います。
※ 詳細は秋ごろ発行予定の『ニュースレター』No.33に掲載します。

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あぁるぴぃ141号 目次

リレーエッセイ ~網膜色素変性症と私[3] 3
JRPS香川で ~自分一人でない!仲間がいる(三木 祝子) 3

JRPSだより     4

第23回日本網膜色素変性症協会(JRPS)研究助成者決定!         4

特別メッセージ】分岐鎖アミノ酸製剤の治験外服用について   4

第6回(2019年度)定時代議員会報告      5

8月の相談予約のご案内                               5

「ピアサポート」電話相談のご案内        5

本部事務局の夏休みのお知らせ                5

2019世界網膜の日 in 富山」の参加申込みについて                            5

テレビ朝日福祉文化事業団「五感で楽しむ音楽会2019」のご案内   6

JRPSワークショップ2019 in 福岡」参加者募集のお知らせ    7

研究推進委員会(Wings)通信(第19回) 9

QOL向上推進委員会(QOLC)通信  10 ~ 11
第5回 視覚障害者の減災・防災教室 その4「災害時の避難」        10
QOLCトピックス・障害年金の更新と年金生活者支援給付金について 11

全国のJRPSを訪ねて   13 ~ 14
JRPS長野が20周年を迎えました 13
栃木県協会で20周年記念講演会 13
ねぎらいと希望の静岡総会 14

あぁるぴぃ広場 ~会員からの投稿~       16 ~ 18
上を向いて歩こう 泪がこぼれないように(秋田市 長尾 律子) 16
「視覚情報サポートラジオ」と私(千葉市 前田 憲志) 16
何でも挑戦(愛知県 武藤 靖子) 17
JRPSとの出会い(和歌山県 生駒 芳久) 17
阿波の川風とともに(徳島県 肥塚 有希) 18
あきらめない(宮崎県 矢野 紀) 18

都道府県JRPS活動予定       19  ~  30
北海道……19 / 岩手県……19 / 宮城県……19 / 山形県……20
福島県……20 / 群馬県……20 / 栃木県……21 / 埼玉県……21
千葉県……21 / 東京都……21 / 神奈川県…22 / 新潟県……22
長野県……22 / 福井県……23 / 岐阜県……23 / 愛知県……23
三重県……24 / 滋賀県……24 / 京都府……24 / 奈良県……25
大阪府……25 / 和歌山県…25 / 兵庫県……26 / 岡山県……26
広島県……26 / 香川県……27 / 徳島県……27 / 愛媛県……27
高知県……28 / 福岡県……28 / 長崎県……28 / 大分県……28
熊本県……29 / 宮崎県……29 / 鹿児島県…29 / 沖縄県……30

専門部会の活動予定  30
JRPSユース…  30

編集局より    31

広告ページ   31 ~ 35

編集後記       36

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第14回JRPS網脈絡膜変性フォーラム2019 in 東京

第14回JRPS網脈絡膜変性フォーラム2019 in 東京

治療法の確立が待ち望まれている網膜色素変性症の患者を対象として、多くの臨床試験(臨床研究・治験)が国内外で実施されるようになってきました。JRPSでは今年も「網脈絡膜変性フォーラム」を開催しました。多数の患者、家族、医師、専門家のみなさまが来場され、大盛況でした。
本会員の頁では、講演していただいた、3人の先生方の動画を会員限定でご紹介いたします。なお、各先生方のプロフィールについては、公開情報のフォーラム報告のPDF版をご参照ください。

日時:2019年6月30日(日) 10時~12時(開場9時15分)
会場:KFCホール
(東京都墨田区横網1-6-1 国際ファッションセンタービル3F)

公益社団法人日本網膜色素変性症協会(JRPS)理事長
佐々木裕二からの挨拶(公開動画

本フォーラムの趣旨説明(公開動画
(山本修一先生(千葉大学)JRPS学術委員長)

講演:
1.:藤波 芳 先生(東京医療センター{感覚器センター})
網膜色素変性治療に関する世界の動き
-診断から治療までの一体的診療-」(動画

2.:三浦 玄 先生(千葉大学)
網膜神経保護の試み」(動画

3.:堀田喜裕 先生(浜松医科大学)
網膜色素変性の遺伝子診断におけるメリットとデメリット」(動画

上記3講演に関する質疑応答

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網膜色素変性の遺伝子診断におけるメリットとデメリット 堀田喜裕先生

「網膜色素変性の遺伝子診断におけるメリットとデメリット」

遺伝情報を医学に応用しようと、膨大な研究が進行しています。網膜色素変性を代表とする網脈絡膜変性疾患についても例外ではありません。皆さんのなかにも主治医から遺伝子検査について話を聞いたり、実際に遺伝子検査を受けたりしている方がいらっしゃるかもしれません。2000年にヒトのゲノムの全塩基配列の決定が報道されてからまだ20年弱ですが、我々の遺伝子を網羅的に検査できる技術の進歩には驚くばかりです。ヒトの遺伝子は約25,000個と言われています。網脈絡膜変性疾患の場合、疾患の原因遺伝子は一つのことが多いので、疾患によって検出率は異なりますが、遺伝子検査によって3~4割の患者さんお原因を明らかにすることができます。遺伝子検査の結果は究極の個人情報ですから、検査をするにあたっては担当医から十分な説明を受けて、書面での同意を得ることが必須となっています。しかし、いくら丁寧に説明されても、遺伝というわかりにくい分野なので、十分に理解するのは難しいのではないでしょうか。本講演では、遺伝子検査のメリットとデメリットについてわかりやすく解説してみたいと思います。
メリットそしては、1)治療の可能性と2)遺伝する可能性についてより具体的に知ることができることが挙げられます。
1)「治療」と聞いて安易にとびつかないでください。現状では、レーバー先天盲、コロイデレミアなど、あまり聞いたことのないごく一部の網脈絡膜変性疾患の方しか対象になりません。また治療効果は限定的ですし、ウイルスを使った治療なので10年以上先の長期的な安全性は不明です。
2)患者さんとお話しすると、治療に次いで近親者に遺伝しないかをとても心配しておられます。遺伝子検査をすることによって、子孫に遺伝しないことを明確にできることがあり、そうした結果が得られる場合は大きなメリットになります。
デメリットそしては、1)近親者への影響と2)「予期せぬ結果(これを専門的にはincidental findings/ secondary findingといいます)」が挙げられます。
1) 遺伝子検査によって、遺伝していないことが明らかになれば、すでに述べたように「メリット」になりますが、遺伝していることがはっきりして「でめりっと」になる場合もあります。また、最近の遺伝子検査では、両親の協力が得られると検出率があがることもあって、両親の遺伝子も検査することが多くなっています。両親にそれぞれ半分ずつの原因があるということが多いのですが、両親のどちらかから遺伝していることがはっきりして、親族に大きな影響を与える可能性があります。
2)「予期せぬ結果」というのは、最近ではすべての遺伝子をみる遺伝子検査(これを全エクソーム検査と言います)が増えています。網脈絡膜変性疾患の原因を知ろうと検査したのに、方法によっては将来全身疾患やがんに羅患する可能性が明らかになる可能性があり、こうした場合の対応について専門家の間でも議論が進行中です。
私は遺伝子診断に基づいた未来の医療に大きな期待をしていますが、現状では述べたような克服すべき問題点も少なからずあります。したがって、決して軽い気持ちではなく、主治医とよく相談した上で、遺伝子検査を選択することをおすすめします。

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網膜神経保護の試み 三浦玄先生(千葉大学)

「網膜神経保護の試み」

網膜色素変性に対する研究は、その患者さんの数と比較しても世界中で多く行われています。これらの研究は遺伝性の網膜疾患を理解するために重要であり、そのため加齢黄斑変性や他の網膜疾患に対する治療法の発見につながる可能性もあり、多くの臨床試験を経て進歩してきました。
現在、網膜疾患に対しては、大きく分けて2種類の治療法が研究されています。ひとつは、視機能を修復したり、残存視機能を活性化するために、障害部位(例えば、突然変異遺伝子や変性した視機能)を置き換えてしまうことを目的とした治療です。網膜色素変性で言えば、iPS細胞を用いた再生医療や人工網膜、網膜細胞移植などがそれにあたります。もうひとつは、網膜神経保護を目的とした治療法です。網膜神経保護とは、網膜や視神経の細胞死を来す疾患、つまり緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、そして網膜色素変性などの疾患に対して、神経細胞死から神経を保護することによって神経細胞の生存を促進させ、構造と機能を維持することにより疾患の進行を食い止めようとする治療法であり、現在残っている視機能を少しでも長く維持することを目的としています。
現在行われている神経保護治療研究は、さらに2つのカテゴリーに分類することができます。薬物療法と、リハビリ的療法です。薬物療法には、①ウルソデオキシコール酸などの胆汁酸、②プロゲステロンなどのステロイドホルモン、③ドーパミン関連療法、④神経栄養因子などの成長因子または成長因子受容体アゴニストなどが挙げられます。また近年では網膜細胞死に関連する小胞体ストレスを抑制するはたらきのある薬剤についての研究も国内外から報告されています。リハビリ的療法とは内因性の修復メカニズムを向上させる治療であり、⑤運動療法と⑥網膜電気刺激療法が挙げられます。
神経保護治療の対象としては、大きく分けると光受容体(=視細胞)変性疾患、糖尿病性網膜症、および網膜神経節細胞疾患になります。これらの疾患は病態も障害部位も異なりますが、病理学的な最終段階が同じ酸化ストレスとアポトーシスであるという共通点があります。つまり、神経保護治療はこれらの広範な疾患メカニズムを標的にできるため、複数の網膜疾患に対しても活用することが出来るということです。また、現時点では網膜再生医療や人工網膜、遺伝子治療は主に安全上の問題から、疾患の後期段階にある患者さんを対象としています。したがって、重度の視力喪失および失明への進行を遅らせるために、初期のうちから比較的安全に適用することができる神経保護治療が、将来非常に重要な役割を担うようになるのではないかと期待されます。
しかし、網膜神経保護研究、特に網膜色素変性を対象とする研究には課題もあります。網膜色素変性は希少疾患であり、試験に参加してもらえる患者さんを集めることが難しいこと。症状や進行速度が非常に多様であり、患者さんによって神経保護効果がさまざまであること。そのため、適切な評価方法の設定や、最適な用法、用量の確立が難しいこと。ゆっくり進行する慢性疾患であるため、本当に機能が維持できているかの判断には数年以上かかること。神経保護治療のみでは疾患が完治したり、劇的な視機能の回復効果を得たりすることが難しいことなどが挙げられます。
本講演では、これら神経保護研究の詳細や研究成果、今後の展望について解説いたします。また現在千葉大学病院で研究している網膜電気刺激療法についても紹介させていただきたいと思います。

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網膜色素変性症治療に関する世界の動き 藤波 芳 先生

網膜色素変性症治療に関する世界の動き
━診断から津領までの一体的診療」

遺伝性網膜疾患は、遺伝子異常を原因として網膜に異常をきたす症候群で、本邦では約5万人の患者数が推定されている。網膜色素変性症はその代表的な臨床像であり、実際には黄斑ジストロフィ等のその他の症候群と原因がオーバーラップしているため、全てを総称して遺伝性網膜疾患と呼ばれる。遺伝性網膜疾患は、難治であり、先進諸国の失明原因第1位であるものの、本邦において有効な根本治療が存在せず、その病態解明・治療導入が急務である。
遺伝性希少疾患に関する診断から治療へのアプローチは、近年劇的な変化を遂げてきた。現在のゴールドスタンダードは5行程(1.臨床検査・診断・大コホート作成・自然歴監察、2.遺伝子検査・遺伝学的診断、3.遺伝子型・表現型関連及び最終確定診断、4.臨床治験導入、5.治療の安全性・有効性判定・評価法の確定)を経る形での治療実装であり、ここ数年間での遺伝医学分野における技術革新、情報共有・統合化の加速に伴い、欧米を中心に臨床治験導入が拡大している。世界的に見ると、遺伝子治療(gene augmentation, RNA interference, gene editing,optogenetics)、薬物治療、再生細胞治療、人工網膜移植などの臨床治験が広く展開されており、2013年に人工網膜、2017年に遺伝子治療が米国で初めて承認され、世界規模で治療が広がっている。「治療が皆無であった」時代から「治療を選択する」時代に移り変わるなかで、どの時期に対してどの治療を選択していくか(Therapeutic window)についても、治療の特性に合わせて明らかにされつつある。
また、原因遺伝子・病態毎にメカニズムが異なる遺伝性網脈絡膜疾患においえは、その評価方法は様々であり、中心視力・視野、光干渉断層計等の古典的方法のみでは評価が難しいものも多い。それぞれの治療において、特殊な電気生理検査を含む薬剤のダイナミズムの評価、眼底自発蛍光における量的評価、光閾値評価(full-field stimulus testing; FST)、質問票等の構築・標準化が必須であり、自然歴データを考慮した評価項目を決定する工程についても極めて重要となる。
即ち、「網膜色素変性症」という病名の診断は決してゴールではなく、そこをスタートとして前述の治療へのアプローチとなる5行程を一体的に繋げてゆく診療体制の構築が重要となる。本講演では、本邦において近未来に迫った遺伝性網膜疾患の治療実装を見据え、臨床診断に加え、病状・遺伝カウンセリング、遺伝学的診断、治療治験導入、病状に合わせた臨床評価・治療効果判定、全てを一体的に行う診療体制について、欧米の先行治験での最新情報を含めて紹介する

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