あぁるぴぃ141号 目次

リレーエッセイ ~網膜色素変性症と私[3] 3
JRPS香川で ~自分一人でない!仲間がいる(三木 祝子) 3

JRPSだより     4

第23回日本網膜色素変性症協会(JRPS)研究助成者決定!         4

特別メッセージ】分岐鎖アミノ酸製剤の治験外服用について   4

第6回(2019年度)定時代議員会報告      5

8月の相談予約のご案内                               5

「ピアサポート」電話相談のご案内        5

本部事務局の夏休みのお知らせ                5

2019世界網膜の日 in 富山」の参加申込みについて                            5

テレビ朝日福祉文化事業団「五感で楽しむ音楽会2019」のご案内   6

JRPSワークショップ2019 in 福岡」参加者募集のお知らせ    7

研究推進委員会(Wings)通信(第19回) 9

QOL向上推進委員会(QOLC)通信  10 ~ 11
第5回 視覚障害者の減災・防災教室 その4「災害時の避難」        10
QOLCトピックス・障害年金の更新と年金生活者支援給付金について 11

全国のJRPSを訪ねて   13 ~ 14
JRPS長野が20周年を迎えました 13
栃木県協会で20周年記念講演会 13
ねぎらいと希望の静岡総会 14

あぁるぴぃ広場 ~会員からの投稿~       16 ~ 18
上を向いて歩こう 泪がこぼれないように(秋田市 長尾 律子) 16
「視覚情報サポートラジオ」と私(千葉市 前田 憲志) 16
何でも挑戦(愛知県 武藤 靖子) 17
JRPSとの出会い(和歌山県 生駒 芳久) 17
阿波の川風とともに(徳島県 肥塚 有希) 18
あきらめない(宮崎県 矢野 紀) 18

都道府県JRPS活動予定       19  ~  30
北海道……19 / 岩手県……19 / 宮城県……19 / 山形県……20
福島県……20 / 群馬県……20 / 栃木県……21 / 埼玉県……21
千葉県……21 / 東京都……21 / 神奈川県…22 / 新潟県……22
長野県……22 / 福井県……23 / 岐阜県……23 / 愛知県……23
三重県……24 / 滋賀県……24 / 京都府……24 / 奈良県……25
大阪府……25 / 和歌山県…25 / 兵庫県……26 / 岡山県……26
広島県……26 / 香川県……27 / 徳島県……27 / 愛媛県……27
高知県……28 / 福岡県……28 / 長崎県……28 / 大分県……28
熊本県……29 / 宮崎県……29 / 鹿児島県…29 / 沖縄県……30

専門部会の活動予定  30
JRPSユース…  30

編集局より    31

広告ページ   31 ~ 35

編集後記       36

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第14回JRPS網脈絡膜変性フォーラム2019 in 東京

第14回JRPS網脈絡膜変性フォーラム2019 in 東京

治療法の確立が待ち望まれている網膜色素変性症の患者を対象として、多くの臨床試験(臨床研究・治験)が国内外で実施されるようになってきました。JRPSでは今年も「網脈絡膜変性フォーラム」を開催しました。多数の患者、家族、医師、専門家のみなさまが来場され、大盛況でした。
本会員の頁では、講演していただいた、3人の先生方の動画を会員限定でご紹介いたします。なお、各先生方のプロフィールについては、公開情報のフォーラム報告のPDF版をご参照ください。

日時:2019年6月30日(日) 10時~12時(開場9時15分)
会場:KFCホール
(東京都墨田区横網1-6-1 国際ファッションセンタービル3F)

公益社団法人日本網膜色素変性症協会(JRPS)理事長
佐々木裕二からの挨拶(公開動画

本フォーラムの趣旨説明(公開動画
(山本修一先生(千葉大学)JRPS学術委員長)

講演:
1.:藤波 芳 先生(東京医療センター{感覚器センター})
網膜色素変性治療に関する世界の動き
-診断から治療までの一体的診療-」(動画

2.:三浦 玄 先生(千葉大学)
網膜神経保護の試み」(動画

3.:堀田喜裕 先生(浜松医科大学)
網膜色素変性の遺伝子診断におけるメリットとデメリット」(動画

上記3講演に関する質疑応答

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網膜色素変性の遺伝子診断におけるメリットとデメリット 堀田喜裕先生

「網膜色素変性の遺伝子診断におけるメリットとデメリット」

遺伝情報を医学に応用しようと、膨大な研究が進行しています。網膜色素変性を代表とする網脈絡膜変性疾患についても例外ではありません。皆さんのなかにも主治医から遺伝子検査について話を聞いたり、実際に遺伝子検査を受けたりしている方がいらっしゃるかもしれません。2000年にヒトのゲノムの全塩基配列の決定が報道されてからまだ20年弱ですが、我々の遺伝子を網羅的に検査できる技術の進歩には驚くばかりです。ヒトの遺伝子は約25,000個と言われています。網脈絡膜変性疾患の場合、疾患の原因遺伝子は一つのことが多いので、疾患によって検出率は異なりますが、遺伝子検査によって3~4割の患者さんお原因を明らかにすることができます。遺伝子検査の結果は究極の個人情報ですから、検査をするにあたっては担当医から十分な説明を受けて、書面での同意を得ることが必須となっています。しかし、いくら丁寧に説明されても、遺伝というわかりにくい分野なので、十分に理解するのは難しいのではないでしょうか。本講演では、遺伝子検査のメリットとデメリットについてわかりやすく解説してみたいと思います。
メリットそしては、1)治療の可能性と2)遺伝する可能性についてより具体的に知ることができることが挙げられます。
1)「治療」と聞いて安易にとびつかないでください。現状では、レーバー先天盲、コロイデレミアなど、あまり聞いたことのないごく一部の網脈絡膜変性疾患の方しか対象になりません。また治療効果は限定的ですし、ウイルスを使った治療なので10年以上先の長期的な安全性は不明です。
2)患者さんとお話しすると、治療に次いで近親者に遺伝しないかをとても心配しておられます。遺伝子検査をすることによって、子孫に遺伝しないことを明確にできることがあり、そうした結果が得られる場合は大きなメリットになります。
デメリットそしては、1)近親者への影響と2)「予期せぬ結果(これを専門的にはincidental findings/ secondary findingといいます)」が挙げられます。
1) 遺伝子検査によって、遺伝していないことが明らかになれば、すでに述べたように「メリット」になりますが、遺伝していることがはっきりして「でめりっと」になる場合もあります。また、最近の遺伝子検査では、両親の協力が得られると検出率があがることもあって、両親の遺伝子も検査することが多くなっています。両親にそれぞれ半分ずつの原因があるということが多いのですが、両親のどちらかから遺伝していることがはっきりして、親族に大きな影響を与える可能性があります。
2)「予期せぬ結果」というのは、最近ではすべての遺伝子をみる遺伝子検査(これを全エクソーム検査と言います)が増えています。網脈絡膜変性疾患の原因を知ろうと検査したのに、方法によっては将来全身疾患やがんに羅患する可能性が明らかになる可能性があり、こうした場合の対応について専門家の間でも議論が進行中です。
私は遺伝子診断に基づいた未来の医療に大きな期待をしていますが、現状では述べたような克服すべき問題点も少なからずあります。したがって、決して軽い気持ちではなく、主治医とよく相談した上で、遺伝子検査を選択することをおすすめします。

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網膜神経保護の試み 三浦玄先生(千葉大学)

「網膜神経保護の試み」

網膜色素変性に対する研究は、その患者さんの数と比較しても世界中で多く行われています。これらの研究は遺伝性の網膜疾患を理解するために重要であり、そのため加齢黄斑変性や他の網膜疾患に対する治療法の発見につながる可能性もあり、多くの臨床試験を経て進歩してきました。
現在、網膜疾患に対しては、大きく分けて2種類の治療法が研究されています。ひとつは、視機能を修復したり、残存視機能を活性化するために、障害部位(例えば、突然変異遺伝子や変性した視機能)を置き換えてしまうことを目的とした治療です。網膜色素変性で言えば、iPS細胞を用いた再生医療や人工網膜、網膜細胞移植などがそれにあたります。もうひとつは、網膜神経保護を目的とした治療法です。網膜神経保護とは、網膜や視神経の細胞死を来す疾患、つまり緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、そして網膜色素変性などの疾患に対して、神経細胞死から神経を保護することによって神経細胞の生存を促進させ、構造と機能を維持することにより疾患の進行を食い止めようとする治療法であり、現在残っている視機能を少しでも長く維持することを目的としています。
現在行われている神経保護治療研究は、さらに2つのカテゴリーに分類することができます。薬物療法と、リハビリ的療法です。薬物療法には、①ウルソデオキシコール酸などの胆汁酸、②プロゲステロンなどのステロイドホルモン、③ドーパミン関連療法、④神経栄養因子などの成長因子または成長因子受容体アゴニストなどが挙げられます。また近年では網膜細胞死に関連する小胞体ストレスを抑制するはたらきのある薬剤についての研究も国内外から報告されています。リハビリ的療法とは内因性の修復メカニズムを向上させる治療であり、⑤運動療法と⑥網膜電気刺激療法が挙げられます。
神経保護治療の対象としては、大きく分けると光受容体(=視細胞)変性疾患、糖尿病性網膜症、および網膜神経節細胞疾患になります。これらの疾患は病態も障害部位も異なりますが、病理学的な最終段階が同じ酸化ストレスとアポトーシスであるという共通点があります。つまり、神経保護治療はこれらの広範な疾患メカニズムを標的にできるため、複数の網膜疾患に対しても活用することが出来るということです。また、現時点では網膜再生医療や人工網膜、遺伝子治療は主に安全上の問題から、疾患の後期段階にある患者さんを対象としています。したがって、重度の視力喪失および失明への進行を遅らせるために、初期のうちから比較的安全に適用することができる神経保護治療が、将来非常に重要な役割を担うようになるのではないかと期待されます。
しかし、網膜神経保護研究、特に網膜色素変性を対象とする研究には課題もあります。網膜色素変性は希少疾患であり、試験に参加してもらえる患者さんを集めることが難しいこと。症状や進行速度が非常に多様であり、患者さんによって神経保護効果がさまざまであること。そのため、適切な評価方法の設定や、最適な用法、用量の確立が難しいこと。ゆっくり進行する慢性疾患であるため、本当に機能が維持できているかの判断には数年以上かかること。神経保護治療のみでは疾患が完治したり、劇的な視機能の回復効果を得たりすることが難しいことなどが挙げられます。
本講演では、これら神経保護研究の詳細や研究成果、今後の展望について解説いたします。また現在千葉大学病院で研究している網膜電気刺激療法についても紹介させていただきたいと思います。

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網膜色素変性症治療に関する世界の動き 藤波 芳 先生

網膜色素変性症治療に関する世界の動き
━診断から津領までの一体的診療」

遺伝性網膜疾患は、遺伝子異常を原因として網膜に異常をきたす症候群で、本邦では約5万人の患者数が推定されている。網膜色素変性症はその代表的な臨床像であり、実際には黄斑ジストロフィ等のその他の症候群と原因がオーバーラップしているため、全てを総称して遺伝性網膜疾患と呼ばれる。遺伝性網膜疾患は、難治であり、先進諸国の失明原因第1位であるものの、本邦において有効な根本治療が存在せず、その病態解明・治療導入が急務である。
遺伝性希少疾患に関する診断から治療へのアプローチは、近年劇的な変化を遂げてきた。現在のゴールドスタンダードは5行程(1.臨床検査・診断・大コホート作成・自然歴監察、2.遺伝子検査・遺伝学的診断、3.遺伝子型・表現型関連及び最終確定診断、4.臨床治験導入、5.治療の安全性・有効性判定・評価法の確定)を経る形での治療実装であり、ここ数年間での遺伝医学分野における技術革新、情報共有・統合化の加速に伴い、欧米を中心に臨床治験導入が拡大している。世界的に見ると、遺伝子治療(gene augmentation, RNA interference, gene editing,optogenetics)、薬物治療、再生細胞治療、人工網膜移植などの臨床治験が広く展開されており、2013年に人工網膜、2017年に遺伝子治療が米国で初めて承認され、世界規模で治療が広がっている。「治療が皆無であった」時代から「治療を選択する」時代に移り変わるなかで、どの時期に対してどの治療を選択していくか(Therapeutic window)についても、治療の特性に合わせて明らかにされつつある。
また、原因遺伝子・病態毎にメカニズムが異なる遺伝性網脈絡膜疾患においえは、その評価方法は様々であり、中心視力・視野、光干渉断層計等の古典的方法のみでは評価が難しいものも多い。それぞれの治療において、特殊な電気生理検査を含む薬剤のダイナミズムの評価、眼底自発蛍光における量的評価、光閾値評価(full-field stimulus testing; FST)、質問票等の構築・標準化が必須であり、自然歴データを考慮した評価項目を決定する工程についても極めて重要となる。
即ち、「網膜色素変性症」という病名の診断は決してゴールではなく、そこをスタートとして前述の治療へのアプローチとなる5行程を一体的に繋げてゆく診療体制の構築が重要となる。本講演では、本邦において近未来に迫った遺伝性網膜疾患の治療実装を見据え、臨床診断に加え、病状・遺伝カウンセリング、遺伝学的診断、治療治験導入、病状に合わせた臨床評価・治療効果判定、全てを一体的に行う診療体制について、欧米の先行治験での最新情報を含めて紹介する

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第14回JRPS網脈絡膜変性フォーラム in 東京2019

第14回JRPS網脈絡膜変性フォーラム2019 in 東京(6月30日(日))

治療法の確立が待ち望まれている網膜色素変性症の患者を対象として、多くの臨床試験(臨床研究・治験)が国内外で実施されるようになってきました。JRPSでは今年も下記の要領で「網脈絡膜変性フォーラム」を開催しました。多数の患者、家族、医師、専門家のみなさまが来場され、大盛況でした。
第一線で活躍する医師・研究者として講演していただいた3人の先生方の治療法研究の成果と展望をご紹介いたします。
(講演および質疑応答の動画は、会員限定の頁にあります)

日時:2019年6月30日(日) 10時~12時(開場9時15分)
会場:KFCホール
(東京都墨田区横網1-6-1 国際ファッションセンタービル3F)

公益社団法人日本網膜色素変性症協会(JRPS)理事長
佐々木裕二からの挨拶(動画

本フォーラムの趣旨説明(動画
(山本修一先生(千葉大学)JRPS学術委員長)

プログラムのPDF版は、ココにあります。

講演:

1.:藤波 芳 先生(東京医療センター{感覚器センター})
網膜色素変性治療に関する世界の動き
-診断から治療までの一体的診療-」
(動画は会員の頁にあります)
フォーラムパンフの藤波先生講演・紹介PDF版は、ここ、とココです。

2.:三浦 玄 先生(千葉大学)
網膜神経保護の試み」(動画は会員の頁にあります)
フォーラムパンフの三浦先生講演・紹介PDF版は、ここ、とココです。

3.:堀田喜裕 先生(浜松医科大学)
網膜色素変性の遺伝子診断におけるメリットとデメリット
(動画は会員の頁にあります)
フォーラムパンフの堀田先生講演・紹介PDF版は、ここ、とココです。

上記3講演に関する質疑応答(動画は会員の頁にあります)

オーガナイザー:
角田和繁先生(東京医療センター{感覚器センター})
山本修一先生(千葉大学)

主催: 公益社団法人 日本網膜色素変性症協会(JRPS)
後援: 厚生労働省、公益社団法人 日本眼科医会、日本ロービジョン学会、
公益社団法人 ネクストビジョン
問合せ: 公益社団法人日本網膜色素変性症協会(JRPS)事務局
(TEL 03-5753-5156)

※本フォーラムの対象:眼科医・医療関係者、行政・福祉関係者、患者・家族
※本フォーラムは専門医認定事業です
※入場無料

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あぁるぴぃ140号 目次

JRPSだより 3

年会費納入のお願い 3

6月の相談予約のご案内 3
「ピアサポート」電話相談のご案内 3

[開催予告]
JRPSワークショップ2019 in 福岡       4

第14回JRPS網脈絡膜変性フォーラム 開催要項      4

「世界網膜の日 in 富山」開催要項     6

 

第6回(2019年)定時代議員会 議案書 8
公益社団法人 日本網膜色素変性症協会 2018年度 事業報告(案) 8
2018年度 決算報告(案) 15
財産目録 17
監査報告 18
2019年度 事業計画 19
2019年度 収支予算書 23

都道府県JRPS活動予定 25
北海道……25 / 岩手県……25 / 秋田県……25 / 宮城県……25
山形県……26 / 群馬県……26 / 栃木県……26 / 埼玉県……27
千葉県……27 / 東京都……27 / 神奈川県…27 / 新潟県……28
静岡県……28 / 福井県……28 / 岐阜県……28 / 愛知県……29
三重県……29 / 京都府……29 / 奈良県……30 / 大阪府……30
和歌山県…30 / 兵庫県……31 / 岡山県……31 / 広島県……31
山陰………32 / 香川県……32 / 徳島県……32 / 愛媛県……33
高知県……33 / 福岡県……33 / 長崎県……34 / 大分県……34
熊本県……34 / 宮崎県……34 / 鹿児島県…35 / 沖縄県……35

専門部会の活動予定      35
JRPSユース…      35

2018年度 寄付者一覧       36

編集局より     39

広告ページ     39

編集後記
     44

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「人工網膜による視覚機能の再建 -開発の現状と未来」森本 壮先生(大阪大学)

大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学  人工網膜は、網膜色素変性などで視細胞を失った網膜に対し、視細胞の代わりに残った網膜の内層の神経細胞に対し、電気刺激を行い、点状の光を感じさせることによって視覚を回復させる方法です。具体的には、まず電気刺激を行うための電極を何十極も載せた電極板と体内刺激装置を患者さんに埋植します。次にCCDカメラがついた眼鏡をかけ、CCDカメラの画像を携帯型のコンピュータで処理し、その情報を、電波を使って体内刺激装置に伝え、体内刺激装置はその情報に従って多点電極を通して網膜に対して電気刺激を行います。現在、人工網膜は3つのタイプの研究開発が進んでいます。一つ目は網膜上刺激型人工網膜で電極を網膜の上に置く方法で、主に米国で開発された方式で、すでに米国やEUでは、認可されておりそれらの国で治療を受けることができます。二つ目は、網膜下刺激型人工網膜で、電極を網膜下に置く方法で、主にドイツで開発が進んでいる方式で、第一世代の開発と臨床試験は終了し、現在、第二世代の人工網膜の開発が進行しております。最後に、我々が開発した日本独自の方式である脈絡膜上経網膜電気刺激(STS)型人工網膜で、これは眼球の外側の強膜からトンネルを作製し、脈絡膜上に電極を設置する方法で、他の方式と異なり、網膜に直接電極を置かないので、網膜への組織損傷が少なく、電極の交換が容易で、将来、再生医療を患者さんが受ける場合にも併用が可能な方式です。本講演では、我々がこれまでに行ってきたSTS型人工網膜装置の臨床試験の結果について述べ、他の方式の人工網膜装置の臨床試験の結果にも触れ、現時点での人工網膜でどこまで見ることができるかについて述べたい。また、現在開発中の第三世代の人工網膜の研究の状況や今後の人工網膜の展望について述べる予定である。

森本 壮( Takeshi Morimoto )
1997年 大阪大学医学部 卒業
1997年 大阪大学医学部眼科学教室入局
2001年 大阪大学大学院医学系研究科未来医療開発専攻 博士課程
2005年 医学博士(大阪大学)
2008年 大阪大学大学院医学系研究科眼科学 医員
2009年 大阪大学大学院医学系研究科寄付講座視覚情報制御学 助教
2010年 大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学 講師
2012年 大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学 准教授
現在に至る

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「遺伝性網膜疾患:診断から治療へのアプローチ」藤波 芳先生(国立病院機構東京医療センター 眼科)

遺伝性網膜疾患に関する診断から治療へのアプローチは近年劇的な変化を遂げている。標準とされる4行程(1.クリニックにおける臨床検査・診断、2.遺伝子検査・診断、3.臨床診断と遺伝子診断の相関確立ならびに最終確定診断、4.臨床治験導入)を経る形で、遺伝性網膜疾患に対する診断から治験導入が行われている。特に、この数年における遺伝医学分野における技術革新、情報共有・統合化の加速に伴い、欧米を中心に臨床治験導入が拡大し、世界的に見ると、千名以上の遺伝性網膜疾患患者が遺伝子置換治療、遺伝子導入治療、薬物治療、再生細胞治療、人工網膜などの先鋭的臨床治験に参加している。本講演では「治療が皆無であった」時代から、「治療を選択する」時代へ大きな変容を遂げつつある遺伝性網膜疾患分野における現在の取り組みについて、最新の情報を含めて紹介される。

1.臨床診断
遺伝性網膜疾患は希少疾患に分類される。網膜色素変性症という臨床病名の患者群の中にも原因となる(もしくは関連する)遺伝子は数十以上存在するため、単独施設における原因遺伝子ごとの臨床情報は極限られたものとなり、診断に苦慮することも少なくない。この状況を受けて、国内・国外で同一の臨床検査を基にデータ共有し、共同で臨床診断を行う、多施設共同研究が遂行されている。一例としてJapan Eye Genetics Consortium(JEGC)が挙げられる。JEGCは2006年に東京医療センター・臨床研究センター(NISO)を中心に設立され、日本臨床視覚電気生理学会の後援を受ける形で2017年8月現在までに国内23施設から約1600症例以上の情報共有がオンラインデータベースを利用して行われている。さらに、アジアの代表として、アジア域内(12ヵ国約50施設)での情報共有、その他の4大陸との連携(欧州、北米、豪州、南米)が強力に推進されている。

2.包括的遺伝子検査・診断
2010年代に入り、次世代シークエンスの標準化に伴い、250を超える網膜疾患関連遺伝子を同時に検索する手法が導入され、その他の手法では実現が難しかった包括的な遺伝子検査が可能となった。さらに、日本人特有の遺伝背景を数千単位の正常人データから割り出すことで、欧米からの過去の報告を基準とした形では診断が困難であった症例についても、日本人の特性を大規模コホート内で理解した上での遺伝子診断が実現化し、より精度の高い診断が現実のものとなっている。

3.臨床診断と遺伝子診断の相関確立と最終確定診断
数千単位の症例の、臨床・遺伝情報の共有化の実現により、網膜関連遺伝子それぞれについての臨床像が明らかとなり、「網膜色素変性症」と漠然と呼ばれてきた病名の中にも、様々な小分類が存在することが解ってきた。これらの分類診断は、原因遺伝子・病態を基に行われており、小分類間で、発症、重症度、進行性、遺伝様式が異なるため、この臨床診断・遺伝子診断を繋ぎ合わせた病態に基づく最終確定診断が患者カウンセリング、治療導入に必須の工程となっている。特に、日本人における臨床診断と遺伝子診断の関連においては、過去、包括的遺伝子解析を用いた大規模研究による調査が存在しなかったが、2010年代後半に入り日本人特有の疾患分類や病状が次々と明らかとなり、原因に即した形、病態に即した形で、それぞれの疾患の再整理が急務となっている。

4.治療導入
臨床診断、遺伝子診断から最終確定診断が得られた後、原因遺伝子、病状、病期(therapeuticwindows)を加味して、治験導入が考案される形が一般的となりつつある。国内・国外を含めて、様々な施設で、様々な手法で治療導入が行われる中で、治療適応疾患、その原因遺伝子、病期などの情報を共有する体制づくりが精力的に進められており、遺伝性網膜疾患治験情報ウエブサイト、症例情報共有オンラインデータベース、患者レジストリなどを通して、個々人に適した治療を選択する時代が日本に到来する日が間近に迫っている。

藤波 芳( Kaoru Fujinami )
2004年名古屋大学医学部医学科 卒業
2004年 名古第一赤十字病院 前期臨床研修
2006年 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 眼科後期臨床研修医 臨床研究センター 視覚研究部 視覚生理学研究室 研究 員
2009年 英国Moorfields Eye Hospital、Electrophysiology、Fellow 英国UCLInstitute of Ophthalmology、Genetics、Research Assistant
2013年 独立行政法 人国立病院機構 東京医療センター 眼科 慶應義塾大学大学院博士課程眼科学専攻 網膜細胞生物学グループ
2016年 英国UCL Institute of Ophthalmology、Genetics、Research Associate英国Moorfields Eye Hospital、Division of Inherited Eye Disease、Honorary Clinical Manager 、慶應義塾大学眼科学講座 非常勤講師
2017年 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター・臨床研究センター 視覚研究部 視覚生理学研究室 室長英国UCL Institute of Ophthalmology、Genetics、Senior Research Associate

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「チャネルロドプシンを用いた視覚再生研究」冨田 浩史先生(岩手大学理工学部生命コース)

緑藻類クラミドモナスより同定されたチャネルロドプシン-2(ChR2)タンパク質は、光受容に伴い細胞内に陽イオンを透過させる、光活性化陽イオン選択的チャネルとして機能する。神経細胞の興奮は細胞内への陽イオンの流入によって引き起こされるため、神経細胞にChR2を発現させることで、光照射によって興奮を誘起する光感受性神経細胞となる。我々は2005年から、この特徴的な機能を持つChR2の眼科分野への応用に取り組んできている。
網膜色素変性症では、視細胞が焼失し失明に至った場合でも、視細胞以外の神経細胞は残存していることが報告されている。残存する神経細胞、その中でも特に、視神経を構成する神経節細胞は、元来、視覚情報を脳に伝達する役割を担っており、この神経節細胞にChR2を発現させることで、神経節細胞が直接、光を受容し、脳に視覚情報を伝達できると考えられる。我々は、ChR2遺伝子を網膜神経節細胞に運ぶウイルスベクターとして、アデノ随伴ウイルスベクター2型(AAV)を選択し、遺伝的に視細胞変性をきたす(遺伝盲)ラットを用いて、視機能の回復を検証してきた。その結果、1回の遺伝子導入で約30万個の細胞にChR2タンパク質が発現し、ラットの生涯(約2年)を通じて回復した視機能が維持されること、ならびに重篤な副作用が見られないことが示されている。しかしながら、ChR2タンパク質が感じ取れる光は青色に限定されるため、ChR2を用いた遺伝子治療で視覚が回復できたとしても、青色しか見ることができない。この問題点に対して取り組み、2009年、同じ緑藻類のボルボックスから同定されたチャネルロドプシンを人為的に改変し、1つのタンパク質で青、緑、赤のほぼすべての色に応答する改変型チャネルロドプシン(mVChR1)の開発に成功している。mVChR1遺伝子導入によって、RCSラットの視機能回復が見られることならびに副作用が生じないことを確認し、臨床開発に必要な一部の前臨床試験を(独)医薬基盤研究所ならびに国立研究開発法人日本医療研究開発機構の支援により実施し終了している。
ChR2に関しては、ChR2の知財権を持つアメリカRetroSense社のサイエンティフィックアドバイザーとして臨床開発に協力し、2016年2月に、アメリカで臨床試験が始まっている。また、我々が独自に開発したmVChR1は、2016年2月よりアステラス製薬により臨床開発が進められている。
今回、これらのチャネルロドプシンによって得られる視覚特性を中心に、現在までの研究経過を報告する。

冨田 浩史( Hiroshi Tomita )
1990年 京都府立大学農学部 卒業
1992年 京都府立大学大学院農学研究科修士課程 修了 農学修士
1993年 東北大学医学部眼科学講座研究生(出向)
1998年 東北大学大学院医学系研究科眼科学講座 助手
2002年 長寿科学振興財団海外派遣研究員
(アメリカ合衆国オクラホマ大学眼科学講座)
2004年 東北大学先進医工学研究機構 助教授
(生命機能科学分野 人工網膜研究チーム チームリーダー)
2008年 東北大学国際高等融合領域研究所医歯薬融合領域 准教授
2012年 岩手大学理工学部生命コース 教授
(兼務)
東北大学 大学病院臨床研究推進センター 客員教授
RetroSence, LLC(U.S)(2008/1-2016/12)
現在に至る

岩手大学理工学部生命コース   冨田 浩史
緑藻類クラミドモナスより同定されたチャネルロドプシン-2(ChR2)タンパク質は、光受容に伴い細胞内に陽イオンを透過させる、光活性化陽イオン選択的チャネルとして機能する。神経細胞の興奮は細胞内への陽イオンの流入によって引き起こされるため、神経細胞にChR2を発現させることで、光照射によって興奮を誘起する光感受性神経細胞となる。我々は2005年から、この特徴的な機能を持つChR2の眼科分野への応用に取り組んできている。
網膜色素変性症では、視細胞が焼失し失明に至った場合でも、視細胞以外の神経細胞は残存していることが報告されている。残存する神経細胞、その中でも特に、視神経を構成する神経節細胞は、元来、視覚情報を脳に伝達する役割を担っており、この神経節細胞にChR2を発現させることで、神経節細胞が直接、光を受容し、脳に視覚情報を伝達できると考えられる。我々は、ChR2遺伝子を網膜神経節細胞に運ぶウイルスベクターとして、アデノ随伴ウイルスベクター2型(AAV)を選択し、遺伝的に視細胞変性をきたす(遺伝盲)ラットを用いて、視機能の回復を検証してきた。その結果、1回の遺伝子導入で約30万個の細胞にChR2タンパク質が発現し、ラットの生涯(約2年)を通じて回復した視機能が維持されること、ならびに重篤な副作用が見られないことが示されている。しかしながら、ChR2タンパク質が感じ取れる光は青色に限定されるため、ChR2を用いた遺伝子治療で視覚が回復できたとしても、青色しか見ることができない。この問題点に対して取り組み、2009年、同じ緑藻類のボルボックスから同定されたチャネルロドプシンを人為的に改変し、1つのタンパク質で青、緑、赤のほぼすべての色に応答する改変型チャネルロドプシン(mVChR1)の開発に成功している。mVChR1遺伝子導入によって、RCSラットの視機能回復が見られることならびに副作用が生じないことを確認し、臨床開発に必要な一部の前臨床試験を(独)医薬基盤研究所ならびに国立研究開発法人日本医療研究開発機構の支援により実施し終了している。
ChR2に関しては、ChR2の知財権を持つアメリカRetroSense社のサイエンティフィックアドバイザーとして臨床開発に協力し、2016年2月に、アメリカで臨床試験が始まっている。また、我々が独自に開発したmVChR1は、2016年2月よりアステラス製薬により臨床開発が進められている。
今回、これらのチャネルロドプシンによって得られる視覚特性を中心に、現在までの研究経過を報告する。

冨田 浩史( Hiroshi Tomita )
1990年 京都府立大学農学部 卒業
1992年 京都府立大学大学院農学研究科修士課程 修了 農学修士
1993年 東北大学医学部眼科学講座研究生(出向)
1998年 東北大学大学院医学系研究科眼科学講座 助手
2002年 長寿科学振興財団海外派遣研究員
(アメリカ合衆国オクラホマ大学眼科学講座)
2004年 東北大学先進医工学研究機構 助教授
(生命機能科学分野 人工網膜研究チーム チームリーダー)
2008年 東北大学国際高等融合領域研究所医歯薬融合領域 准教授
2012年 岩手大学理工学部生命コース 教授
(兼務)
東北大学 大学病院臨床研究推進センター 客員教授
RetroSence, LLC(U.S)(2008/1-2016/12)
現在に至る

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