第17回研究推進委員会(Wings)通信(20181127)

これまで3年間に10人の先生方にお話を伺ってきました。インタビューは継続しつつ、ご研究の進捗状況等を随時ご寄稿いただくことにしました。フォローアップ記事として掲載します。

■Wings研究者インタビューフォローアップ寄稿(1)
「山梨大学医学部眼科 飯島 裕幸先生に聞く
~ハンフリー視野検査と網膜色素変性」

2015年9月にJRPSの有松、堀口両氏が山梨までおいでになって、私が行っているハンフリー視野検査での網膜色素変性の臨床研究の話を聞いていかれました。その内容は2016年1月発行の研究推進委員会(Wings)通信に掲載されています。両氏が私のところまでおいでになられたのは、2013年10月6日のJRPS網脈絡膜変性フォーラムにおいて行った網膜色素変性の視野進行の講演がきっかけです。
網膜色素変性の主たる障害は視野障害で、求心性狭窄であったり、輪状暗点であったりします。その視野障害の全体像を把握するには、ゴールドマン視野計(GP)が分かりやすいので、網膜色素変性と最初に診断された際には、GPで検査を受けたことが多いと思います。しかし、この病気の進行を見ていく目的では、GPはあまりよい方法とはいえません。狭くなった視野が、中心10度以下になった患者さんを、GPで毎年測定してもほとんど変化がありませんが、それは進行がストップしたわけではありません。GPでは視野の広さを主に測定していますが、この時期には視野の広さは変化しないものの、感度が徐々に低下していきます。そこで感度の変化に敏感なハンフリー視野で測定すると、着実に進行していくことが分かり、さらにその速度が平均偏差(MD値)の数字でとらえられます。視野の感度というのは、玉ねぎ型をした視野の島の高度にあたるものです。視野の島の水平方向の変化を見るにはGPがすぐれていますが、垂直方向すなわち視野感度の変化を見るにはハンフリー視野がすぐれているので、とくに視野が著しく狭くなった時期の患者さんでの進行評価には、ハンフリー視野が適しているといえます。
私が山梨で最初にハンフリー視野計を使って検査を始めた網膜色素変性患者さんのひとりは、1989年当時51歳で、ハンフリー10度視野でのMD値が右眼で-13、左眼で-8dBでした。3年間ほどその検査を続けたところ、年率0.7から0.8dBで低下していくことが分かりました。そこで患者さんには視野の結果を見せて、「少しずつ進行はするものの、少なくとも30年間は失明することなく、80歳まではある程度見えていますよ」と説明しました。その患者さんが今年81歳になって受診されましたが、両眼白内障手術後の眼内レンズ挿入眼で、矯正視力は右0.6、左0.6でした。ハンフリー10-2視野のMD値は、右-28dB、左-27dBで、中心3度以内はよく見えています。少なくともこの患者さんについては、[網膜色素変性で近い将来失明するのではないか]という恐怖を和らげて、30年間を心おだやかに過ごすことに役立ったのではないかと思っています。
これまで身体障害の視覚障害の認定にはGPが必要でしたが、今年の改正でハンフリー視野計を使用したエスターマン両眼開放視野検査で代用できるようになりました。今後ますますハンフリー視野検査が網膜色素変性患者さんの検査として認知されてくるものと思います。(20181127)

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Wings研究者インタビュー フォローアップ寄稿(1)

「山梨大学医学部眼科 飯島 裕幸先生に聞く
~ハンフリー視野検査と網膜色素変性」

2015年9月にJRPSの有松、堀口両氏が山梨までおいでになって、私が行っているハンフリー視野検査での網膜色素変性の臨床研究の話を聞いていかれました。その内容は2016年1月発行の研究推進委員会(Wings)通信に掲載されています。両氏が私のところまでおいでになられたのは、2013年10月6日のJRPS網脈絡膜変性フォーラムにおいて行った網膜色素変性の視野進行の講演がきっかけです。
網膜色素変性の主たる障害は視野障害で、求心性狭窄であったり、輪状暗点であったりします。その視野障害の全体像を把握するには、ゴールドマン視野計(GP)が分かりやすいので、網膜色素変性と最初に診断された際には、GPで検査を受けたことが多いと思います。しかし、この病気の進行を見ていく目的では、GPはあまりよい方法とはいえません。狭くなった視野が、中心10度以下になった患者さんを、GPで毎年測定してもほとんど変化がありませんが、それは進行がストップしたわけではありません。GPでは視野の広さを主に測定していますが、この時期には視野の広さは変化しないものの、感度が徐々に低下していきます。そこで感度の変化に敏感なハンフリー視野で測定すると、着実に進行していくことが分かり、さらにその速度が平均偏差(MD値)の数字でとらえられます。視野の感度というのは、玉ねぎ型をした視野の島の高度にあたるものです。視野の島の水平方向の変化を見るにはGPがすぐれていますが、垂直方向すなわち視野感度の変化を見るにはハンフリー視野がすぐれているので、とくに視野が著しく狭くなった時期の患者さんでの進行評価には、ハンフリー視野が適しているといえます。
私が山梨で最初にハンフリー視野計を使って検査を始めた網膜色素変性患者さんのひとりは、1989年当時51歳で、ハンフリー10度視野でのMD値が右眼で-13、左眼で-8dBでした。3年間ほどその検査を続けたところ、年率0.7から0.8dBで低下していくことが分かりました。そこで患者さんには視野の結果を見せて、「少しずつ進行はするものの、少なくとも30年間は失明することなく、80歳まではある程度見えていますよ」と説明しました。その患者さんが今年81歳になって受診されましたが、両眼白内障手術後の眼内レンズ挿入眼で、矯正視力は右0.6、左0.6でした。ハンフリー10-2視野のMD値は、右-28dB、左-27dBで、中心3度以内はよく見えています。少なくともこの患者さんについては、[網膜色素変性で近い将来失明するのではないか]という恐怖を和らげて、30年間を心おだやかに過ごすことに役立ったのではないかと思っています。
これまで身体障害の視覚障害の認定にはGPが必要でしたが、今年の改正でハンフリー視野計を使用したエスターマン両眼開放視野検査で代用できるようになりました。今後ますますハンフリー視野検査が網膜色素変性患者さんの検査として認知されてくるものと思います。(20181127)

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Wings研究者インタビュー 第11回

東京医療センター 藤波 芳先生に聞く
~新規治療開発に向けた重度視覚障害患者の視機能評価法の確立~

昨年、網膜疾患新規治療導入センターを開設され、重度視覚障害患者の包括的視機能評価法構築の研究に取り組まれている東京医療センター・臨床研究センター 視覚研究部 視覚生理学研究室 室長の藤波芳 先生を訪ねました。

問:重度視覚障害患者を対象として治療を進めるためには視機能の評価法確率が課題とお聞きしました。
答:十数年前から欧米で重度視覚障害者を対象とする治験が進むなかで、どのように視機能を評価したらよいかが大きな問題となっています。「前よりはよくなった」といったようなあいまいな表現ではなく、生活上での有効性を客観的、数値的に証明する方法が検討されてきました。人工網膜治験、遺伝子治療の最終段階では新たな評価方法が使われ、それが治験の成功をもたらしたのです。当時私もイギリスでその研究に携わっていたものですから、帰国後、日本での需要にこたえる形で、東京医療センターで「重度視覚障害者を対象とした包括的視機能評価法の臨床研究を開始しました。

問:いったいどのような評価方法なのでしょうか。
答:その前にまず、現在の視力評価方法について説明します。ご存知のように、ランドルド環といいますが、Cの字の切れ目の向きが見えるか見えないかで視力1.0とか0.1と判定しています。さらに0.1以下では、何メートル近づいて見えるとか、指の本数が見えるとか、手の振りが見えるとか、さらにペンライトの光を感じるかどうかで視力を判定しています。しかし、指の本数とか、手の振る速さとか、ペンライトの光の強さとかにきちんとした決まりがありません。さらに背景とのコントラストなど、測定環境で結果は変わりますし、もちろん定量化もできません。したがって治験の評価方法としてそのままでは使えないのです。
一方、欧米での治験では、治療の有効性は、視力に関してはログマール値で0.3以上と一般に定められています。

問:先生、ログマールとは何ですか。
答:先ほど述べたランドルド環を使った少数視力表示と同じく、視力の表示方法の一つです。ランドルド環視力表示では各段階の間隔が不均一、例えば1.0と0.9の差と、0.3と0.2の差は等価ではないという問題点があります。これをログマール表示にすると各段階が均等になり、算術的な解析も可能になります。ランドルド環表示で1.0と0.1はログマール表示でそれぞれ0と1.0になります。数字が小さいほどよく見えることになります。全く光を感じない失明状態と光を感じる光覚弁の境界はログマール表示で2.4から2.7です。通常より近づいても視力表が見えなくなるのが1.3から1.6で、それより先の広い領域で指数弁、手動弁、光覚弁の3段階しかないのは不都合です。ドイツの研究者は種々の評価方法を組み合わせてこの領域の患者さん達の視力をログマール視力表示で0.1刻みで数値化することに成功しました。この新たな評価方法が確立されたために、ログマール表示で0.3上がったか否かという判定ができ、人工網膜の有効性が実証されました。

問:そのドイツで研究された評価方法をもとに、さらに進んだ重度視覚障害の評価基準を日本でつくろうとされているのですか。
答:はい、視力という自覚症状だけでなく、他覚症状の評価も重要です。ものが見えるためには、光を電気信号に変える視細胞、その信号を集約する双極細胞、そして情報を脳に伝える網膜神経節細胞が機能していることが必要です。それぞれの機能を電気生理学的な手段、つまり他覚的検査で評価します。視細胞が失われても、第2、第3の細胞の機能が残っていれば治療が可能になります。一方で、いろいろの生活場面の質問に答えていただくことで実生活での見え方を評価します。これら3つの評価法をを軸に、包括的に研究を進めてきました。あと少しでスキームが完成しますので、全国のいくつかの拠点病院で使ってもらおうと思っています。

問:重度視覚障害の治療に向け、治療対象者の選択法、また治療の有効性証明に欠かせない評価法が完成しつつあると考えてよいですか。
答:そのとおりです。

●インタビューを終えて:これまでの研究者インタビューを通じて、臨床試験(臨床研究・治験)を成功させるためには、視機能評価法の確立がとても大切だと分かりました。今回のお話をお聞きして、いよいよわれわれ患者が臨床試験に参加する機会が近づいていることが実感されました

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研究推進委員会(Wings)通信(第16回)

■Wings研究者インタビュー 第11回

東京医療センター 藤波 芳先生に聞く
~新規治療開発に向けた重度視覚障害患者の視機能評価法の確立~

昨年、網膜疾患新規治療導入センターを開設され、重度視覚障害患者の包括的視機能評価法構築の研究に取り組まれている東京医療センター・臨床研究センター 視覚研究部 視覚生理学研究室 室長の藤波芳 先生を訪ねました。

問:重度視覚障害患者を対象として治療を進めるためには視機能の評価法確率が課題とお聞きしました。
答:十数年前から欧米で重度視覚障害者を対象とする治験が進むなかで、どのように視機能を評価したらよいかが大きな問題となっています。「前よりはよくなった」といったようなあいまいな表現ではなく、生活上での有効性を客観的、数値的に証明する方法が検討されてきました。人工網膜治験、遺伝子治療の最終段階では新たな評価方法が使われ、それが治験の成功をもたらしたのです。当時私もイギリスでその研究に携わっていたものですから、帰国後、日本での需要にこたえる形で、東京医療センターで「重度視覚障害者を対象とした包括的視機能評価法の臨床研究を開始しました。

問:いったいどのような評価方法なのでしょうか。
答:その前にまず、現在の視力評価方法について説明します。ご存知のように、ランドルド環といいますが、Cの字の切れ目の向きが見えるか見えないかで視力1.0とか0.1と判定しています。さらに0.1以下では、何メートル近づいて見えるとか、指の本数が見えるとか、手の振りが見えるとか、さらにペンライトの光を感じるかどうかで視力を判定しています。しかし、指の本数とか、手の振る速さとか、ペンライトの光の強さとかにきちんとした決まりがありません。さらに背景とのコントラストなど、測定環境で結果は変わりますし、もちろん定量化もできません。したがって治験の評価方法としてそのままでは使えないのです。
一方、欧米での治験では、治療の有効性は、視力に関してはログマール値で0.3以上と一般に定められています。

問:先生、ログマールとは何ですか。
答:先ほど述べたランドルド環を使った少数視力表示と同じく、視力の表示方法の一つです。ランドルド環視力表示では、各段階の間隔が不均一、例えば1.0と0.9の差と、0.3と0.2の差は等価ではないという問題点があります。これをログマール表示にすると各段階が均等になり、算術的な解析も可能になります。ランドルド環表示で1.0と0.1はログマール表示でそれぞれ0と1.0になります。数字が小さいほどよく見えることになります。全く光を感じない失明状態と光を感じる光覚弁の境界はログマール表示で2.4から2.7です。通常より近づいても視力表が見えなくなるのが1.3から1.6で、それより先の広い領域で指数弁、手動弁、光覚弁の3段階しかないのは不都合です。ドイツの研究者は種々の評価方法を組み合わせてこの領域の患者さん達の視力をログマール視力表示で0.1刻みで数値化することに成功しました。この新たな評価方法が確立されたために、ログマール表示で0.3上がったか否かという判定ができ、人工網膜の有効性が実証されました。

問:そのドイツで研究された評価方法をもとに、さらに進んだ重度視覚障害の評価基準を日本でつくろうとされているのですか。
答:はい、視力という自覚症状だけでなく、他覚症状の評価も重要です。ものが見えるためには、光を電気信号に変える視細胞、その信号を集約する双極細胞、そして情報を脳に伝える網膜神経節細胞が機能していることが必要です。それぞれの機能を電気生理学的な手段、つまり他覚的検査で評価します。視細胞が失われても、第2、第3の細胞の機能が残っていれば治療が可能になります。一方で、いろいろの生活場面の質問に答えていただくことで実生活での見え方を評価します。これら3つの評価法をを軸に、包括的に研究を進めてきました。あと少しでスキームが完成しますので、全国のいくつかの拠点病院で使ってもらおうと思っています。

問:重度視覚障害の治療に向け、治療対象者の選択法、また治療の有効性証明に欠かせない評価法が完成しつつあると考えてよいですか。
答:そのとおりです。

●インタビューを終えて:これまでの研究者インタビューを通じて、臨床試験(臨床研究・治験)を成功させるためには、視機能評価法の確立がとても大切だと分かりました。今回のお話をお聞きして、いよいよわれわれ患者が臨床試験に参加する機会が近づいていることが実感されました。

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あぁるぴぃ138号

あぁるぴぃ138号 目次

新年のご挨拶(理事長 佐々木 裕二) 3
JRPSだより 4
「ピアサポート」電話相談を始めます!(日本松 啓二) 4
Webアンケートのお願い ~日本再生医療学会より 4
2月の相談予約のご案内 5
寄付に対する税制上の優遇措置について 5
マンガでわかる網膜色素変性症』全国眼科医への配布のお知らせ 6
JRPS宮崎設立1周年記念医療講演会開催のご報告(平田 清志) 6
「世界網膜の日in富山」の参加申込みが始まりました  7
2019世界網膜の日in富山 開催概要   7
参加費用および申込み方法 8
学術研究助成受賞者は今 9
第12回 西口 康二(2015年・第19回受賞) 9
「JRPSワークショップ2018 in 神戸」実施報告 10
研究推進委員会(Wings)通信(第18回) 12
Wings ひとくちコラム(第9回) 12
QOL向上推進委員会(QOLC)通信 13
第3回 視覚障害者の減災・防災教室 その2 「発災時の行動」① 13
【特別リポート】ここまで来た!視覚障害者用ナビゲーションシステムの開発 14
あぁるぴぃ広場 ~会員からの投稿~ 15
RP全国川柳大会に参加しませんか!(山本 進) 15
都道府県JRPS活動予定 15
北海道……15 / 岩手県……15 / 山形県……16 / 福島県……16
群馬県……16 / 栃木県……17 / 埼玉県……17 / 千葉県……17
東京都……18 / 神奈川県…18 / 静岡県……18 / 富山県……19
福井県……19 / 岐阜県……19 / 愛知県……19 / 三重県……20
滋賀県……20 / 京都府……20 / 奈良県……21 / 大阪府……21
和歌山県…21 / 兵庫県……22 / 岡山県……22 / 広島県……22
香川県……23 / 徳島県……23 / 愛媛県……23 / 福岡県……24
長崎県……24 / 大分県……24 / 熊本県……24 / 宮崎県……24
鹿児島県…25 / 沖縄県……25
専門部会の活動予定 25
JRPSユース…25
編集局より 26
広告ページ 26
編集後記 32

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第13回網脈絡膜変性フォーラム2018 in 浜松

第13回網脈絡膜変性フォーラム2018 in 浜松

2018年9月23日浜松

佐々木理事長挨拶

講演1:「網膜色素変性の自然経過 」    國吉一樹先生(動画

講演2:「講演遺伝子検査の意義         東範行先生(動画

講演3:人工網膜の現状と展望」          不二門尚先生(動画

講演4:網膜色素変性の治療を模索した50年」 三宅養三先生(動画

各講演に関連した質疑応答(動画

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あぁるぴぃ137号 (181127)

あぁるぴぃ137号 目次

もうまく募金へご支援のお願い 3
JRPSだより 3
12月の相談予約のご案内 3
第2回ロービジョン・ブラインド川柳コンクールへご協力を 4
あぁるぴぃ広場 ~会員からの投稿~ 5
リレーエッセイ・網膜色素変性症と私[第1回](大菅 規子) 5
神戸アイセンターを見学(市川 顯) 5
世界網膜の日in愛媛 開催報告 6
「世界網膜の日in愛媛」開催のご報告(竹林 増美) 6
【編集局リポート】世界網膜の日 in 愛媛のボランティア 6
2019年の「世界網膜の日」は富山で開催(笹木 希一) 7
世界網膜の日 in 愛媛 フォトアルバム 8
研究推進委員会(Wings)通信(第17回) 9
第13回JRPS網脈絡膜変性フォーラム開催報告 10
QOL向上推進委員会(QOLC)通信 12
第2回 視覚障害者の減災・防災教室 その1 12
全国のJRPSを訪ねて 13
JRPS埼玉が設立20周年 13
都道府県JRPS活動予定 14
北海道……14 / 岩手県……14 / 宮城県……15 / 山形県……15
福島県……16 / 群馬県……15 / 栃木県……16 / 埼玉県……16
千葉県……16 / 東京都……17 / 神奈川県…17 / 長野県……17
静岡県……17 / 富山県……18 / 福井県……18 / 岐阜県……18
愛知県……19 / 三重県……19 / 滋賀県……19 / 京都府……20
奈良県……20 / 大阪府……20 / 和歌山県…20 / 兵庫県……21
岡山県……21 / 広島県……22 / 香川県……22 / 徳島県……22
愛媛県……23 / 高知県……23 / 福岡県……23 / 長崎県……24
大分県……24 / 熊本県……24 / 宮崎県……24 / 鹿児島県…25
専門部会の活動予定 25
JRPSユース…25
編集局より 26
広告ページ 26
編集後記 32

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第13回JRPS網脈絡膜変性フォーラム in 浜松 

2018年9月23日、静岡県浜松市で開催されました。千葉大学の山本修一先生と浜松医科大学の堀田喜裕先生の司会で、「治療の未来を語る」を統一テーマに4人の先生方からご講演をいただきました。過去から未来に向けて治療法研究の推移を知り、現状を再認識しました。治療法研究に長年情熱を注いでこられた三宅養三先生のような方がロービジョンケアに関わってくださっていることが、とてもありがたいと感じました。(動画は「会員ページ」にあります)

1. 「網膜色素変性の自然経過」國吉 一樹(近畿大学)
網膜色素変性は症状や進行が患者により異なり、視野狭窄にもいろいろなパターンがある。ゴールドマン視野計を用い、多数の症例を長年継続して観察した。
①求心性視野狭窄:周辺から次第に視野が狭くなり、症例全体の6割~7割を占める②弓状暗点:弓状に弯曲した暗点で生理的盲点に近いと自覚しにくい③トリ型暗点:トリが羽ばたいている形④輪状暗点:求心性視野狭窄についで多く、中間がぐるりと見えない⑤中心暗点:はじめから中央が見えなくなる場合と輪状暗点が拡大して中央部が大きく潰れる場合がある。

2.「遺伝子検査の意義」東 範行(国立成育医療研究センター)
網膜色素変性では92、レーバー先天盲では20の原因遺伝子が知られている。遺伝子検査で異常が分かると次の利点がある。①病気の原因が分かる、②今後の進行をある程度予見できる、③子どもに伝わる可能性を調べられる、ただし子どもの異常を直接調べることは許されていない、④遺伝子治療に使える可能性がある。目的の細胞に広く導入する課題があるが、レーバー先天黒内障や網膜色素変性の患者を対象に正常遺伝子を入れる治療は臨床段階に入っている。遺伝子の異常部分を切り取って正常なものに置き換えるゲノム編集の臨床応用も近い。

3.「人工網膜の現状と展望」不二門 尚(大阪大学)
視覚には細かいものをしっかり見る機能と大雑把に見て目標の位置を把握する機能がある。人工網膜は後者のデバイスであり、顔やものの輪郭が分かり、白線に沿って歩けるようになる。阪大方式人工網膜は臨床研究を終了し、医師主導治験に移行しようとしている。本年度開始すべく準備中だったが、デバイスを現行の電波法の規制に適合させるため、予定より遅れる見込み。今後はテキストを読み、顔やものを認識するなど、細かい情報を補う視覚補助具とのマッチングを進める。

4.「網膜色素変性の治療を模索した50年」三宅 養三(愛知医科大学)
薬物治療、光障害の抑制、高酸素の影響、人工網膜、人工眼、視覚代行、遺伝子治療、再生医療など、網膜色素変性症を含む遺伝性網膜疾患の治療法研究の歴史をご自身の研究を交えて話された。薬物治療の効果判定には視機能が悪くなる速度の変化を証明しなければならず、治療薬開発の難しさがそこにある。日常の光が病気の進行に与える影響では、7歳から42年間片眼を遮蔽しても両眼のRPの進行に差が見られなかった。今も教科書などでよく引用される観察である。現在はネクストビジョン代表理事としてロービジョンケアに取り組んでいる

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第22回研究助成受賞講演要旨_前田亜希子先生(神戸アイセンター病院)

受賞テーマ:「網膜色素変性に対するリードスルー薬の開発」

JRPS研究助成を受けられますことに大変感謝しております。これまですすめてきた網膜変性を理解し、新しい薬をつくるという研究を発展させていきたいと思います。
網膜がどのように光を受け取り伝えるのかということを研究してきました。なぜ網膜が機能できなくなってしまうのかということを考えてきました。遺伝子の変化が網膜変性を引き起こすことが知られています。遺伝子は体の設計図です。遺伝子の変化が起こることによって、眼に必要なタンパク質をつくることができなくなったり、機能しないタンパク質ができてしまうことによって病気が起こってしまうのです。自然界ではある頻度で遺伝子に変化が起こってしまいます。そのような遺伝子変化の中でタンパク質の合成を中断させてしまう変化があります。このようなタンパク質ができなくなる遺伝子変化の箇所を読み飛ばすことによりタンパク質合成を回復し、体を守る仕組みが知られています。これをリードスルーといいます。今の研究ではこの仕組みを利用し、網膜変性につながる遺伝子変化があるにも関わらず、その箇所を読み飛ばして正常なタンパク質をつくりだすことにより、網膜症の進行を防ぐことができる薬を探します。網膜症以外の病気に有効な治療薬の中から網膜症に有効な新たな薬効を見つけだすので、有効薬を見つけることができれば、いち早く網膜症治療に用いることが可能です。
将来どんな眼科医になりたいのかを考えていた頃、網膜色素変性症患者会のお手伝いをしました。そこで患者さんとそのご家族がさまざまな不安の中で、治療の可能性を探しながら、生活の工夫をされながら日々すごされていることを学びました。治療・医療をつくりたい、網膜症とともに生きる方々の証人になりたいと思いました。この研究が一日でも早く皆さまのお役に立てるように、私にできる最大限の努力をしたいと思います。

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第22回研究助成受賞講演要旨_秋山雅人先生(九州大学眼科)

受賞テーマ:「網膜色素変性症の原因構造変異の解明」

この度、JRPSライオンズ賞に選出いただました九州大学の秋山 雅人です。研究助成をいただけることとなり、会員の皆さまには心より御礼申し上げます。
網膜色素変性は、主に体の設計図である遺伝子が原因で発症する病気であるということが知られております。私はこれまでに、遺伝統計学を専門として、網膜色素変性だけでなく、緑内障や加齢黄斑変性など、さまざまな疾患の大規模な遺伝子研究を行ってまいりました。近年の遺伝子研究では、技術の進歩により、効率的かつ網羅的に塩基配列を調べることが可能となっておりますが、最新の機器を用いて遺伝子を調べても、原因が分からない患者さまが未だにたくさんいらっしゃるのが現状です。
今回採択いただいた研究で私が取り組みますのは、網膜色素変性の原因となる遺伝子配列の違いの中でも、構造変異と呼ばれる塩基配列を見つけることです。ヒトのDNAには四種類の塩基が存在し、一つの塩基の違い(一塩基置換)は現在主流の機器で容易に見つけることが可能であり、網膜色素変性の原因となるものも、これまでに多く報告されております。一方で、複数の塩基が欠失していたり、挿入されているような違い(このようなものを構造変異といいます)も遺伝病の原因となることが知られており、これらは技術的な難しさがあるため、網膜色素変性の原因であるにもかかわらず、見つかっていないものが存在することが予想されます。この課題に対して、これまでに培った遺伝統計学の知識を活用して、いくつかのアプロー チで、遺伝的原因の解明に取り組む予定です。
遺伝子研究は、患者さまのご協力があって成り立つ研究です。この文章を読んで下さっている方の中にも、遺伝子研究にご協力いただいた方もいらっしゃることと存じます。皆さまのご期待に応えることができるように、日々研究に励んでまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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