研究推進委員会(Wings)通信(第28回)

■ 遺伝性網膜ジストロフィーの遺伝子検査が先進医療として運用開始

本年10月より神戸アイセンター病院と株式会社シスネックスが共同で「遺伝性網膜ジストロフィーと遺伝カウンセリング」という遺伝子パネル検査システムを国の先進医療として運用を開始しました。先進医療とは、自費診療と保険診療を同日に行うことを可能とする制度です。遺伝性網膜ジストロフィーとは遺伝子の変化により発症する網膜の変性疾患全体を指し、遺伝性網膜変性、また単に遺伝性網膜疾患とも呼ばれます。
遺伝性網膜ジストロフィーの原因遺伝子として250以上の遺伝子が報告されており、原因遺伝子を同定することにより、予後情報やロービジョンケアの情報提供、および遺伝カウンセリングを提供することが可能となります。今回の先進医療では82種類の遺伝子が検査されます。これまでの研究から、受験者の30~40%で、原因遺伝子が突き止められると期待されています。受験者負担額は遺伝カウンセリング費用6,600円(自費診療分)と、通常検査(保険診療)費用の概ね9,500円となります。遺伝子解析にかかる費用はシスメックスと神戸アイセンター病院が負担します。関心ある方は、神戸アイセンター病院に直接問合せてください。
電話:078-381-9876

臨床研究の実施計画は以下のウェブサイトで公開されています。
https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT1052210112

厚労省の臨床研究実施計画・研究概要公開システムについては、本年3月発行の『あぁるぴぃ151号』の「Wingsひとくちコラム」で説明しています。

なお同様の遺伝子パネル検査が「遺伝性網膜疾患 35遺伝子に対する自費診療遺伝学的検査」として東京医療センターで昨年6月から運用されています。
問合せ先:東京医療センター・臨床研究センター 視覚研究部・視覚生理学研究室
電話: 03-3411-0111(内線 6612)

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QOL向上推進委員会(QOLC)通信(第16回)

このコーナーは、QOL向上推進委員会からの投稿を紹介しています。

近づく年金改正。自分の等級を再確認

社会保険労務士 辰巳 周平

来年1月1日を施行日(予定)として、障害年金における眼の認定基準が改正されます。このたびは政令の改正(およそ35年ぶり)であり、かなり細かな箇所まで変更が加えられますが、ここでは紙幅に制限があるため主だったものだけを取り上げ解説します。詳細をお知りになりたい方は厚生労働省のホームページをご覧ください。

<視力障害について>
現行の「両眼の視力の和」から「良い方の眼の視力」へ変更されます。現行では「両眼の視力の和が0.05~0.08」が2級と規定されていますが、改正後は「良い方の眼の視力が0.04~0.07」へ変更されます。この場合、たとえば両眼の視力がそれぞれ0.07の方だと、現行では両眼の視力の和が0.14となり2級には該当しませんが、改正後は2級に認定されます。つまり、これまで等級不該当として障害年金を受給できなかった方たちにも受給の可能性が広がることになるわけです。
今回の改正ではすでに受給している方たちの等級が落ちることのないよう細かな配慮がなされており、それは以下の視野障害の改正についても同様です。

<視野障害について>
今回の最大のトピックスといってもよいでしょう。視野障害のみで1級が創設されます。現行では視野障害のみでは2級が最高等級でしたから、改正後は極端なことを言えばたとえ視力が1.0以上見えていても重度の視野狭窄を呈していれば1級の受給が可能になります。また、これまでは原則ゴールドマン視野計を使用した検査が必要でしたが、改正後は自動視野計による検査数値も対象となります。

ちなみに両者の1級該当の条件は次の通りです。
ゴールドマン型視野計の場合は「周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下、かつ、両眼中心視野角度が28度以下のもの」、一方自動視野計の場合は「両眼開放視認点数が70点以下、かつ、両眼中心視野視認点数が20点以下のもの」です。
厚生労働省は眼の障害年金受給者(1級を除く)に対して11月中旬をめどに今回の改正についてのリーフレットを送付する予定としています。現在2級受給者で上記1級に当てはまりそうな場合は自ら額改定請求を行う必要があります。改定は診断書提出月の翌月からとなるため、1月1日に施行(予定)された場合は1月中に提出することがベターです。診断書には提出日より3ヵ月以内の検査日が記載されていればいいことから、準備段階として今年中に視野検査等を実施しておき、改正施行日以降に素早く提出することが望ましいでしょう。しかし診断書様式も一新(しばらくの間は猶予期間として現行様式の使用も可能。ただしその際は視野検査結果の添付必須)されることから、病院での混乱も予想され主治医とのより密な連携が必要となりそうです。
この機会に自身の症状をいま一度確認し、請求漏れのないよう情報の共有・拡散を通じて全員が適正な障害年金を受給できるよう協力しあいましょう。

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あぁるぴぃ155号 目次

目次

もうまく募金へご支援のお願い   3
JRPSだより            3

「網膜の日」活動報告(森本 登)  3

静岡県地域オンライン交流会報告  4

ゆうちょ銀行での払込み手数料が改定になります   4

患者会員の士業登録者を募集します(高橋 仁)    5

電話相談のご案内     5

働く世代イベントを今年も開催!(菅谷 久美子)   6

世界網膜の日in岩手 開催報告     8
「世界網膜の日 in 岩手」開催のご報告(高橋 義光)   8
特別寄稿]記念講演を終えて(冨田 浩史)      8

2022年「世界網膜の日」は山陰・神国出雲で開催!(矢野 健)  9

研究推進委員会(Wings)通信(第28回             10
遺伝性網膜ジストロフィーの遺伝子検査が先進医療として運用開始  10

QOL向上推進委員会(QOLC)通信             10
第16回 近づく年金改正。自分の等級を再確認(辰巳 周平)  10

あぁるぴぃ広場 ~会員からの投稿~          12
コロナ禍なのに、つながる広がる(群馬県 古川 聖子)  12
国際白杖デーにちなんで(三重県 加藤 多)       12
沢山の音楽にありがとう(滋賀県 角川 より子)     13
Zoomができました!(島根県 永島 幸代)       13

都道府県JRPS活動予定                      15
北海道……15 岩手県……15 山形県……15 福島県……15 群馬県……16
栃木県……16 埼玉県……16 千葉県……16 東京都……17 神奈川県…17
新潟県……17 岐阜県……18 愛知県……18 三重県……18 滋賀県……19
京都府……19 奈良県……19 大阪府……20 和歌山県…20 兵庫県……20
岡山県……20 広島県……21 香川県……21 徳島県……21 愛媛県……22
高知県……22 福岡県……22 長崎県……23 大分県……23 熊本県……23
宮崎県……23 鹿児島県…24

専門部会の活動予定       24
JRPSユース…         24

編集局より           25
広告ページ           25
編集後記            28

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JRPSオンラインセミナー2021(第2回) ご報告

~遺伝情報と網膜ゲノム医療・患者からのアプローチ~

【主催】公益社団法人 日本網膜色素変性症協会(JRPS)
【共催】NPO法人 オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ)

第2回 テーマ:ゲノム医療推進と遺伝子診断

【日時】2021年11月13日(土)13時~16時

【プログラム】
13時   開会挨拶 有松 靖温(JRPS理事)

※今回も音声と動画場面がずれています。ご容赦くださいm(__)m
なお、本会員頁でのご視聴期限は、2022年2月13日です。
2月14日以降はご視聴できませんので、ご注意ください。
(動画編集:森田)

 

13時5分
講演1「遺伝子検査の前に考えてほしいこと
吉田 晶子先生(神戸アイセンター病院/京都大学)

13時45分
講演2「ゲノム医療と倫理的社会的法的課題
武藤 香織先生(東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授)

14時25分  質問・コメント 西川 伸一 先生(AASJ代表理事)

14時40分 休憩

14時50分 講演者・患者パネリストによる質疑・討論
(1時間8分余りと、長いですが、ご参加いただいた先生方も、患者からの難しい質問に対して誠実に丁寧に答えてくださっています。ゲノム医療や遺伝子診断に関心のある皆様にとって、大事なことを、わかりやすく検討していますので、長さに負けず、頑張ってご視聴ください。)

15時55分  閉会挨拶 伊藤 節代

16時 閉会

【講演者プロフィール】
吉田 晶子:2008年京都大学大学院遺伝カウンセラーコース卒、
2016年より理化学研究所網膜再生医療研究開発プロジェクト勤務。
2017年12月からは神戸アイセンター病院も兼務。
2021年4月より、京都大学大学院ゲノム医療学講座にて、助教として学生の指導にも携わりながら、神戸アイセンター病院での勤務を継続。

武藤 香織:1993年慶應義塾大学文学部卒。
1995年同大学院社会学研究科修了。
1998年東京大学大学院医学系研究科博士課程単位取得満期退学。
米国ブラウン大学研究員、信州大学医学部講師などを経て、
2007年東京大学医科学研究所准教授、
2013年より現職。

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武藤香織(東京大学)先生講演要旨

■「ゲノム医療と倫理的社会的法的課題」

武藤香織(東京大学)

難病領域でのゲノム医療について、国が主導して全ゲノム解析等実行計画が進められている。しかし、新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、ゲノム医療の進捗はほとんど知られていない。
本講演では、ゲノム医療をめぐる倫理的法的社会的諸課題のなかでも、インフォームド・コンセントや結果の取り扱い、さらに得られた遺伝情報の取扱いなどをめぐって話題提供する。

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JRPSオンラインセミナー2021(2回目:11月13日)ご報告

JRPSオンラインセミナー2021
~遺伝情報と網膜ゲノム医療・患者からのアプローチ~

【主催】公益社団法人 日本網膜色素変性症協会(JRPS)
【共催】NPO法人 オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ)

第2回 テーマ:ゲノム医療推進と遺伝子診断

【日時】2021年11月13日(土)13時~16時

【プログラム】
13時   開会挨拶 有松 靖温(JRPS理事)

13時5分
講演1「遺伝子検査の前に考えてほしいこと
(動画は会員頁にあります。2022年2月13日までの期限付きです)

吉田 晶子(神戸アイセンター病院/京都大学大学院医学研究科
ゲノム医療学講座 特定助教)

13時45分
講演2「ゲノム医療と倫理的社会的法的課題
(動画は会員頁にあります。2022年2月13日までの期限付きです)

武藤 香織(東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授)

14時25分  質問・コメント 西川 伸一 (AASJ代表理事)

14時40分 休憩

14時50分 講演者・患者パネリストによる質疑・討論
(動画は会員頁にあります。2022年2月13日までの期限付きです)

15時55分 閉会挨拶 伊藤 節代

16時 閉会

【講演者プロフィール】
吉田 晶子:2008年京都大学大学院遺伝カウンセラーコース卒、
2016年より理化学研究所網膜再生医療研究開発プロジェクト勤務。
2017年12月からは神戸アイセンター病院も兼務。
2021年4月より、京都大学大学院ゲノム医療学講座にて学生の指導にも携わりながら、神戸アイセンター病院での勤務を継続

武藤 香織:1993年慶應義塾大学文学部卒。
1995年同大学院社会学研究科修了。
1998年東京大学大学院医学系研究科博士課程単位取得満期退学。
米国ブラウン大学研究員、信州大学医学部講師などを経て、
2007年東京大学医科学研究所准教授、
2013年より現職。

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吉田 晶子(神戸アイセンター病院/京都大学)先生講演要旨

■「遺伝子検査の前に考えてほしいこと」

吉田 晶子(神戸アイセンター病院/京都大学)

最近、JRPS会員の皆さまの間でも、遺伝子検査について話題になることが多いのではないかと思います。当院でも、知り合いから遺伝子検査について聞き、ご興味をもって来院される方がおられます。神戸アイセンターでは、遺伝子検査をご希望の患者さんには、検査前に遺伝カウンセリングをご案内しています。なぜ、遺伝子検査を受けたいと思っているのに、そのような場が用意されているのか、疑問に思う方も少なくないと思います。
網膜色素変性の遺伝子検査において、原因の遺伝子が判明した場合、原因が突き止められると同時に遺伝のタイプも明らかとなります。
遺伝カウンセリングで話題になることの一つは、患者さんの原因遺伝子が判明した時に、血縁者の誰に影響があるのかについてです。もしかしたら、誰にも影響がないかもしれませんし、思いもよらないご親戚が話題にあがるかもしれません。ご自身としては、とくに心配がないと思っても、専門的な視点から検討し、患者さんのお考えをうかがいながら、遺伝子検査でどこまでのことがわかるのか、すり合わせていく話し合いが非常に大切です。この話し合いが行われなければ、予想していたものと違うという結末になる可能性もあるのです。遺伝子の情報と新しい研究や治療との関連性も検討事項となっていますが、だからこそ、遺伝子検査前の話し合いや検討が大切になってきます。
当日は、遺伝カウンセリングの流れを追いながら、遺伝子検査の前に考えていただきたいことをお伝えしたいと思います。

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村上 晶(順天堂大学)先生講演要旨

■「これからの網膜色素変性への医療とケア」

村上 晶(順天堂大学)

 眼にかかわる遺伝子の働きと遺伝に関わる研究の進展は目覚ましく、網膜色素変性診療のなかでも遺伝学の重要性が増している。病気と関連する遺伝子の変化の同定と病気のしくみの理解が得られ、遺伝子を調べる検査(遺伝学的検査)は、患者さんへの適確な診断の助けになり、家族のケアや遺伝カウセリングのための情報を提供しうるものとなりつつある。
今後未解決例の割合を減らすために、より多くの患者さんの解析をするとともに、異なる方法を応用する試みが続けられている。細胞リプログラミング技術の進歩は、患者さんから提供された皮膚や血液などの細胞から人工多能性幹細胞(iPSC)を作って、網膜に近い性質をもった細胞を得ることが可能になった。このような細胞を使った、再生治療研究や、研究室の培養皿のなかで病気モデルを作り、新たな治療薬の探索をするような研究も進められ、その道筋もいくつかのものに収斂しそうである。
一方、急速な変化が起こりそうなこれからの社会での患者さんの健康管理と実生活における問題解決の仕組みづくりにはまだ明確な道筋が見えていないように思われる。患者さんとともに医療者や研究者も現存する難病対策、社会保障制度の仕組みを理解して研究成果をどう社会に実装していくか知恵を出し合うことが大切だと思う。

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西口 康二(名古屋大学)先生講演要旨

■「網膜変性に対する遺伝子特異的治療の進化」

西口 康二(名古屋大学)

 重症な小児発症の網膜色素変性類縁疾患であるレーバー先天盲を対象とした、アデノ随伴ウィルスを用いた初めての網膜遺伝子治療が2008年に報告されてから10年以上が過ぎた。この報告は、安全性の高いウィルスを用いて欠損遺伝子に対して正常な遺伝子を網膜に導入することで、それまでまったく治療法がなかった網膜ジストロフィにおいて、治療に、より光感度が改善し暗所での移動が向上することを示すものだった。
これをきっかけに、世界中で遺伝子治療の開発競争が始まり、今では網膜色素変性を含めてさまざまな網膜疾患に対して数多くの臨床試験が行われつつある。しかし、同治療に関する臨床データが蓄積されるにつれ、次第に無視できない課題も明らかになってきた。
本講演では、最初に遺伝子治療とは何か?という基本的なことを、歴史を振り返りながら解説する。次いで、さまざまな網膜ジストロフィに対して行われている遺伝子治療臨床試験の最新の結果をレビューし、同治療の今後の展望と現時点で何を考えるべきかについて考察する。

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JRPSオンラインセミナー2021(1回目)ご報告

~遺伝情報と網膜ゲノム医療・患者からのアプローチ~

【主催】公益社団法人 日本網膜色素変性症協会(JRPS)
【共催】NPO法人 オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ)

第1回 テーマ:網膜ゲノム医療の近未来(その2)

2021年11月3日(水・祝)13時~16時

【プログラム】

13時
開会挨拶  長澤 源一(JRPS理事長)
趣旨説明 伊藤 節代(JRPS理事)

13時10分
講演1「網膜変性に対する遺伝子特異的治療の進化
(動画は会員頁にあります。2022年2月13日までの期限付きです)
西口  康二 先生(名古屋大学医学部眼科学教授)

13時50分
講演2「これからの網膜色素変性への医療とケア
(動画は会員頁にあります。2022年2月13日までの期限付きです)
村上  晶 先生(順天堂大学大学院医学研究科眼科学教授)

14時30分
質問・コメント
西川 伸一 先生(AASJ代表理事)
(動画は会員頁にあります。2022年2月13日までの期限付きです)

14時45分  休憩

14時55分
講演者・患者パネリストによる質疑・討論
(動画は会員頁にあります。2022年2月13日までの期限付きです)

15時55分
閉会挨拶 森田 三郎(JRPS理事)

16時 閉会

【講演者プロフィール】
西口 康二 先生:
1997年名古屋大学医学部卒。2005年同大学院医学系研究科修了。2007年同附属病院眼科助教。スイスローザンヌ大学(遺伝医学)、英国UCL(遺伝子治療学)を経て、2014年東北大学視覚先端医療学准教授。2020年10月より現職。2015年JRPS研究助成受賞。

村上  晶 先生:
1981年 順天堂大学医学部卒。同眼科学助手。1988年 米国眼研究所研究員。1989年 マイアミ大学眼科研究員。1992年 防衛医科大眼科講師。2000年 順天堂大学医学部講師。2003年 より現職。

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