[7月の課題]
〜立ったまま干からびていく炎天下〜
「熱中症」は、軍医時代に森鴎外が書いた『衛生新編』(共著)に最初に登場した
とされ、気温が34度前後になると、行軍中の兵士に異変が起きると指摘している。
今年も梅雨が明けると熱い夏が待っている。猛暑日、熱中症※の季節がやって来た
。
14年前の『点字毎日』の私のエッセーから。
立ったまま干からびていく炎天下
地球からしっぺ返しを食らって温暖化が進み、都市ではヒートアイランド現象が起
きている。一昨年の夏、大阪のある高校の体育祭で32人がバタバタと倒れ、東京で
も1万人以上の人が熱中症にかかり、救急車で病院へ運ばれた。
実は、私もその年の8月に救急車で病院へ運ばれた。2階のトイレで一瞬気を失い
、気がつけば仰向けに倒れていた。顔面に痛みを感じて触るとどろっとした血が溢れ
ている。両手も痺れている。便器に座っている時、汗がダラダラ出て止まらず、胸が
ムカムカして気分が悪く、便意はあるものの一向に出ない。あきらめて立ち上がろう
としたところまでは確かに覚えている。
それからどれくらい経ったろうか。頭に浮かんだのは数年前の有馬温泉でのできご
とだった。湯から上がって気分が悪くなり、ふうっと気が遠くなって後ろへ倒れてい
くのを感じながらも自分で止めることができない。気がつけばすっぽんぽんで仰向け
に倒れていた。自分ではかなり長い間意識を失っていたと思っていたが、その間せい
ぜい3、4秒だったと言う。酒を飲み温泉に長くつかってのぼせたのであった。
そんなことを思い出しながらなおも痛みに耐えていたが、大きい物音を聞きつけた
妻があわてて二階に上がってきて、顔から血を流して倒れている私を見て仰天し、す
ぐに救急車を呼んだのである。そのうちに出血も止まり、脳のCTや心臓のエコーの
検査でも特に異常が見つからなかったのは幸いであった。つまり、その時に私も熱中
症にかかっていたのだ。トイレの出口の角に頭をぶつけて仰向けに倒れたようである
。
後日、熱中症に至った経緯を知った子供たちからは「年寄りは猛暑でもクーラーを
つけないから熱中症になるんや」と非難されたが、「少々ならクーラーをつけるのは
もったいない」という気があるし、「まだまだ猛暑になんか負けるものか」という年
寄りの意地(?)もある。今年の夏は「炎天下でも室内でも干からびるもんか」と硬
く誓い摂生に努めるとともに、ささやかながら地球の温暖化に抵抗して、CO2の削
減や熱の排出にも意を用いたい。〈2009年6月14日〉
※2007年の気象庁の予報用語改正により、猛暑日と熱中症が新たに追加された。猛暑
日の推移、最高気温の更新頻度の高さ、生命への危険から、天気予報において猛暑日
や熱中症を導入し、警戒を呼びかけることになった。
(最高気温が35℃以上を猛暑日、30℃以上35℃未満を真夏日と規定)
ほらごらん猛暑日なんか作るから 中原幸子
電線のスズメも落ちる四十度 川端六点
なお、気象庁内では、40℃以上を酷暑日、最低気温が30℃以上の夜を超熱帯夜と呼
んでいるそうだ。
それでは、例によって上記の中から出題します。
■2023年7月(No.144)
題:「病院」 (進 選)
題:「立つ」(立上がるの立つ) (美幸 選)
題:「汗」 (憲峰 選)
題:「出口」 (敏治 選)
(各題2句出し)
◎今月の締切:7月24日(月) 正午必着
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