RP−net川柳会
「もやい傘」
[2023年7月の課題]




[更新日 : 2023年6月26日]



[7月の課題] 
  〜立ったまま干からびていく炎天下〜 

 「熱中症」は、軍医時代に森鴎外が書いた『衛生新編』(共著)に最初に登場した
とされ、気温が34度前後になると、行軍中の兵士に異変が起きると指摘している。
 今年も梅雨が明けると熱い夏が待っている。猛暑日、熱中症※の季節がやって来た


 14年前の『点字毎日』の私のエッセーから。

  立ったまま干からびていく炎天下

 地球からしっぺ返しを食らって温暖化が進み、都市ではヒートアイランド現象が起
きている。一昨年の夏、大阪のある高校の体育祭で32人がバタバタと倒れ、東京で
も1万人以上の人が熱中症にかかり、救急車で病院へ運ばれた。
 実は、私もその年の8月に救急車で病院へ運ばれた。2階のトイレで一瞬気を失い
、気がつけば仰向けに倒れていた。顔面に痛みを感じて触るとどろっとした血が溢れ
ている。両手も痺れている。便器に座っている時、汗がダラダラ出て止まらず、胸が
ムカムカして気分が悪く、便意はあるものの一向に出ない。あきらめて立ち上がろう
としたところまでは確かに覚えている。
 それからどれくらい経ったろうか。頭に浮かんだのは数年前の有馬温泉でのできご
とだった。湯から上がって気分が悪くなり、ふうっと気が遠くなって後ろへ倒れてい
くのを感じながらも自分で止めることができない。気がつけばすっぽんぽんで仰向け
に倒れていた。自分ではかなり長い間意識を失っていたと思っていたが、その間せい
ぜい3、4秒だったと言う。酒を飲み温泉に長くつかってのぼせたのであった。
 そんなことを思い出しながらなおも痛みに耐えていたが、大きい物音を聞きつけた
妻があわてて二階に上がってきて、顔から血を流して倒れている私を見て仰天し、す
ぐに救急車を呼んだのである。そのうちに出血も止まり、脳のCTや心臓のエコーの
検査でも特に異常が見つからなかったのは幸いであった。つまり、その時に私も熱中
症にかかっていたのだ。トイレの出口の角に頭をぶつけて仰向けに倒れたようである

 後日、熱中症に至った経緯を知った子供たちからは「年寄りは猛暑でもクーラーを
つけないから熱中症になるんや」と非難されたが、「少々ならクーラーをつけるのは
もったいない」という気があるし、「まだまだ猛暑になんか負けるものか」という年
寄りの意地(?)もある。今年の夏は「炎天下でも室内でも干からびるもんか」と硬
く誓い摂生に努めるとともに、ささやかながら地球の温暖化に抵抗して、CO2の削
減や熱の排出にも意を用いたい。〈2009年6月14日〉

※2007年の気象庁の予報用語改正により、猛暑日と熱中症が新たに追加された。猛暑
日の推移、最高気温の更新頻度の高さ、生命への危険から、天気予報において猛暑日
や熱中症を導入し、警戒を呼びかけることになった。
(最高気温が35℃以上を猛暑日、30℃以上35℃未満を真夏日と規定)
  ほらごらん猛暑日なんか作るから  中原幸子
  電線のスズメも落ちる四十度  川端六点
 なお、気象庁内では、40℃以上を酷暑日、最低気温が30℃以上の夜を超熱帯夜と呼
んでいるそうだ。

 それでは、例によって上記の中から出題します。

■2023年7月(No.144) 
題:「病院」 (進 選) 
題:「立つ」(立上がるの立つ) (美幸 選) 
題:「汗」 (憲峰 選) 
題:「出口」 (敏治 選) 
 (各題2句出し)
◎今月の締切:7月24日(月) 正午必着 




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