RP−net川柳会
「もやい傘」
[2023年8月の課題]




[更新日 : 2023年7月29日]



[8月の課題] 
  〜「ら抜き言葉」と「い抜き言葉」〜

★山本進の独り言……
 近年、テレビのバラエティ番組の出演者が「見れる」「食べれる」と言い、プロ野
球の解説者が「投げれる」と、「ら抜き言葉」を乱発しています。大変耳障りで軽薄
に感じています。テレビに向かって「お前ら、ええ加減にしいや!」と叫んでいます

 「もやい傘」でも過去に何会か指摘しましたが、未だに時々「ら抜き言葉」を目(
耳)にします。小さいことが気になる私には気になって、気になってしかたがありま
せん。そこで今月は、「ら抜き言葉」について取り上げることにしました。

■「ら抜き言葉」とは、可能(〜することができる)を意味する助動詞「られる」か
ら「ら」を抜いた言葉です。
 「ら抜き言葉」は、話し言葉として昭和初期から使われはじめ、戦後ますます広ま
りました。「ら抜き言葉」は文法上誤った言葉で、新聞や公的文書に使われることは
ありません。文章を作成するときやビジネスの場で使うときは、軽い印象や稚拙な印
象をあたえます。
 皆さんが川柳を作る時、特に「る」で終る動詞に可能の助動詞「れる」を使うか、
「られる」を使うかで悩まれたことはありませんか。どちらを使うか、簡単な見分け
方をご紹介しましょう。

●動詞に勧誘の「〜よう」が付く場合は可能の助動詞「られる」がつき、「〜ろう」
が付く場合は「れる」が付きます。か行変格活用動詞「来る」には「られる」が付き
ます。
[例]……「〜よう」が付く動詞
    ・見る→見よう→見られる  ・着る→着よう→着られる
    ・食べる→食べよう→食べられる  ・出る→出よう→出られる
    ・寝る→寝よう→寝られる  ・投げる→投げよう→投げられる
[例]……「〜ろう」が付く動詞
    ・走る→走ろう→走れる  ・切る→切ろう→切れる
    ・しゃべる→しゃべろう→しゃべれる  ・座る→座ろう→座れる

 文化庁の2015年土の「国語に関する世論調査」※1べは、「ら抜き言葉」の「
見れる」「出れる」を使う人の方が上回ったと発表しています。言葉は否応なく時代
とともに変化していきます。近い将来「ら抜き言葉」が社会に認知されて一般化する
かもしれません。
 しかし、まだまだ異和間があり、軽薄な感じ、軽い印象や稚拙な印象を拭えません
。特に、川柳という文芸の言葉を操っている我々には、やはり「ら抜き言葉」は相応
しくなく避けるべきで、正しい文法を使用すべきだと考えます。

 ついでながら、
■「い抜き言葉」とは、「い」を入れるべき場所で「い」を抜いて使われている言葉
です。「い抜き※2言葉」は、会話の中では案外気にならないかもしれませんが、文
章にするとカジュアルな印象になります。「い抜き言葉」は絶対使ってはいけないと
いうわけではありません。
[例] ・話してた→話していた  ・読んでます→読んでいます
    ・付いてる→付いている  ・思ってる→思っている

 「い抜き言葉」は、川柳では「〜ている」の「い」を抜いた「てる川柳」として、
番傘誌は文法上誤りで、よくないと論じています。中七の「い抜き」についてはよし
としていますが、特に、下五の「い抜き」を「てる川柳」と称しています。これに対
して、中七の「い抜き」はよくて、下五の「い抜き」はなぜだめなのか。「い抜き言
葉」は社会になじんでいるので「てる川柳」も認められてもよいのではないか、と異
論を唱える番傘の同人もいます。
 私は、「ら抜き言葉」と異って、「い抜き言葉」は既に一般化して社会になじんで
いるし、「い抜き言葉」を使用した川柳も普通に作られているので、それでよしとす
べしと考えます。特に、私の浅い経験から言えば、女性の作家の方が多用する傾向に
あるようです。
 また、選者の中には入選句を披講する時に、あえて「い抜き言葉」に「い」を加え
て読む人もありますが、その必要はないと考えます。

 以上をまとめると、「ら抜き」川柳はだめ、「い抜き」川柳=てる川柳はよし、と
いう考え方です。
 「もやい傘」の皆さんも、ええ加減にしいや! ※3

※1 文化庁の2015年度の「国語に関する世論調査」の結果では、
 「見れた」(48.4%)  「見られた」(44.6%)
 「出れる」(45.1%)  「出られる」(44.3%)
と、「ら抜き」を使う人の方が調査以来初めて上回った。
 しかし、「食べられる」「来られる」「考えられる」に関しては「ら抜き」を使う
人の方が少なかった。

※2 「い抜き」には同音の次の言葉がある。
 居抜き〜店舗・工場などを、設備・家具・調度などをつけたまま売り渡したり貸し
たりすること。居成り。

※3 7月の投句570句のうち1句だけ、「ら抜き」を使った稚拙な句があった。
   倒れずにケーキ食べれた嬉しいな

 それでは、例によって上記の中から出題します。

■2023年8月(No.145)
題:「気になること」(詠込み不可) (進 選) 
題:「投げる」 (艶子 選) 
題:「まとめる」 (末次 中川由希子 共選) 
題:自由吟※ (航太郎 選)    ※題はありません。自由に作句してください。
 (各題2句出し)
◎今月の締切:8月24日(木) 正午必着





JRPS大阪のトップへ

All Rights Reserved Copyright (C) JRPS-osaka-2023