[7月の課題]
〜ふつうに難しい「普通」〜
こんな記事を見つけた。2024年3月10日付の産経新聞「産経抄」である。
■ふつうに難しい「普通」
貧しい小説家の「僕」は旧知の名家に招かれ、つい酒を過ごす。酔いざましにと蜆
汁(しじみじる)に手を伸ばし…。太宰治の掌編『水仙』である。貝の肉をほじくる
僕に、先方の夫人は驚く。「そんなもの食べて、なんともありません?」。
純粋な驚きの声に僕は打ちのめされる。具材として味わう作家、出汁を取れば捨て
る富家。両者にとっての「普通」がすれ違う。小さな貝が描き出す鮮やかな対照は一
読して忘れ難い。「普通」という物差しの残酷な正体を見る思いがする。(以下、略
)
昼食にたまに立寄るトンカツ屋がある。トンカツ定食には食べ放題のご飯と、吸い
放題の赤出汁のシジミ汁が付いている。ちゃんと実も付いていてよく出汁が出ている
。
私はシジミが大好きで、小学時代は近くの川で大きいシジミをバケツいっぱい取っ
てきで、母親に夕食に澄ましのシジミ汁を作ってもらったものである。
トンカツ屋のシジミ汁には極小さいシジミがたくさん入っている。難儀しながらも
歯を駆使して貝から実をはずして食べる。同席した娘は、シジミは出汁を取るための
もので、小さい実を食べるのはみっともないからやめてと言う。私はもったいないと
思うが、貝が小さすぎてほじくりにくいし、老いては子に従えというし、泣き泣き汁
をすするに留めることにする。惜しい気持ちを残しながら。もちろんもう一杯お替わ
りをすることは忘れない。
それにしても、私と娘にとっての「普通」がすれ違う。
それでは、例によって上記の中から出題します。
■2024年7月(No.156)
題:「難しい」 (進 選)
題:「貧しい」 (あかね 選)
題:「汁」(シジミ汁の汁) (あせび 選)
題:「みっともない」(詠み込み不可) (航太郎 選)
(各題2句出し)
◎今月の締切:7月24日(水)正午必着
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