[6月の課題]
〜『誹風柳多留』刊行260年〜
『誹風柳多留』が明和2年(1765)7月に、呉陵軒可有(ごりょうけんあるべし ?-
1788)によっ て刊行されてから、今年2025年で260年になる。
点者の柄井川柳(1718〜1790)が前句付興行の万句合(まんくあわせ)で選んだ句
を、前句を省いて付句のみを掲載。天保9年(1838)までに、初世柄井川柳以下5世
までの撰が167編刊行されている。評者や序文の筆者には、柳亭種彦、十返舎一九
、葛飾北斎らが名を連ねている。
初期の作品は文芸的価値が高く、特に初代柄井川柳が編纂にたずさわった24編ま
でが高く評価され、「古川柳」と呼ばれる。
万句合(まんくあわせ)入勝句の中から、前句を省いて選ぶ勝句集形式は、初代川
柳選句時代で終り、その後川柳風狂句独立とともに、単独詠の句を選ぶようになる。
政治に屈服し、前句を捨てたためにかえって余情を失い、勧善懲悪的道徳作品か、
卑猥句に墜ち「狂句」を量産した。
[代表的な句]
かみなりをまねて腹がけやっとさせ
本降りになって出ていく雨宿り
寝ていても団扇のうごく親心
これ小判たった一晩ゐてくれろ
役人の子はにぎにぎをよく覚え
☆前句付は、前句(課題)に対し付句(答)を付ける俳諧の修練の一つで、その優劣
を競う遊戯的文芸。短句の「七・七」の前句に対しては長句の「五・七・五」の付句
、「五・七・五」の前句に対しては「七・七」の付句。 川柳は、この付句が独立し
て鑑賞されるようになった文芸である。現在では五・七・五の長句が主流で、七・七
の短句はあまり詠まれなくなっている。
(前句付の例)
[前句] 切りたくもあり切りたくもなし
→ [付句] 盗人を捕らえてみれば我が子なり
[前句] 恐い事かな恐い事かな
→ [付句] 雷をまねて腹掛けやっとさせ
なお、現代の句会で出題される課題はこの前句に当たるもので、一般に関西では課
題を詠み込む句が多く、関東では課題を詠み込まない句が大いと言われるが、これは
関東に江戸時代の前句付の遺伝子が色濃く残っているからではないだろうか。
それでは、例によって上記の中から出題します。
■2025年6月(No.167)
題:「変化」 (進 選)
題:「寝る」 (一心 選)
題:「競う」 (あかね 選)
題:「以下」 (航太郎 選)
(各題2句出し)
◎今月の締切:6月24日(火) 正午必着
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