[7月の課題]
〜「七つの子」って七歳? それとも七羽?〜
私たちは普段何気なく童謡や唱歌を歌っているが、有名な作詞家の歌詞にも誤りや
疑疑義のある箇所がある。以前に紹介したサトウハチローの「うれしいひなまつり」
もそうだ(2023年3月参照)。
野口雨情の「波浮の港」は、東を海に面し西側に山を背負って全く夕日が見えない
波浮港に「夕焼け小焼け」を見せる点や、伊豆大島には全くいない海鵜が登場する点
が誤りです。
その野口雨情作詞の「七つの子」について。
烏 なぜ啼くの 烏は山に
可愛七つの 子があるからよ
可愛 可愛と 烏は啼くの
可愛 可愛と 啼くんだよ
山の古巣へ 行って見て御覧
丸い眼をした いい子だよ
鳥類学博士・清棲幸保が「カラスは七羽もいちどきに育てず、せいぜい雛は四羽く
らい。また、七歳といったらカラスではとっくに大人だから七歳でもおかしい」とい
う趣旨の疑問を呈したことから「七つの子論争」が始まった
@七羽説
「七つの子」が掲載された『金の船』の挿絵には七羽の雛が描かれている。挿絵画
家は「七羽」と解釈。
A七歳説(野口雨情記念館の館長・雨情の孫娘)
館長の父親がこの歌のモデルで、その息子が七歳のころに作られた歌。また、7歳
は野口雨情自身が母親と別れた年齢と合致する。さらに、この歌の元歌である「山烏
」という詩が、1907年頃に作られており、その中でも「可愛(かわい)七つの子があ
れば…」と書かれていることからも雨情自身の母への思慕の情や実体験からくる子供
への思いが歌のなかで「七つ」という言葉が一つのキーワードとしてあてられている
のではないかと思われる。
A七歳説(言語学者・金田一春彦)
「七歳」というのは古来伝統的に子供時代のど真ん中の意味であり、母親が子供に
「からすにも山にお前と同じ七歳の子がいるのよ」と教えることは自然である。
B「たくさん」説」(児童文学作家・評論家・藤田圭雄)
「七つというのは古来『たくさん』の言い換えであり、たくさんの子供たちが親ガ
ラスを待ちわびているさまをあらわしている。
Cその他
擬人化した七羽説も七歳説も、「山の古巣」という箇所でつまづく。七歳の子供が
いる親は若い年齢で、住まいが「古巣」(古びた家)という表現はそぐわない。
★「七つの子」論争については野口雨情も当然知っていたが、これは親子が山に帰っ
ていくカラスを見送りながら「からすにもきっと山にたくさんのかわいい子があるに
違いない」という気分を歌ったもので、「七羽でも、七歳でも、歌ってくださる方が
なっとくされりゃ、それで、よござんしょ―。」と拘泥しない態度を示していたそう
な。
それでは、例によって上記の中から出題します。
■2025年7月(No.168)
題:「港」 (進 選)
題:「ひな」(ひな鳥のひな) (すゑ子 選)
題:「夕日」 (昌彦 選)
題:「七」(七つの七) (航太郎 選)
(各題2句出し)
◎今月の締切:7月24日(木) 正午必着
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